結局は「政治的決断」にかかっている
介護職員の給与は、介護報酬の中から支給されるので、介護報酬の増減に連動せざるをえません。しかし、介護報酬の改定は基本的に3年に1回なので、それだけでは物価上昇等の要因に対応できないことがあります。昨今の急激な物価上昇とそれに起因する実質賃金の減少はまさに、介護報酬の改定では対応しきれないケースです。
また、介護の仕事は生身の人間の世話をする仕事であり、労働生産性を向上させるにしても限界があります。さらに、社会に必要とされていながら、いわゆる「儲かる仕事」でもありません。
これらのことからすれば、介護職員の待遇をどうするかは、ひとえに、介護報酬をいくらに設定するのかという政府の政治的決断にかかっています。そして、それは、政府が介護の仕事をどの程度重要なものととらえているかによります。高齢化・少子化が進行し、ただでさえ働き手が少なくなっていくなかで、もし、介護の担い手が減少すれば、遠くない将来に「介護難民」を多数生み出してしまう可能性すらあります。
もちろん、介護報酬の引上げは公費負担と介護保険料の増大につながる面があることにも留意しなければなりません。しかし、介護の担い手の確保は、介護保険制度、ひいては社会保障制度自体の維持・存続にかかわる問題です。
今回の「月6,000円」の賃上げが、介護業界での人材流出を食い止めることにつながりうるのか。政府・国会には、現実を踏まえたうえでの効果的な施策が求められます。
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