(写真はイメージです/PIXTA)

10月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は23年7-9月期のGDP統計(1次速報値)を公表しました。そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、BEAによって発表された「GDP統計」から読み解く米国経済の現状について解説します。

民間投資・政府支出の「伸び」はどう変化したか

(民間投資)設備機器投資が減少

7-9月期の民間設備投資は知的財産投資が前期比年率+2.6%(前期:+2.7%)とほぼ前期並みの伸びを維持した一方、建設投資が+1.6%(前期:+16.1%)と前期から伸びが大幅に鈍化したほか、設備機器投資が▲3.8%(前期:+7.7%)とマイナスに転じて設備投資全体を押し下げた(図表5)。

 

 

建設投資では、商業・医療が前期比年率+3.1%(前期:+3.8%)と前期から小幅な鈍化に留まった一方、製造業が+18.8%(前期:+86.5%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。さらに、資源関連が▲27.4%(前期:▲14.7%)、電力・通信も▲4.0%(前期:▲3.3%)と前期からマイナス幅が拡大して建設投資全体の足を引っ張った。

 

設備機器投資は、情報処理関連が▲5.4%(前期:▲6.1%)、産業機器が▲3.4%(前期:▲5.1%)と、マイナス成長となったものの、マイナス幅が前期から縮小した一方、輸送機器が▲1.4%(前期:+66.0%)と前期の大幅な伸びとなった反動もあって小幅ながらマイナスに転じた。

 

知的財産投資では、研究・開発が+0.8%(前期:+0.1%)と前期から小幅ながら伸びが加速した一方、娯楽・文学等が+0.8%(前期:+2.4%)、ソフトウエアが+5.0%(前期:+5.7%)と前期から伸びが鈍化するなど、マチマチとなった。

 

最後に住宅投資は、戸建てが前期比年率+21.6%(前期:+1.2%)と前期から伸びが大幅に加速した一方、集合住宅が+4.5%(前期:+11.4%)と前期から伸びが鈍化した。

 

(政府支出)国防関連支出が大幅に増加

7-9月期の政府支出は、州・地方政府が前期比年率+3.7%(前期:+4.7%)と前期から伸びが鈍化した一方、連邦政府が+6.2%(前期:+1.1%)と前期から伸びが加速して政府支出全体を押し上げた(図表6)。

 

 

連邦政府支出では、国防関連支出が+8.0%(前期:+2.3%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、非国防支出も+3.9%(前期:▲0.4%)と前期からプラスに転じた。

 

(貿易)輸出入ともに前期からプラスに転じた

7-9月期の輸出入は輸出が前期比年率+6.2%(前期:▲9.3%)、輸入が+5.7%(前期:▲7.6%)といずれも前期からプラスに転じる中、輸入額の増加が輸出額の増加を上回って外需の成長率寄与度を押し下げた。

 

輸出を仔細にみると、サービス輸出が+3.7%(前期:+6.2%)と前期から伸びが鈍化したものの、財輸出が+7.5%(前期:▲16.0%)と前期の大幅なマイナスからプラスに転じて輸出全体を押し上げた(図表7)。

 

財輸出では、工業用原料が前期比年率▲0.7%(前期:▲19.6%)と前期に続きマイナスとなったものの、マイナス幅が大幅に縮小した。

 

一方、食料・飲料が+3.3%(前期:▲31.2%)、資本財(自動車関連除く)が+9.1%(前期:▲4.8%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+24.1%(前期:▲28.8%)と前期からプラスに転じたほか、自動車関連が+29.7%(前期:+11.3%)と前期から伸びが加速した。

 

サービス輸出では、旅行が+40.9%(前期:+30.3%)と前期から伸びが加速した一方、輸送が+6.5%(前期:+23.4%)と前期から伸びが鈍化した。

 

一方、輸入は財輸入が+5.9%(前期:▲6.5%)、サービス輸入が+4.8%(前期:▲12.2%)といずれも前期からプラスに転じた(図表8)。

 

財輸入では、工業用原料が▲7.4%(前期:▲7.0%)と前期から小幅ながらマイナス幅が拡大した一方、食料・飲料が+5.7%(前期:▲15.3%)、資本財(自動車関連除く)が+2.6%(前期:▲7.5%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+8.5%(前期:▲12.3%)と前期からプラスに転じたほか、自動車関連が+17.2%(前期:+13.5%)と前期から伸びが加速して財輸入全体を押し上げた。

 

サービス輸入は、旅行が+11.1%(前期:▲8.3%)、輸送が+27.4%(前期:▲19.7%)といずれも前期からプラスに転じた。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月30日に公開したレポートを転載したものです。

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