(※写真はイメージです/PIXTA)

「贈与税は年110万円まで非課税だから、相続税対策として生前贈与が有効」とよく聞きます。しかし、生前贈与にも注意すべきポイントがあり、「安易に生前贈与をしていると、後で贈与を受け取った子や孫が「多額の贈与税」を支払わなければならない可能性があると、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。具体的な事例をもとに、その原因や解決策についてみていきましょう。

武さんに贈与税支払い義務が発生した「2つ」の理由

宇野夫妻も品川夫妻も、贈与額を110万円以下にしていたにもかかわらず、どうして武さんが贈与税を支払わなければならなかったのでしょうか。

 

この事例でポイントとなるのが、「定期贈与」と「非課税の110万円は受贈者の枠」という点です。

 

1.「定期贈与」であるとみなされた

毎年同じ相手から、決まった時期に決まった額を贈与することを「定期贈与」といいます。たとえば、毎年コツコツ100万円を10年間贈与したとしても、税務署に「あらかじめ1,000万円を贈与するつもりであった」と判断されてしまうと、定期贈与とみなされ課税の対象となります。

 

武さんの場合も、宇野夫妻から毎年同じ日に110万円ずつ、同じ額で10年間贈与を受けていました。そのため、合計額である1,100万円が「定期贈与」とみなされ、贈与税を納税する義務が発生しました。

 

2.110万円は“もらう人(受贈者)”の枠

もうひとつの落とし穴は、非課税限度額の110万円は「受贈者の枠である」という点です。

 

贈与者としては、たとえば同じ年に110万円を複数人に贈与しても課税の対象とはなりません。しかし、受贈者は、年間110万円までが非課税枠であり、それを超える金額になると課税の対象となります。

 

武さんの場合、ある年から、宇野夫妻から110万円、品川夫妻からも110万円の贈与を受けることとなったため、受贈額が合計220万円となりました。このうちの110万円は非課税枠ですが、残りの110万円に対しては贈与税を支払わなければなりません。

「暦年贈与」を有効活用するには?

では、このような問題を回避して、暦年贈与を有効に活用するにはどうすればいいのでしょうか。対策としては、下記の3つが挙げられます。

 

1.「一定の時期に一定額の贈与」は避ける

まず、一定の時期に一定の額を贈与することは避けるべきです。ある年に110万円贈与したら次の年は90万円など金額を不定にし、贈与を行う時期もずらすことで、「定期贈与」とみなされる可能性を減らすことができます。

 

2.贈与の証拠を残す

“ある年は120万円贈与して、あえて1万円の贈与税を支払う”など、贈与税の申告を贈与の証拠とするという対策方法もあります。

 

3.受贈者も生前贈与の記録を残しておく

贈与者と受贈者の双方が、生前贈与の内容をきっちり把握しておくことが肝心です。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所

代表司法書士

 

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