(※写真はイメージです/PIXTA)

開放感あふれる広いリビングは家を建てる人のあこがれですよね。たしかにリビングはその家の「おしゃれ度」を決定づけるようなところがあります。しかし、そのような考えだけで吹き抜けや必要以上に広いリビングにすると、何十年も後悔しながら暮らすことになってしまうのです。YouTube不動産 印南和行氏の著書『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、「開放感あふれるリビング」の落とし穴を紹介します。

あこがれの「吹き抜け」は光熱費が高くなる

開放感のあるおしゃれなリビングといえば「吹き抜け」が一番にあがりますよね。いままさに検討中であれば、これからお話しするデメリットをすべて受け入れられるかどうか考えてみてください。

 

吹き抜けのデメリットとして、室内が十分に冷えない(暖まらない)ことがあげられます。天井が2階まで突き抜けているぶん、室温調整をする空間が広くなることを考えれば当然です。快適に暮らすには、高気密・高断熱の住宅をのぞいて、パワフルで機能性の高い冷暖房設備が必要になるでしょう。

 

冷房は、吹き抜けの広さや日当たり、窓の数にもよりますが、吹き抜けにした場合、実際の広さよりも1サイズ程度上のものを設置するようになります。この「サイズ」とは単に記されている帖数のことではなく、エアコンの冷房能力(kW)のことです。

 

たとえばあるメーカーのエアコンについて、冷房時の電気代をサイズ別で見てみると、目安の広さが14帖と20帖では1日10時間の使用で最大180円ほどの差が出ます。1ヵ月では20帖のほうが5000円以上高くなるということですね。

 

暖房は、暖かい空気が天井のほうへ上昇するため、吹き抜けのリビングは足元が冷えてしまいます。暖房設備を考える場合は、サイズが大きいものを選んでも2階が暑くなるばかりなので、サーキュレーター機能つきのエアコンや床暖房などの足元が暖まるものを取り入れる必要があります。

 

【解決策】建物の断熱性を高める、断熱性の低い大きな窓を設置しない

吹き抜けのリビングにする場合、冷暖房設備費や光熱費が高くなることは覚悟しなければならないでしょう。対策としては建物の断熱性を高めること、断熱性の低い大きな窓を設置しないことです。

 

天井裏や壁、床下などの断熱材を高性能のものにしたり、窓を断熱性の高いものにしたり、ぱっと見ではわからない部分にとことんこだわることで、吹き抜けがあっても外気の暑さを遮断し、快適な室温を保ちやすくなります。窓には「Low-E(ローイー)複層ガラス」(=複層ガラスの内側に金属膜をコーティングしたガラス)がおすすめです。

 

このように、光熱費に関するデメリットは、住宅の性能を上げることで解決できます。初期費用は高くなりますが、快適な暮らしを手に入れるためには、断熱性を高めるための費用はケチってはいけない部分といえるでしょう。

「音」と「ニオイ」も2階に広がりやすい

もう一点、吹き抜けのリビングには重要なデメリットがあります。

 

図表1の間取りは、16帖のリビングの一部を吹き抜けにして、2階の洋室からLDKを見下ろせるおしゃれなデザインです。2階には寝室と子ども部屋が2つあります。

 

出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
[図表1]吹き抜けのある間取り図(立体) 出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
 

吹き抜けのリビングでは、音が反響して1階では聴こえづらく、2階にはかなり響くといった現象が起こります。また、音だけでなく、ニオイまで2階に広がってしまうのです。

 

出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
[図表2]吹き抜けのある間取り図(平面) 出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)

 

リビングでテレビを見る際、音が2階のほうへ抜けていくので、正面にいると聴こえづらいことに驚きます。引っ越し前はテレビの音量が20だったものが引っ越し後には40以上になってしまったというご家庭もあるんですよ。

 

音量を上げても反響して言葉がはっきりと聴き取れず、2階で勉強している子どもが「うるさい!」というので、字幕機能を使ってテレビを見ていますと話してくれた人もいました。これでは食後に夫婦でお笑い番組を見て大笑いするなんてことはできなくなってしまいますね。

 

これらは、高気密・高断熱の現代の住宅ならではの悩みといえるでしょう。外の騒音が聞こえなくなり、室内からの音漏れもないというメリットの一方で、家の中では音が響きやすい。話し声やトイレの水を流す音、調理中の音まで響くこともあります。

 

【解決策】ドアや壁、吹き抜けに接する窓に防音性をもたせる

それらの悩みを解決するには、各居室のドアや壁、吹き抜けに接する窓に防音性をもたせることです。ドアには開き戸と引き戸がありますが、引き戸はすき間ができやすいので、寝室や子ども部屋は開き戸にしたほうがよいでしょう。防音ドアが設置できればなおよしです。

LDKは広すぎても使いにくい

LDKはできる限り広くしたいと考える人も多く「LDKは24帖以上にしたい!」といった、帖数での要望も多くあります。

 

ここで一度立ち止まって、つぎのことを自分に問いかけてみてください。

 

「キッチンのタイプは?」

「ダイニングテーブルのサイズは?」

「リビングの配置は?」

 

まずはこれだけでもよいのです。

 

たとえば、「4人家族、対面キッチンで、ダイニングテーブルは150cm×90cm、リビングには2人掛けのソファーとテレビを置きます」などと考えます。


かんたんに長方形の図面にしてみると、16帖でゆとりのあるLDKになります。8帖も多めに考えていたわけです。「広くするぶんには何の問題もないのでは?」と思いますか? 今後、置きたい家具があるなどの明確な計画がある場合は別ですが、「広々としたリビングが夢だった」という漠然としたものであれば再検討したほうがよいでしょう。

 

部屋を広くすると開放感は得られますが、暮らしはじめてからさまざまなリスクやデメリットを感じることもあります。

 

●光熱費が高くなる

部屋が広くなると窓の数や面積も多くなりますよね。暑さ、寒さは窓から入ってくることが多いのです。室内が適温になるまでに時間がかかるだけでなく、快適な温度を保つためにはパワーが必要になります。

 

●掃除が大変

掃除機をかける手間が多いことももちろんですが、インテリアや壁、天井にたまるホコリも目立ちます。

 

●無駄な空間ができる

リビングとダイニングの間に無駄な空間ができる可能性があります。その空間を「ゆとり」と感じられればよいのですが、ほかの空間を削ってまでLDKを広くしてしまった場合は不便さが上回ってしまいます。

 

大切なことは帖数よりも「このような使い方をしたいから、これくらいの広さがほしい」と、用途から考えることです。

 

出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
[図表3]「使い方」が先、「帖数」はあと 出所:YouTube不動産 印南和行著『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)
 

 

 

YouTube不動産 印南和行

株式会社南勝代表、一級建築士

住宅専門チャンネル「YouTube不動産」運営者

 

全国不動産売却安心取引協会理事長、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1972年、東京都生まれ。建築の専門学校を卒業後、建設会社で現場監督経験を積み、2011年に株式会社南勝を設立。これまでに1000件以上の住宅のインスペクション(建物診断)を行なうほか、不動産会社向けのコンサルティングを手がける。

「後悔のない家づくりをしてほしい」という思いから、2020年9月に立ち上げた住宅専門チャンネル「YouTube不動産」が「わかりやすくて参考になる」と大好評で、チャンネル登録者数9.91万人、総視聴回数3400万回を超える(2023年10月時点)。著書に『プロが教える 資産価値を上げる住まいのメンテナンス』(週刊住宅新聞社)がある。

 

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※本連載は、YouTube不動産 印南和行氏の著書『プロ建築士が絶対しない家の建て方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

プロ建築士が絶対しない家の建て方

プロ建築士が絶対しない家の建て方

YouTube不動産 印南和行

日本実業出版社

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