「あのおもちゃ買って!」…泣いて座り込んだ子が〈素直に立ち上がる〉一言【頭のいい子の親がやっている子育て】

「あのおもちゃ買って!」…泣いて座り込んだ子が〈素直に立ち上がる〉一言【頭のいい子の親がやっている子育て】
(※写真はイメージです/PIXTA)

教育家・小川大介氏は、子どもの自分軸を育てるための3原則として、「認める」「見守る」「待つ」ことを提唱しています。そしてそのうえで「期待する」。この「3原則プラス1」で、子どもは自ら学び、伸びていく子になるといいます。具体的にはどのような対応が求められるのでしょうか。小川氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、今回は「認める」について解説します。

認めるとは、ありのままを「見て」、心に「留める」こと

子どもの「自分軸」の成長を阻んでしまう親の関わり方のひとつが、否定的な態度を取ることです。

 

今からお話しする「認める」という関わり方は、親の望ましくない行動を減らす効果があります。子どもは「自分が思ったことを大事にしていいんだ」という安心感を得られますから、日々、いろいろなことに疑問や興味を持ち、それについて自分なりに考えるチャンスが増えていきます。

 

子育てにおける「認める」とは、「評価」のニュアンスではなく、「存在を認める」ということ。「私は、あなたという人が今、そこで生きていることを知っていますよ」という感覚です。

 

ありのままを「見て」、心に「留める」ことこそが、「認める」本来の意味なのです。

子どもの言い分をいったん聞く

具体的にはどういうことなのか、生活のシーンで考えてみましょう。

 

【具体例:「あのおもちゃ買って!」子どもが座り込んでしまったら…

子どもがおもちゃ屋さんの前で「あのおもちゃ買って」とだだをこねているとします。まわりの人も振り返るほどに泣きわめき、ついには座り込んでしまいました。こんなとき、あなたならどうするでしょうか。

 

「いいから早く来なさい!」と腕をつかんで引きずる。これは「押しつける」です。

 

「なんであなたはいつもそうなの!」と怒鳴る。これは「責める」です。

 

「そんなにほしいのね」と、言い分をいったん聞く。これが「認める」です。

 

「わかるよ、おもちゃほしいよね。どのおもちゃがほしいの? そう、それがほしいんだ…。うん。でも今日は買わないよ。はい、行こう」。

 

これで、子どもは立ち上がります。パッと立つわけでなくても、自分のタイミングが来れば、ちゃんと立ち上がります。

 

無理やり連れて行こうとしたり、怒鳴ったりすると、子どもはてこでも動かなくなります。それが、言い分を聞いてもらえると、素直に立ち上がるのです。

 

この違いは、「おもちゃがほしい」という自分の気持ちを一度受け止めてもらえたかどうか、たったそれだけです。

 

「おもちゃがほしい状態の自分」がそこにいることを認めてもらうことで、子どもは「自分はおもちゃをほしがってもいいんだ」「おもちゃをほしがる自分がここにいてもいいんだ」と安心します。そのうえで「自分がおもちゃをほしいという気持ちと、今日おもちゃを買うか買わないかは別の問題なのだ」と理解します。だから子どもは立ち上がるのです。

 

腕をつかんで引きずるのも怒鳴りつけるのも、その場しのぎの対処であって、その子の気持ちを受け止めてはいません。そのため「自分のことをわかってくれない」という不満から、いつまでも泣きわめくことになってしまうのです。

Having・Doing・Being

カウンセリングやコーチングの世界では、よく「Having」「Doing」「Being」という言葉が出てきます。

 

「Having」は、何かを持っているのを認めることです。

 

「高そうな時計をしていますね」「いい車に乗っていますね」と、持っているものをほめるのがHavingだとイメージしてください。確かにほめてはいますが、あくまでも相手が持っている「モノ」をほめているに過ぎません。

 

Havingの気持ちで接すれば、「100点を取ってすごいね」という言葉も、「100点を取った子ども」ではなく「100点のテスト」がすごいという思いが伝わってしまいます。

 

「Doing」は相手の行動自体を認めることです。

 

「いい時計ですね。その時計を選ぶなんてセンスありますね」「100点取ったんだ。頑張ってたもんね」と、「モノ」ではなく「行動」をほめるイメージです。

 

HavingよりDoingのほうが、自分のことをより相手にわかってもらえた気がしてうれしいですよね。

 

「Being」は相手の存在そのものを認めることです。「そこにいるだけで素晴らしい」という無条件の承認です。

 

先ほどの例で言うと、大切なのは、「おもちゃをほしい状態の子どもを認める」ということ。「今、おもちゃがほしいんだね」と、子どもの気持ちに対して一度OKを出すことです。そのあと「今日は買わない」のか「じゃあ、買ってあげる」のかは、その場に応じた判断で構いません。

いい・悪いのジャッジの前に「そうなんだね」と受け止める

大切なのは「子どものあるがままを一度、受け止める」ことです。

 

生活の中のコンマ何秒でもいいので、まずは「子どもがそこにいる」「子どもがリビングでゴロゴロ転がっている」「子どもが勉強している」といった状況ひとつひとつを「ああ、そうなんだね」とそのまま受け入れる瞬間を持ってほしいのです。いい・悪いというジャッジはそのあとです。

 

一度「そうなんだね」という瞬間を持つことで、子どもは「ここにいていいんだ」「こう思ってもいいんだ」「生きていていいんだ」という安心感を得ます。その安心感が、「自分なりに感じ、考え、動いていい」という自己肯定感につながり、自分軸が育っていきます。

 

 

小川 大介

教育家・見守る子育て研究所® 所長

 

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾SS-1を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。

受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中(連載3本)。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。

※本連載は、小川大介氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

小川 大介

KADOKAWA

親が頑張りすぎないほうが、子どもは伸びる! 中学受験のプロとして活躍し、教科指導スキルにコーチング技術や心理療法的なアプローチをとりいれた指導方法で灘や東大寺、開成、筑駒、麻布など最難関中学に教え子を多数合格…

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