“米ドル高・円安”はそろそろ限界か…「円は売られ過ぎ」といえる理由【国際金融アナリストが解説】

8月29日~9月4日の「FX投資戦略ポイント」

“米ドル高・円安”はそろそろ限界か…「円は売られ過ぎ」といえる理由【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週の米ドル/円は、一時的ではありますが年初来の米ドル高・円安水準を更新するなど、円安相場が続いています。しかし、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「円は売られ過ぎており、目先の米ドル高・円安は限られる」といいます。その根拠とは……また、米ドル/円は具体的にどのレンジで推移するのでしょうか。詳しく見ていきます。

今週の注目点…「米金利上昇=米ドル高」行き詰まりも

すでに述べたように、先週の動きを細かく見ると、米ドル/円は米金利低下ほど下がらず、米金利上昇以上に上がった印象がありましたが、それはこれまで見てきた米金利固有の事情とは別の米ドル/円の事情の影響もあったかもしれません。

 

この数ヵ月の米ドル/円は、上海総合指数など中国株との間に「株安=円安」といった一定の相関関係があるように見えます(図表7参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]米ドル/円と上海総合指数(2023年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

その意味では、米金利上昇の米ドル高要因とは別に、中国株の下落に伴う円安という構図もあり、それが米ドル高・円安の反応が大きくなった一因の可能性があります。

 

ただ、そんな円にも、徐々に「売られ過ぎ」懸念再燃の兆しがあります。

 

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、経験的には売り越しが10万枚を超えてくると「売られ過ぎ」懸念が強まりますが、先週は9.5万枚の売り越しとなりました(図表8参照)。これを見ると、円売りの反応が今後限られる可能性もあるのではないでしょうか。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

今週は、水曜日に米4~6月期GDP改定値の発表、そして木曜日はFRBがインフレ指標として注目するPCEコアデフレーターの発表、さらに金曜日は米8月雇用統計の発表などが予定されています。これらの前回結果と今回の予想値は以下の通りです。

 

■8月30日:米4~6月期GDP(前期比年率)=速報値2.4%、改定値予想2.4%

■8月31日:米7月PCEコアデフレーター=前回4.1%、予想4.2%

■9月1日:米8月NFP(非農業部門雇用者数)=前回18万人増、予想16万人増

■同失業率=前回3.5%、予想3.6%

 

これまで見てきたように、米金利が「上がりにくい一方で下がりやすくなっている」可能性があるなら、先週のジャクソンホール会議という注目イベントも通過したことで、今週の米景気指標発表が大きく予想より強い結果とならない限り、米金利上昇は限られるでしょう。

 

そうであれば、すでに日米金利差から見るとやや米ドル「上がり過ぎ」の可能性があり、円も「売られ過ぎ」気味になってきたことから、目先的な米ドル高・円安は限られそうです。

 

以上を踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは、143~148円中心に米ドル高・円安が行き詰まるといった展開を想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧