「金融引き締め=株価にマイナス」は正しくない…投資のプロが世の中の日銀批判を“言いがかり”と切り捨てるワケ

「金融引き締め=株価にマイナス」は正しくない…投資のプロが世の中の日銀批判を“言いがかり”と切り捨てるワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

先月末の金融政策決定会合で、日銀が昨年12月に続き2度目の「YCC政策変更」を決めました。これに対し、「財政規律を弱める」「円暴落を引き起こす」といった批判がありますが、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はこれを否定します。その根拠とは? 詳しくみていきましょう。

経済拡大のけん引力となった「量的金融緩和」

YCCは、他国に続く「創造的金融政策」のひとつ

近年の世界の中央銀行金融政策は、新しい現実に対応した創造的政策の展開に満ちている。YCCもその流れのなかで評価されねばならない。

 

米国の「量的金融緩和」:銀行貸し出しのコントロールから資産価格のコントロールへ

かつての金融政策の中心は金利政策であったが、リーマンショック以降、短期金利がゼロに張り付いたこと、銀行融資による信用創造の比重が低下したことにより、新たな政策手段が必要になり、量的金融緩和が導入された。

 

バーナンキ議長の下で米国FRBは3回にわたって量的金融緩和を実施し、総資産を8,000億ドルから4.5兆ドルへと5.5倍に拡大した。

 

それにより急落していた資産価格が押し上げられ、絶大な経済効果をもたらした。米国株価はその後10年間に4倍に急騰、不動産価格も上昇し、米国家計の純資産は50兆ドルから100兆ドルへと倍増した。この家計資産増加額は米国GDPの2.5倍に相当する膨大なもので、それが米国消費を増加させ、持続的経済拡大のけん引力になった。

 

端的にいえば、中央銀行が資産市場に実弾を投入し資産価格を押し上げることで、総需要を増やすという新政策が定着したのである。金融政策の波及経路(トランスミッションメカニズム)は、従来の銀行貸し出しのコントロールから資産価格のコントロールへと明確にシフトした。

 

[図表3]日米欧中央銀行の総資産推移(ドル換算)/[図表4]米国長短金利と株価推移
[図表3]日米欧中央銀行の総資産推移(ドル換算)/[図表4]米国長短金利と株価推移

 

[図表5]米国家計総資産、債務、純資産推移
[図表5]米国家計総資産、債務、純資産推移

 

日本の「量的金融緩和」:米国同様効果絶大も…

日本でも第2次安倍政権成立後、黒田日銀総裁は2013年4月に異次元の金融緩和と銘打って、米国並みの超積極的な量的金融緩和に踏み切った。長期国債と株式ETFの購入によりマネタリーベースを2年で倍増するという当初の計画は、2015年1月にさらに強化され、マネタリーベースの拡大ペースは60~70兆円/年から80兆円/年へと増額された。

 

米国同様この威力は絶大で2年間で株価は2倍、ドル円は80円から120円へと急落し、物価もプラスへと浮上した。

 

[図表6]異次元金融緩和の大きな成果
[図表6]異次元金融緩和の大きな成果

 

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次ページ証明される日銀の「当事者能力」

※本記事は、武者リサーチが2023年8月7日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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