【防衛大、濃すぎる四季折々】退校続出・上級生に怯える春の1学年「自分も辞めようかな」⇒秋の1学年「“瞬間湯沸かし器”だと思う4学年ランキング発表」ひたすら4学年をいじるパーティー開催

【防衛大、濃すぎる四季折々】退校続出・上級生に怯える春の1学年「自分も辞めようかな」⇒秋の1学年「“瞬間湯沸かし器”だと思う4学年ランキング発表」ひたすら4学年をいじるパーティー開催
(画像はイメージです/PIXTA)

学費無料、衣食住完備、毎月12万0,200円(令和5年)の学生手当が支給される上に、年2回のボーナスまである防衛大学校。しかし学生生活はあまりにも厳しく、新入生は「防大になんて来るんじゃなかった」と1日1回は思うといいます。入学後5日間で100人が去ることも珍しくない、防大生活の4シーズンとは? 防大卒のエッセイスト・ぱやぱやくん氏の著書『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、在学当時のエピソードを紹介します。

「春は生き残れ」…厳しい生活に退校する1学年が続出

防大の春は厳しいイベントが多く、下級生にとっては生き残りをかけたシーズンです。4月には右も左も分からない新入生が右往左往し、2学年はカッター(短艇)競技会で死力を尽くします。下級生にとっては精神的・体力的にも厳しいシーズンであり、「桜を見ると憂鬱になる」と語る人さえいます。

 

カッター競技会が終わるまでは、2学年は1学年の味方で優しいですが、カッター競技会が終了すると、2学年が「1学年の指導役」になります。

 

5月のゴールデンウィークが終わると、優しかった2学年が「最大の敵」として襲いかかり、1学年は戦々恐々とします。5月のゴールデンウィーク終了から、6月の終わりにかけては祝日がありません。さらに蒸し暑い梅雨の時期に突入するため、作業服は常に汗だく、洗濯物は乾かないなどの悪夢が続き、教場は学生たちの熱と水分で「もわぁ…」とした嫌な空気が立ち込める、極めて憂鬱なシーズンです。

 

厳しい生活に退校する1学年が後を絶たず、「あいつは小原台(※注)を去ったよ」という会話があちらこちらで繰り広げられ、1学年は「自分も辞めようかな…」という気持ちと闘いながら、そっと夏を待ちます。

 

※注 防大は横須賀市小原台にあるため、関係者は防大のことを「小原台」と呼称することが多い。

「夏は訓練とバカンス」…“ホテル小原台”で気力を取り戻す

憂鬱な6月が終わり、夏が訪れると防大は訓練期間となります。

 

訓練期間中は講義がなく、朝から晩まで自衛官として必要な訓練を行います。2学年以上は各基地・駐屯地に赴き、訓練を受けます。陸上要員は演習場、海上要員は艦艇実習、航空要員は飛行場がある基地などに行きます。

 

訓練期間中は「航空要員が最も楽」と言われており、「航空要員は楽勝でいいよな」と陸上・海上要員から羨ましがられます。

 

1学年は校内で訓練を行うため、校内は1学年だけになる時があります。いつも上級生の圧政に苦しんでいる1学年が、我が物顔で校内を歩ける数少ない瞬間であり、この時期は「ホテル小原台」と呼ばれるプレミアムシーズンになります。「乾燥機を使えない」「シャワーを使えない」などの日常の制限がなくなり、廊下をゆっくりと歩ける悦びに心が震えます。辞めよう辞めようと考えていた1学年も、ホテル小原台を経験することで「もうちょっと頑張ろう」と思えるようになるのです。

 

訓練期間が終わる頃には、1学年は生活に慣れてたくましくなるので、上級生からも「ようやく防大生らしくなった」と少しは認められるようになります。

 

8月は夏季休暇となり、一瞬の夏のバカンスを学生たちは味わいます。

「秋は教養と文化」ひたすら4学年をいじる〈100日祭〉開催

夏季休暇を終え、9月になると前期定期試験が行われるため、防大は勉強ムード一色になります。試験期間中は「勉学に集中するため」と上級生も優しくなり、学生舎のムードも穏やかになります。各学年の「ブレイン」と呼ばれる学生が予想問題集を作成し、学生たちはせっせと勉強会を開きます。「大学っぽいな」と思える数少ない瞬間です。

 

10月になると、1学年は北富士演習場での1週間の集中訓練に行きます。この訓練は野営の基本を学ぶ訓練ですが、飯盒炊爨(はんごうすいさん)やコンパスの使い方などがメインであり、ボーイスカウトのキャンプみたいなもので楽しく過ごせます。

 

10月後半になると一大イベントである棒倒しや開校記念祭の準備が始まり、お祭りのような雰囲気になります。

 

また、「100日祭」というイベントもあります。これは4学年が卒業式まで「あと100日」という節目で行う行事で、ひたすら4学年をいじるパーティーです。下級生からアンケートをとり、「瞬間湯沸かし器だと思う4学年ランキング」などを発表し、防大生特有のブラックユーモアが炸裂します。

 

この時期になると1学年も「防大は面白いところだな」と思うようになり、帰属意識が高まります。

「冬は安らぎ」…辞めたがっていた1学年も〈進級〉にワクワク

 

ただ、2月には進級がかかった期末試験があるため、勉強に自信がない学生は「このままじゃ、留年するかも…」とどんどん顔が青ざめていきます。

 

また、4学年は卒業研究・論文に大忙しとなり、研究成果が情けないと発表会で大炎上するため、顔に焦りが出てきます。この卒業論文の出来がとてもよい理系の学生は、卒業後に研究者としての道を歩むことがあり、幹部任官後に大学院の博士課程などに進学するケースがあります(海外の大学院に進学するパターンもあります)。

 

3月になると、「1日中やることがない」というゴールデンな日々が訪れます。朝起きて、食事をして、朝礼が終わるとやることがなく、ずっと自習となります。これを「青色期間」と言い、学生の心が休まるひとときになります。仲のよい同期や後輩と、ランニングやトランプなどをしつつ過ごします。

 

 

4学年は、防大卒業後に配属される「幹部候補生学校」のことを想像しつつ、期待と不安で胸がいっぱいになりながら防大を旅立つ準備をし、在校生たちは4月に備えて準備と気合を入れ直すのでした。

 

 

ぱやぱやくん

防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。著書に『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』『陸上自衛隊ますらお日記』(どちらもKADOKAWA)などがある。

 

 

※本連載は、ぱやぱやくん氏の著書『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)より抜粋・再編集したものです。

今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校

今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校

ぱやぱやくん

KADOKAWA

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