(※写真はイメージです/PIXTA)

十分な年金と退職金に加えて、ローンも残っていない……そんな「盤石の資産状況」であっても、ひとつのきっかけから“老後破綻”に陥る危険性があると、牧野FP事務所の牧野CFPはいいます。決して多い事例ではありませんが、現実に起こっている老後破綻リスクについて、牧野CFPが事例を交えて解説します。

遺族年金は「ゼロ」…Oさんは“破産の危機”に

筆者はOさんから事情を聞き、現在月28万円で生活していることがわかりました。

 

しかし、以前は夫婦で月34万5,000円年金を受給できていましたが、Oさん1人となったいまは受給額が約6割減り、月20万8,000円です。月28万円の生活を続ければ、家計は毎月8万円ずつ赤字になってしまいます。このままでは、貯蓄も77歳になるころには尽きてしまう計算です。筆者は簡単な図(図表2)をつくり、Oさんに説明しました。

 

出所:筆者が作成
[図表2]Oさんの家計収支と貯蓄残高 出所:筆者が作成
※2 受給額が、Oさん自身の「老齢厚生年金」のほうが妻の「遺族厚生年金」より高いため、遺族厚生年金は「全額支給停止」。そのため、Oさん自身の年金のみ受給となる。詳細は、日本年金機構「年金の併給または選択(イ.老齢厚生年金と遺族厚生年金)」を参照。

 

もちろん上記の数値に、献金額はまったく含まれていません。Oさんは献金どころか、自身が普通に生活することすら成り立たなくなる寸前のところにいます。

 

Oさんは、筆者の作成した図表を見て肩を落とし、声が出ません。代わりに娘が、「今後どうしたらいいのでしょうか」と筆者に尋ねました。

FPが提案したOさんの立て直しプラン

筆者は考えた末、次のような試算を行いました。

 

厚生労働省の調査によると、Oさんと同じ65歳以上の単身無職世帯の場合、社会保険料や税金を含めた毎月の平均家計支出額は、15万5,495円※3となっています。

※3 厚生労働省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」より。参考までに、この調査で、実収入は13万4,915円。支出額の15万5,495円に対し毎月2万580円不足する結果になっている。

 

この支出額を参考にすると、現在収入が約20万8,000円のOさんは、今後月16万円の支出で生活すれば、単純計算で月約4万円ずつ貯蓄でき、80歳までに672万円を現在の貯蓄残高に上乗せすることができます。

 

しかし、現在の支出月28万円から12万円も支出を減らす生活は、現実的ではありません。そこで、いまより5万円減らし月23万円で生活したとするとどうでしょう。物価の変動で上下するでしょうが、80歳のとき約1,000万円の貯蓄が残せます。

 

よって、生活費が毎月23万円以下になるように生活すれば破産は免れることがわかりました。

 

◆まとめ…娘が見守るOさんのセカンドライフ

この試算のあと、Oさんから意向を伺い、父娘と筆者で改めて今後の生活費を決め、年金受給額と同じ月20万円の支出で生活することに決めました。ただし、節約が続く生活は息苦しいと、たまには貯蓄を取り崩して旅行に出かけるそうです。また、将来、介護が必要になったり、施設に入所することになった場合の費用も確保しました。

 

Oさんはこの日の最後、筆者の相談を機に目が覚めたのか、「人生の歯車が、あっけなく狂うところでした」とこぼしました。

 

娘は、「すごく心配でしたが、本当に相談してよかったです。夫にも協力してもらいながら、私がしっかりお父さんを見守らないと。ひとり娘であるからには、その責任がありますもんね」と微笑みました。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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