妥協をしない「現代の消費者」と不動産業界のギャップとは?

前回は、不動産業界に存在する「ブラックボックス」の概略を説明しました。今回は、妥協をしない「現代の消費者」と不動産業界のギャップについて見ていきます。

消費者が主導権をもち、モノやサービスを選ぶ時代に

みなさんは、普段どのように買い物をしていますか? 店頭でじっくり選んでから買うか、周りの消費に流されて買うか、事前に買うものを決めてから店に行くか、レジ周りでつい衝動買いをしてしまうか、どのようなタイプでしょうか? もし、できたら、今の20代の若い世代の消費観について、気づいたことを教えてください。

 

このことを多くの人に聞いて回ると、いろいろなことを教えてくれます。とくに40代、50代の人たちの反応は、若い人たちの消費にちょっと冷ややかです。「私たちの若い頃のように、クルマや海外旅行などにあまり興味がないようだ」「高級時計にも興味がないしね」「そのうえ、スマート、着こなし上手になったとはいっても、実は安売りの服ばかり着ている」

 

多くの年配の人は、「自分の頃はもっと派手に消費をしていたけれど、今の若い世代はずいぶん地味・実直になった」と答えるでしょう。たしかに、その傾向がないとは言えません。40歳の私も、自分の若い頃はずいぶん遊んだのに、今の若いやつときたら・・・と思わないわけではありません。

 

しかし、そう思うと同時に、彼らの消費には地味だけでも、ただの実直だけでもないものも感じるのです。たとえば、年収1000万円の夫と暮らす40代の主婦がいるとします。一方で年収300万円ずつの20代の共働き夫婦がいるとします。

 

さて、この奥さんと共働き夫婦とは、どちらがハッピーに見えるでしょうか。どちらが消費を、言い換えると生活を楽しんでいると思いますか?

 

私には、必ずしも「こっちだ」とは特定できないような気がします。一見すると、年収1000万円の夫と暮らす主婦のほうがのんびりと優雅に暮らし、満たされているような気もします。でも、本当は年収300万円ずつの若い共働き夫婦のほうが充実した暮らしをしているようにも思えるのです。

 

なぜ、そう思えるのか? その理由の一つとして、私には、今日の主流とも言える年収300万円の共働き夫婦のほうが、「貧乏」を武器・既得権として、正々堂々と、必要なモノやサービスを妥協せずに買っている・・・そういうふうに感じるのです。

 

もし、彼ら共働き夫婦が車や海外旅行に興味があれば、しっかりとお金を貯めて車を買い、海外旅行に出かけるでしょう。しかし、彼らはそれほどの興味がないからカーシェアリングですませ、海外に行かずに友だちとのバーベキューパーティを楽しんでいるのです。

 

彼らは、高級時計を買う必要性を感じないからケータイやスマホの時計機能で十分なのです。さらに、彼らは量販店のファッションフロアに置かれた商品が機能的に優れていることをよく知っているので、みずから選んでその商品を購入しているのです。

 

年収1000万円の夫と暮らす専業主婦は、誤解を恐れずに言えば、自分は稼ぐことをせずに「家族で海外旅行にも行けないわ」とぼやくだけの人が多いように思うのです。このように、一見すると消費は地味・実直になったかに見えますが、このことは「自分は何を消費するのか」という選択の目が厳しくなったということもできます。つまり、消費に「妥協しなくなった」のです。

 

では、なぜ妥協しなくなったのでしょうか? 多くの業界・マーケットで情報の非対称性がなくなり、消費者が選択権をもつようになったからです。選択権をもてば、当然ながら消費者はイニシアチブ=主導権をもってモノやサービスを選ぶようになります。

 

つまり、イニシアチブを行使するからこそ、妥協してモノやサービスを買うことがどんどんなくなってきたのです。

消費者に妥協を求める「懲りない不動産業者」

ところが、です。いまだに、必ずと言ってよいほど妥協を求める業界があります。それが不動産業界なのです。

 

物件探しをしたことがあるみなさんは、不動産営業マンのこのような営業トークを聞いたことがありませんか? 「日当たり、間口、敷地面積、眺望、通勤距離・・・アレもコレもと考えていたら決して理想の家は手に入りません。どれか一つにある程度は満足できたら、あとは“ まあまあかな” と納得することも大切ですよ」

 

家は、一生のうちに何度も購入することのない大きな買い物です。大きな買い物だからこそ、これまではアレもコレもという要望は満たせないと、どこかで妥協して購入してきたのです。しかし、これからは違います。一生のうちに何度もない大きな買い物でも、いや、むしろ大きな買い物だからこそ、絶対に妥協せずに購入するようになるのです。そのような購買志向、消費性向をもった若い世代が、住宅購入の中心層になるのです。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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株式会社アルティメット総研 代表取締役社長
株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長 

1972年生まれ。株式会社アルティメット総研代表取締役社長。株式会社プロタイムズ総合研究所代表取締役社長。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。次世代に向けた不動産流通を活性化させるための枠づくりを推進する一般社団法人全国不動産次世代流通振興会代表理事としても活動中。

著者紹介

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

大友健右

幻冬舎メディアコンサルティング

古い慣習がはびこる不動産業界。消費者には知り得ない業界の慣習(ブラックボックス)の中で家を買おうとすると、どうしても損な買い物しかできない。 本書は、これまで業界でひたすらに隠されてきたブラックボックスの中身を公…

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