自宅に「家を売りませんか?」というチラシが頻繁に入る理由

前回までの連載で、駅前の不動産屋さんに多い「売り仲介業者」について説明しましたが、今回は、あなたの家が不動産会社に「利用されている」現状を見ていきましょう。

「売り仲介業者」になるためにチラシを投函!?

みなさんのなかには、すでに家やマンションを購入してしまっている人もいるでしょう。その家やマンションのポストに「自宅を売りませんか」というチラシが頻繁に入っていることはありませんか? 

 

なかには何年も住んだ家ではなく、購入したばかりの家のポストにも入っていることがあります。

 

このことは、賃貸住宅に暮らしていた頃にはなかった経験でしょう。そのようなチラシを見ると、「あ、私の家を求めている人がいるのかな?」と、だれもがちょっとは思うかもしれません。

 

ではなぜ、このように「自宅を売りませんか?」というチラシがたくさん入るのか。その理由は、前回紹介したとおり、不動産会社ならどの会社でも、できれば売り仲介業者のポジションに立ちたいと思い、そのためには売り物件をたくさん仕入れる必要があるからです。いわば、それが売り仲介業者のポジションに立つための近道なのです。

 

では、不動産会社はどのような売り物件を仕入れたいと考えているのか。実は、そこにターゲットを絞ったマーケティングの手法はほとんどありません。ですから、そのようなチラシは、こういっては語弊がありますが、安っぽいものが多いのです。

 

加えて、同じ地域なら築浅の物件のほうが売りやすいのは事実なので、買ったばかりの家のポストにも関係なく投函されているのです。

 

売り仲介業者のポジションに立ちたいと考える不動産会社は、古い家をもつ人には処分するのに絶好の機会と思わせ、買って日が浅い人には、ローン返済の重圧から解放される期待感を抱いてもらう・・・。そのようなチラシであれば十分と考えているのでしょう。

業者はあなたの「勘違い」につけ込む

では、そのような素朴でシンプルなチラシに、どのようなコピー(文言)が書かれているかをちょっと思い出してみましょう。

 

「○○町で、××坪クラスの物件を心待ちにしている方がいらっしゃいます」

「○○小学校の校区でマンションをお探しの方がいます!」

 

世の中には、「家の売却はむずかしい」という情報が氾濫していることを十分に知っていても、それを見た人は、「私の家は売却できるかも?」とか「私の家にはほかの人が認める価値があるのかも?」と思ってしまうようなコピーが並んでいるはずです。

 

チラシそのものはいたって素朴でシンプル、言い換えると安っぽいものですが、中身のコピーはできるだけ売る気にさせる・・・、たとえ買い仲介業者のポジションに立つ不動産会社でも、なんとか売り仲介の立場になりたいと、それなりに知恵を絞っているのでしょう。

 

ところで、あなたは迷惑メールにだまされたことがありますか?

 

なぜ、こんな質問をするのかというと、出会い系サイトからの迷惑メールにも、同じような誘いのコピーが満ちあふれているからです。もちろん、最近は少し受信拒否のシステムが浸透してきましたが、一時は出会い系サイトに登録しなくても、このような誘いのメールが届いていたかもしれません。

 

そのメールの文言をいくつか並べてみましょう。「好きです。あなたに、どうしても会いたい」「今度、同窓会があります」といったものから、「私の○○○○万円の相続財産をもらってください!」といったものまでさまざまな文言が並んでいます。

 

そのような誘いをたくさん受け、「オレってモテるのかも」と勘違いしたことはありませんか? 見ず知らずの相手から、突然ウマすぎる誘いに・・・。まず、ないでしょうね。

 

このような誘いのメールにだまされてしまうような人は、まずいません。ところが不思議なことに、不動産会社の「売り物件探し」のチラシでは、まだ、「今なら私の家は売れるのかな?」と勘違いしてしまう人がいるのです。また、勘違いする人がいると思っている不動産会社があるのです。

 

しかも家の売買は単価が大きいので、千人、万人に一人でも勘違いしてくれたら、業者にとっては大きな収益源になり、売り仲介の立場に一歩近づくということになります。

 

このような事情は、賃貸住宅に暮らす若い人をはじめとした一般的な消費者はよくわかりません。家を購入して初めて売り物件を求めるチラシの多さに気づき、勘違いしてしまうのです。

 

さらに、実際に家を売りに出すとなると、不動産業はいろいろなテクニックを使います。相場としては3000万円の家でも4000万円で売れるかも? と話をもちかけ、別の物件を売るための“商材”に使ったりもします。連載第12回で紹介した「まわし物件」として活用することもあるのです。

 

不動産業界の取引はブラックボックスの中にあり、個人の売主は取引のしくみをまったく知らない「情報弱者」ですから、ひどい言い方をすれば勘違いしたあなたの家は、不動産業者に好きに使われてしまうこともあります。

 

そのようなことも平気で行われているのが、不動産業界なのです。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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株式会社アルティメット総研 代表取締役社長
株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長 

1972年生まれ。株式会社アルティメット総研代表取締役社長。株式会社プロタイムズ総合研究所代表取締役社長。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。次世代に向けた不動産流通を活性化させるための枠づくりを推進する一般社団法人全国不動産次世代流通振興会代表理事としても活動中。

著者紹介

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

大友健右

幻冬舎メディアコンサルティング

古い慣習がはびこる不動産業界。消費者には知り得ない業界の慣習(ブラックボックス)の中で家を買おうとすると、どうしても損な買い物しかできない。 本書は、これまで業界でひたすらに隠されてきたブラックボックスの中身を公…

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