本当は「買い物のプロ」!? 消費者が不動産会社に求めるもの

前回は、営業マン一人ひとりの力が問われる不動産売買の仲介業者について取り上げました。今回は、本当は「買い物のプロ」である消費者が不動産会社に求めているものについて見ていきます。

リアルで現実的な情報を求めている消費者

「家というものは一生のうちで何度も買うものではない」とは、業者側から見れば、ターゲットに対する販売機会がそう頻繁にあるわけではないということです。ですから、今のメインターゲットである30代、40代前後に絞り込んで商品開発・営業展開していくだけではなく、やがて購買時期を迎える20代の消費動向・性向も踏まえながら商品開発・営業展開していく必要があります。

 

若い世代の消費性向は、これまでお話ししてきたよりも、さらに変化しています。バブル世代が30代に「妥協消費をしない」世代という印象をもつ以上に、まったく様変わりしているのです。その一つが、よりリアルな情報しか求めなくなっているということです。

 

たとえば、ファッションショーが挙げられます。かつては、ファッションについてもモデルに対しても、パリコレに憧れた世代がいました。ところが、それが今はまったく変わってきています。東京ガールズコレクションに“主戦場”が移ってきているのです。

 

パリコレと東京ガールズコレクションの大きな違いは何か。モデルやファッションがより等身大の存在になったという違いだけではありません。その場で、そのファッションの購入を決めることができる “リアル感”なのです。業者側、売り手側は、そのリアル感をぞんぶんに提供できるかどうかが、今後、消費者と付き合っていくうえでは重要な要素となります。

イメージ画像やキャッチコピー広告は消費者に響かない

このリアル感に対してほど遠く、むしろ、まったく対極にあり続けるのが不動産会社の広告および広告戦略です。みなさんの家にも、毎週、金曜日、土曜日になると、たくさんの不動産会社から物件案内の広告や新聞の折込み広告が届いていますね。

 

持ち家の人なら、「家を売りませんか? この地区で家を探している人がいます!」といったチラシが自宅のポストに入っているでしょうが、この場合はもっと広範囲に、買い手を探すような新築戸建て・マンション広告、また、中小不動産業者の、いわゆる買い仲介業者の広告です。大手デベロッパーの大規模マンション販売広告ともなると、「広告にも、ずいぶんお金を使っているのだろうな」と思えるようなものがたくさんあります。

 

ところが、そのような不動産会社の広告を「パリコレ→東京ガールズコレクション」という目線、つまり、よりリアルな情報を求める目線であらためて見ると、何か感じるところはありませんか? 極めて旧態依然としていて、ステレオタイプで、よりリアルな情報を求めるようになった消費者からすれば、一言で言うと、「ダサい!」のです。

 

都心の高層マンションであれば「四方を見渡す眺望」であり、首都圏の郊外であれば、「緑豊かな田園空間」であり、大規模マンションであれば「高級感・重厚感あふれるエントランスに加えて全世帯駐車場完備」であり、挙げたらキリがありませんが、そのような言葉と、その言葉から想像できるイラストや写真で、「夢のある生活」を演出し続けているのです。

 

これに対して、業界関係者の多くは、おかしいとは思わないのでしょうか。いつまでもリアル感に欠けた広告戦略を続けていても・・・、と少しは嫌気が差してこないのでしょうか。

 

実際に家探しをしている若い世代の買い手は、実はそうしたイメージ画像やキャッチコピーには見飽きてしまい、広告の隅に細かく記された所在地や地目、敷地面積の表示が重要と思っている人がたくさんいるはずです。20代の、よりリアル感を求める若い人たちとなると、この広告の段階でリアル感がまったくなく相手にしなくなっているのです。

 

広告戦略一つをとっても、業者側と消費者側の情報に対する意識・志向の違い、ギャップをどのように埋めていくかが、今後の不動産業界は問われています。私は、中途半端に夢を演出・表現するような広告戦略はもうやめにして、ネットを通じてリアルな情報をどんどん提供し、不動産会社は本来の仲介業として消費者に対応していくことが大事だと考えています。

消費のスタンダードに合わせてサービスは進化していく

私は、リアルで現実的な情報しか求めなくなった消費者が、「消費のスタンダード」になったことを目の当たりにして、世の中のサービスも消費者のほうをしっかりと向き、よりリアルな改善を進め、進化していると捉えています。

 

今の20代を、ほかの世代、とくに彼らより年配の世代としては、「買い物が地味になった」「実直で、お金を使いたがらない」などと言い放ってしまうのは簡単です。しかし、実態は消費のスタンダードが若い世代に変わってきているのです。

 

それが当たり前になっていくことは、彼らのもつ感性が、消費のスタンダードになるということです。一見、安物の服を買ってばかりいるように見えて、絶対に妥協できない機能性を重視して服を買う彼らの感性、一般的な車にはまったく興味がなくても、本当にほしい車には国産・海外のメーカーを問わず妥協しない彼らの感性、普段は会社では弁当男子、夜は家飲みで安く上げていても「ここぞ」という日には妥協せず納得いく店のフルコースを食べに行く彼らの感性・・・。彼らの妥協しない「買い物のプロ」の感性が、消費のスタンダードになっているのです。

 

そして、飲食業など、そのことに気づいている業界や企業は、だれが消費のスタンダードであるかを踏まえて、どんどんサービスを進化させているのです。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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株式会社アルティメット総研 代表取締役社長
株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長 

1972年生まれ。株式会社アルティメット総研代表取締役社長。株式会社プロタイムズ総合研究所代表取締役社長。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。次世代に向けた不動産流通を活性化させるための枠づくりを推進する一般社団法人全国不動産次世代流通振興会代表理事としても活動中。

著者紹介

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

不動産屋は笑顔のウラで 何を考えているのか?

大友健右

幻冬舎メディアコンサルティング

古い慣習がはびこる不動産業界。消費者には知り得ない業界の慣習(ブラックボックス)の中で家を買おうとすると、どうしても損な買い物しかできない。 本書は、これまで業界でひたすらに隠されてきたブラックボックスの中身を公…

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