(※写真はイメージです/PIXTA)

割安なときに株を買い、割高なときに株を売りたい…。そんな切実な思いから、株価の適正水準を考えるさまざまな「ものさし」が開発されています。そんなものさしの代表として有名なのが「PER」と「PBR」です。本記事では、最も重要だとされるPERについてみていきます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

株価を1株あたり利益額で割った値(PER)からわかること

「PER」というのは「Price Earnings Ratio(=株価収益率)」の略で、株価を一株あたりの利益で割った値のことです。

 

日本企業のPERは15倍程度が普通だと言われており、利益が7円の会社の株価なら、105円程度が普通だ、ということですね。

 

投資家は「PERが15倍より高いので、株価は割高に見えるけれども、この会社は利益が増えていきそうだから、いまの株価は妥当だろう」といった判断をするわけです。

PERなら「株価の比較」ができる!

大きな会社でも小さな会社でも、PERは似たような水準になると考えられます。ということは、PERを比較すれば、どの会社の株が割高か割安かを判断することができる、というわけです。

 

大きな会社は、利益額は大きいですが、発行済み株式数も多いので、一株あたりの利益を小さな会社と比較すると、比較的似た金額になります。株価も似ているとすれば、PERも似ているわけですね。

 

ちなみに、大きな会社で発行済み株式数が少ない会社もあります。そうした会社は一株あたりの利益は大きいのですが、株価も高いので、やはりPERは小さな会社と大差ないのが普通です。

 

製造業企業とサービス業企業も、PERは似ているはずですから、PERの比較は可能です。製造業の株価は利益の100倍でサービス業の株価は利益の10倍だ、という国があったら、皆がサービス業の株を買うのでサービス業の株価が上がり、PERが上がり、結局製造業と似たようなPERになるはずだからです。

急成長企業のPER、「極めて高くなることがある」のはなぜ?

「株価はどんな会社でも似ている」というのが基本ですが、当然例外もありますので、企業同士のPERの比較をする際には注意が必要です。

 

たとえば、急成長企業で10年後の利益が100倍になっているかもしれない、という企業のPERは、非常に高くても不思議はないからです。

 

いまの利益が7円なら、PERが15倍だとすれば株価は100円強が妥当だということになりますが、10年後の利益が700円になりそうなら、株価は1万円強が妥当で、PERは1500倍が妥当だ、ということになるかもしれません。

 

まあ、実際には急成長企業は倒産するリスクも高いので、1万円で株を買う人はいないでしょうから、PERは1500倍よりは低いのが妥当だとは思いますが。

「過去の自社のPER」との比較が重要だといえるワケ

他社との比較より確度が高いのは、過去の自社とのPERの比較です。自社の株について過去の平均よりPERが低ければ、株価が割安だと判断していいでしょう。

 

もっとも、かつては急成長企業だったのが、成長力が衰えてきて、衰退企業になりつつある、といった場合には、過去よりPERが低いのが当然ですから、割安だと思って喜んで買うと株価がさらに下がるかもしれません。要注意ですね。

大不況時の「PER」はミスリーディングに

PERを計算するときの利益は、発表されている前期の利益を使う場合と、今期の利益の予想を使う場合があります。普通はどちらを使っても似たようなものなのですが、大事件があった場合には要注意です。

 

たとえば、大不況が来て利益が出なかったり、本社ビルを売ったので巨額の利益が出たりした場合などです。そうした場合には、大事件が無かった方の利益を使うべきですね。

 

とくに気をつけるべきなのは、大不況のときでしょう。リーマン・ショックのような状況では、利益はほぼゼロかもしれません。そうなると、15倍しても妥当な株価はほぼゼロということになってしまうからです。

 

来年以降はマトモな利益に戻りそうだという場合には、それを考慮した株価が妥当なわけです。もっとも、来年以降の利益を予想するのは大変ですから、たとえば過去10年の利益の平均を用いて、それに妥当なPERを掛け合わせて妥当な株価の検討をつける、といったことが必要でしょうね。

 

また「割安なときに買って割高なときに売る」というのは、長期投資の場合は役に立ちますが、短期投資の場合は危険かもしれません。株価はときとしてオーバーシュートしますから、株価が下がりはじめると、割安になっても下がり続ける場合が少なくないからです。

 

本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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