◆手形日数の短縮化が検討されている
ただし、中小事業者の取引条件の改善を図る観点から、すでに公正取引委員会が手形日数(ちょうちんお化け)を「60日以内」に短縮するよう求めています。
中小企業と多く取引する親事業者には、「2024年目処で対応するように」というお達しが出ています。この情報を武器に、取引先にタイムラグの是正を求めてもよいかもしれません。
◆「お化け」という発想が生まれたわけ
私は会計の専門家ではないので、会計用語に苦労しました。「売掛金」や「受取手形」という言葉は耳にしたこともありませんでした。
「売掛金も受取手形も、売った代金を将来もらえる」と思っていたので、多ければ多いほど、将来もらえるお金が多く、売掛金や受取手形が多いのは「良いことだ!」と思い込んでいました。
しかし、売掛金も受取手形もまるでお金が凍結されているようで、資金繰りを苦しくするものでした。どうしても脳では「良いもの」と認知してしまうので、「お化け」というメタファーが生まれました。
仕入債務は「ラッキーアイテム」
◆仕入債務のメカニズムについて知る
次に、貸借対照表の右上にある「仕入債務」について見ていきましょう。
◆支払までの猶予がある「仕入債務」
先ほどのお化けと逆の要素をもつものがあります。それが仕入債務です。仕入債務とは、商品や材料の仕入などを行ったとき、あとで支払うと約束した債務のことです。
一般的には「買掛金」と「支払手形」が含まれます。この仕入債務は支払までの猶予があります。先ほどの居酒屋のケースで、あなたが客でツケにしてもらっているのと同じです。豚の貯金箱から現金が出ていくのを遅らせることができます。
まさに「ラッキーアイテム」!この仕入債務が多ければ多いほど、豚の貯金箱に長く現金を貯めておけることになります。
◆仕入が多いほどいいわけではない
しかし、ここで注意してほしいのが、「ラッキーアイテムを増やすために必要以上に仕入れない」ということです。
たとえば、買掛金を大きくしようと思って、コーヒー豆を普段よりも100万円分多く発注して、買掛金を生み出すことは意味がありません。あくまでも「適量を仕入れて、支払を遅らせ、ラッキーアイテムを増やす」という意味です。
ラッキーアイテムが支払を遅らせて増えるのはうれしいことですが、無理にアイテムをつくる必要はないということを覚えておきましょう。
会社を動かすのに必要な「経常運転資金」
◆経常運転資金を考える
これまでに出てきた「いつかお金になるなるお化け」と「ラッキーアイテム」が分かれば、あなたの会社を経営するために最低限必要なお金である「経常運転資金」が算出できます([図表4][図表5]参照)。
たとえば、同じ売上1億円の会社で、A社の経常運転資金が4000万円、B社の経常運転資金が1000万円だったとします。B社は1000万+αの現金があれば経営ができますが、A社は4000万+αの現金がないと経営ができません([図表6]参照)。
経常運転資金が高いほど、苦しくなるのは家計と一緒です。