(※写真はイメージです/PIXTA)

銀行にお金を預けても利率が低すぎて増えず、インフレも進行し、老後資金の準備に不安を抱く人が増えています。また、「いつまでに始めれば間に合うのか」というのも気になります。セゾン投信創業者の中野晴啓氏が、著書『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から、50歳からでも十分間に合う老後の資産形成について、「新NISA」の活用方法に触れながら解説します。

投資できる商品には制限がある

新NISAでは非課税保有限度額が1,800万円になりますが、これは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠に分けられます。

 

つみたて投資枠は、基本的に現行のつみたてNISAの延長だと考えていいでしょう。

 

つみたて投資枠を用いて積立投資できるのは「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」で、「現行のつみたてNISA対象商品と同様」とされています。

 

「一定の」というのは、金融庁が定めた基準に合っているものだけが投資対象になるということです。

 

金融庁が基準を設けていることをもって、つみたてNISAの投資対象となっている投資信託は「金融庁のお墨付き」だという人がいますが、これは誤解を招く表現です。

 

金融庁は、届け出のあった投資信託を、一定の基準で選別しているだけです。

 

次に成長投資枠ですが、これは現行の一般NISAの延長線上にあるものと考えてください。投資できるのは、一定の条件を満たした株式の個別銘柄や投資信託などです。

 

まだ金融庁から具体的な発表はありませんが、REITなども対象になるでしょう。

 

「一定の条件」とは、株式の個別銘柄については、整理・監理銘柄でないこと。整理銘柄とは上場廃止基準に該当し、上場廃止が決まった銘柄のことです。

 

また、監理銘柄とは、上場廃止基準に該当する可能性があると、証券取引所に指定された銘柄です。

 

投資信託については、運用期間が20年未満のものや、高レバレッジ型、毎月分配型は対象外になります。

 

レバレッジ型とは、株価インデックスの値動きに一定の倍率を掛けた数字に連動するもので、その倍率が高いものが高レバレッジ型です。その分、リスクが高い商品です。

 

また、毎月分配型とは、その名の通り、毎月分配金が出るものです。運用資金がなかなか増えないため、長期投資のメリットを活かしにくい商品です。

 

成長投資枠の対象になる投資信託は全体の3分の1程度になるという記事が新聞に掲載されていましたが、私は、実際には投資するに値する投資信託の本数はもっと少ないのではないかと思います。

 

というのも、純資産総額の規模が50億円に満たないような投資信託は、運用の持続性という面でいささか疑義があるからです。

 

前述したように投資信託の約款には「繰上償還条項」というものがあり、受益権口数が一定の口数を下回ると、償還期日前でも繰上償還されてしまうケースがあります。恐らく、純資産総額が50億円に満たない状況になると、そのリスクが高まると考えられます。

 

では、純資産総額が50億円に満たない投資信託は、全体のうちどの程度を占めるのでしょうか。2023年1月時点の数字で見ると、5704本ある追加型公募投資信託のうち、純資産総額が50億円に満たないものは、実に3600本程度もありました。

 

つまり、長期投資を前提にした場合、純資産総額が50億円未満という条件でスクリーニングした段階で、すでに全体の3分の2に近い投資信託が投資するに値しないということになるのです。

 

そこから、信託期間の残りが20年以上あること、高レバレッジ型の投資信託と毎月分配型の投資信託は除外すること、という条件を加味すると、成長投資枠で買える投資信託は、さらに少なくなってしまうと考えられます。

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1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法

1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法

中野 晴啓

PHP研究所

2024年1月にスタートする「新NISA」を使った 今からでも間に合う老後資金の作り方を徹底解説 利率の低い銀行預金だけでは、資産はなかなか増えない。インフレも続き、老後のお金に不安を感じる人はますます増えているだろ…

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