(画像はイメージです/PIXTA)

計画的で総合的な街づくりを行っていく「都市計画」という基本制度は、「都市計画法」によって定められています。市街化区域や市街化調整区域といった区分があるほか、用途にも決まりごとがあり、制約が設けられていることから、土地の購入や不動産活用にあたっては、必ず確認すべき事項となっています。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

土地に関する基本的な施策が定められている「土地基本法」

都市計画法の根拠となるものが、「土地についての憲法」とも呼ばれる「土地基本法」です。土地基本法には、土地に関する基本的な施策が定められています。

 

【基本理念】

●土地についての公共の福祉優先

●適正な利用および計画に従った利用

●投機的取引の抑制

●価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担

 

【基本的施策】

●土地利用計画の策定

●適正な土地利用の確保を図るための措置

●土地取引の規制等に関する措置

●社会資本の整備に関連する利益に応じた適切な負担

●税制上の措置

●公的土地評価の適正化等

総合的な街づくり計画=「都市計画法」

(1)都市計画

都市計画とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための 「総合的な街づくり計画」

 

(2)都市計画区域

都市計画区域とは、一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要があるとして、都道府県が指定する区域をいいます。区域が2つ以上の都道府県にまたがる場合には、都道府県ではなく国土交通大臣が指定します。

 

これに対して、準都市計画区域とは、これから大規模な開発が行われようとしている区域など、一体の都市としての整備、開発・保全する必要があるとして、都道府県が指定する都市計画区域の外の区域をいいます。たとえば、幹線道路沿線や高速道路のインターチェンジ周辺などがあります。

 

(3)市街化区域と市街化調整区域の区分

無秩序な市街化を防止して、計画的な市街化を行うため、都市計画区域の中では、市街化区域と市街化調整区域とに区分されます。

 

市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に市街化しようと促進している区域をいいます。

 

これに対して、市街化調整区域とは、市街化することを抑制すべき区域をいいます。

 

市街化区域や市街化調整区域の区分を、「線引き」と呼びます。したがって、都市計画区域の中であっても、線引きが行われていない区域のことを、「非線引き区域」といいます。

 

[図表1]都市計画区域のイメージ

 

[図表2]都市計画区域の概要

 

★土地基本法に基づいた「都市計画法」はこちらをチェック

【FP3級】 都市計画法とは?土地基本法から開発許可制度までを学ぶ

無秩序・無計画な土地開発を防止する「用途地域」の指定

市街化区域の中には、無秩序・無計画な土地開発を防止するために、原則として用途地域が定められます。用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つに大別され、全部で13種類あります。

 

用途地域が指定されると、建てることのできる建物の種類が、建築基準法によって制限されます。

 

たとえば、住居系で、制限が最も厳しい地域は、第1種低層住居専用地域です。また、商業系であれば、住宅を建築することもできますが、工業系では住宅を建築することができません。

 

なお、建物の敷地が2つの異なる用途地域にまたがる場合、原則として、その敷地の過半の面積が属している地域の規定が適用されます。

 

[図表3]用途地域のおおまかな3種類

 

第一種低層住居専用地域は、低層住宅の住環境を守るための地域です。床面積50m²までの住居兼用店舗や、公共施設を建てることができます。例えば、2階建て戸建て住宅・アパートです。コンビニを建てることはできません。

 

第二種低層住居専用地域も、低層住宅の住環境を守るための地域です。150m²までの店舗を建てることができます。コンビニを建てることが可能となっています。

 

第一種中高層住居専用地域は、中高層住宅の住環境を守るための地域です。500m²までの店舗や、中規模な公共施設、病院・大学などを建てることができます。例えば、3階建て以上のアパートやマンション、スーパーマーケットやドラッグストアのある住宅街です。

 

第二種中高層住居専用地域は、中高層住宅の住環境を守るための地域です。1500m²までの店舗や事務所を建てることができます。

 

第一種住居地域は、住居環境を保護するための地域です。3000m²までの店舗・事務所・ホテルや、小規模な工場が建てることができます。

 

第二種住居地域も、住居の環境を保護するための地域です。10000m²までの店舗・事務所・ホテルや、小規模な工場が建てることができます。

 

準住居地域は、道路の沿道などにおいて、住居が調和した環境を保護するための地域です。10000m²までの店舗・事務所・ホテル、車庫・倉庫、小規模な工場も建てることができます。

 

田園住居地域は、農地や農業関連施設などと調和した低層住宅の住環境を守るための地域です。ビニールハウスなどの生産施設や農産物生産資材の倉庫などのほか、農産物を販売するための500m²までの店舗を建てることができます。

 

近隣商業地域は、近隣の住民が日用品を買物する店舗など、商業を行うための地域です。ほとんどの商業施設・事務所のほか、住宅・店舗・ホテルか、車庫・倉庫、小規模の工場も建てることができます。延べ床面積の規制が無いため、中規模以上の建築物を建てることもできます。

 

商業地域も、商業を行うための地域です。ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテル、車庫・倉庫、小規模の工場のほか、風俗営業の施設も建てることができます。延べ床面積規制が無く、容積率限度も高いため、高層ビルも建設可能です。例えば、都心部の繁華街やオフィスビル街が商業地域に該当します。近年は、商業地域にタワーマンションも建設されており、工場以外は、何でも建設可能な地域です

 

準工業地域は、軽工業など環境悪化のおそれのない範囲で、工業を行うための地域です。住宅や商店も建てることができます。

 

工業地域は、工業を行うための地域です。どんな工場でも建てることができます。住宅・店舗も建てることができますが、学校・病院・ホテルを建てることはできません。

 

工業専用地域も、環境悪化のおそれのある巨大な工場までも含め、工業の行うための地域です。どんな工場でも建てることができます。住宅・店舗・飲食店・学校・病院・ホテルを建てることはできません。

 

出典:国土交通省
[図表4]13種類の用途地域のイメージ 出典:国土交通省

 

出典:東京都都市整備局
[図表5]用途地域による建築物の用途制限 出典:東京都都市整備局

 

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【死別】配偶者の死別後の復氏届とは?本人と子供を結婚前の旧姓に戻す手続きを解説

都道府県知事の事前チェックと許可が必須…「開発許可制度」

「開発」とは、「主として建築物の建築または特定工作物の建設に提供するための土地の区画形質の変更」、すなわち、建物を建てるために、道路を新設したり、土地を造成したりすることをいいます。都市計画区域または準都市計画区域内において、開発を行うためには、都道府県知事の事前チェックと許可を受けなければいけません。これを開発許可制度といいます。

 

市街化区域では、良好な市街地として備えるべき基準を満たしていれば、開発が許可されます。反対に、市街化調整区域では、原則として開発が許可されません。

 

開発許可制度の対象となるのは、一定の面積規模以上のものとされています。

 

ただし、鉄道や図書館など公益上必要な建物を建てるための開発行為、市街化区域以外の区域において農林漁業のための建物を建てるための開発行為は、開発許可が必要ありません。

 

(1)許可の対象

市街化を推進する市街化区域では、原則として土地の面積が1,000㎡以上の開発を行うときは、許可が必要となります。3大都市圏の一定の区域では500㎡以上の開発です。これに対して、市街化を抑制する市街化調整区域では、原則として面積にかかわりなく開発行為に許可が必要です。

 

一方、非線引き区域や準都市計画区域では、原則として、3,000㎡以上の開発行為に許可が必要となります。

 

(2)建築制限

開発許可を受けた土地は、工事完了の公告が行われるまで、建物を建築することができません。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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