(画像はイメージです/PIXTA)

ここ数年、日本政府からの誘導もあり、投資に関心を持つ人が増えています。とはいえ、基礎的な勉強をせずにスタートを切っては危険です。最低限知っておくべき基礎知識として、金利について取り上げます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「金利」はすべての金融商品に影響を与えます。景気、物価、外国為替が金利に及ぼす影響、政府の財政政策、日銀の金融政策についても理解しておきましょう。

金利はなぜ「変動する」のか?

(1)金利は需給関係によって決まる

金利は、お金の借り手と貸し手の間の需給関係によって決まります。お金を借りたい人の求める金額に対して、資金を貸したい人が提供する金額が多ければ、お金が余っている状態となり、金利は下がります。

 

逆に、お金を借りたい人の求める金額に対して、資金を貸したい人が提供する金額が少なければ、お金が足りない状態となり、金利は上がります。

 

[図表1]金利が変化する仕組み

 

(2)景気と金利は連動する

景気の拡大局面では、商品やサービスの生産を増やそうとして、企業が設備投資のためにお金を借りようとすることから、金利は上昇します。

 

逆に、景気の後退局面では、企業は設備投資しようとせず、お金を借りようとしないことから、金利は低下します。

 

[図表2]景気と金利の変動のイメージ

 

(3)物価と金利…インフレとデフレ

物価水準が上がるとお金の価値が下がります。物価水準が継続的に上がっていくことをインフレーション(インフレ)といいます。モノの値段が上がると相対的にお金の価値が下がることになり、日常生活が苦しくなってしまいます。

 

インフレが発生する気配がすると、人々は、モノの値段が上がる前に早めに買い物しておこうと考えます。そのため、貯金を下ろしたり、お金を借りたりして必要なものを買おうとします。それゆえ、お金を借りようとする人が増え、金利は上昇します。銀行も預金の引き出しを防ぐため、金利を上げようとします。一方で、政府や日本銀行は、インフレが本格化する前に、金利を高めに誘導するなど、市場を引き締めようとします。

 

これに対して、物価下落が継続的に下がっていくことをデフレーション(デフレ)といいます。

 

デフレが発生しそうになると、人々は、モノの値段の値下がりを予想し、消費を控えます。そのため、お金を借りる人が減って、金利が下落します。一方で、政府や日本銀行は、デフレが本格化する前に、金利を低めに誘導するなど、金融緩和を行います。

 

(4)外国為替相場と金利

外国為替相場の変動は、物価水準の変動を通じて、金利に影響を与えます。

 

円ドル相場が円高になると、石油や輸入品が値下がりし、物価を下げてデフレをもたらす方向に作用することから、金利が下落します。逆に、円ドル相場が円安になると、輸入品が値上がりし、物価を上げてインフレをもたらす方向に作用することから、金利が上昇します。

 

[図表3]外国為替相場と金利の変動のイメージ

 

(5)内外金利差と金利

日本とアメリカの金利差も、国際的なお金の移動とそれに伴う円ドル相場の変動によって、金利に影響を及ぼします。

 

たとえば、米国の金利のほうが、日本の金利よりも高いとしましょう。その場合、アメリカの債券に投資したほうが、日本の債券に投資するよりも有利です。そこで、投資家は円をドルに換えてアメリカの債券を買おうとするでしょう。その結果、円ドル相場はドル高・円安に進みます。

 

逆に、米国の金利のほうが、日本の金利よりも低いとしましょう。その場合、日本の債券に投資したほうが、アメリカの債券に投資するよりも有利です。そこで、投資家はドルを円に換えて日本の債券を買おうとするでしょう。その結果、円ドル相場は円高・ドル安に進みます。

財政政策の影響

企業や個人ではなく、国や地方公共団体による経済活動のことを「財政」といい、資源配分、所得の再分配、経済の安定化という3つの機能があります。ここで、経済の安定化のために行われるのが、税制や公共投資を中心とする財政政策です。

 

つまり、国や地方自治体は、景気を刺激するために、減税を行ったり、補助金を支給したり、公共投資を行います。

金融政策の影響

日本銀行は、発券銀行、銀行の銀行、および政府の銀行という3つの機能を持っています。これらの機能を通じて金融政策を行います。最大の目的は物価の安定、つまり通貨の価値の安定です。

 

金融政策とは、通貨供給量などを調整することによって金利に影響を与える政策のことをいいます。

 

物価が下落し、景気が後退すると、日本銀行は、人々に消費させ、企業に投資させるために、金利を低めに誘導します。これが金融緩和です。

 

逆に、物価が上昇し、景気が加熱すると、日本銀行は、人々に消費を抑制させ、企業に投資を抑えさせるために、金利を高めに誘導します。これが金融引き締めです。

 

日本銀行が金融政策を実行する手段には、預金準備率操作、公開市場操作、基準貸付利率操作の3つがありますが、中心的な手段となるのが公開市場操作です。

 

預金準備率操作とは、民間の金融機関が日本銀行に預け入れることを義務付けられている準備預金の残高の変更させることで、通貨供給量を増減させることです。

 

公開市場操作とは、日本銀行が、短期金融市場において民間の金融機関との間で国債の売買を行うことで、通貨供給量を増減させることです。日本銀行が国債を買うことを買いオペレーションといいますが、これによって通貨供給量は増加するため、金利は低下します。これに対して、日本銀行が国債を売ることを売りオペレーションといいますが、これによって通貨供給量は減少するため、金利は上昇します。

 

[図表4]公開市場操作による金利の変化のイメージ

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

★景気、物価、外国為替が金利に及ぼす影響、政府の財政政策、日銀の金融政策についてはこちらをチェック!

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