(※写真はイメージです/PIXTA)

開戦から1年以上が経過するウクライナ侵攻ですが、プーチンは開戦時、ウクライナを「72時間以内に転覆できる」と信じていたと、元陸自の渡部氏はいいます。プーチン政権に起こっている「想定外の連続」と、現時点で予想される「プーチン政権の幕切れ」についてみていきましょう。※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

プーチン政権の終幕は…渡部氏が予想する「4つのシナリオ」

渡部 プーチンの将来を予測することは難しいのですが、いくつかの可能性を列挙することは可能だと思います。例えば、

 

①大統領職に長期間居座る、
②後継者を指名し自主的に勇退する、
③何者かによって強制的に排除され実権を失う、
④暗殺される。

 

おふたりはどう思いますか?

 

井上 ①のプーチンが長期間大統領職に居座る可能性は低いと思います。たしかにロシア国民の70%はプーチンを支持していますが、これは、強力な国内向けの情報戦の成果であり、ロシア軍が敗北している状況をいつまでも隠し通せることはできなくなります。すでに、モスクワやサンクトペテルブルクなど18ヶ所の地区区議からプーチンの辞任要求も出はじめています。

 

可能性が高いのは、②の都合の良い後継者を指名し自主的に勇退することだと思いますが、権力を手放した独裁者の末路を考えると、思うようにはいかないものです。

 

佐々木 私は①、②の中間的なことになるのではないかと考えています。四面楚歌の状態に追い込まれつつあるとみられますが、ロシア国内の強力な国民統制の状況から、③、④は考え難いと思います。

 

4月から6月にかけて、プーチン大統領の健康不安説を伝える報道が増えていましたが、その後、米CIAのバーンズ長官、英MI6のムーア長官がそれを否定しました。

 

とくにバーンズ長官は、私が在ロシア防衛駐在官として勤務していた時期と同時期に、在ロシア米国大使を務めていた人物であり、ロシア情勢には詳しい人物です。そのため、バーンズ長官の発言は信頼度が高いものと考えています。

 

ただし、プーチン大統領はロシアの平均寿命とほぼ同年齢にあるので、年相応の何らかの健康上の不安は抱えている可能性はあります。彼が年相応の健康上の不安を抱えつつも、政務の遂行に問題がなければ、このままの政体が継続すると見積もられます。しかし、そうでない場合に備え、水面下で影響力を残すカタチで院政的な政体を考えている可能性もあります。

 

以前から、プーチン大統領に異変があった場合、暫定的に実権はパトルシェフ国家安全保障会議書記に委任されるということが伝えられていました。憲法上では、大統領代行職はミハイル・ミシュスティン首相が就任することにはなりますが、実権をパトルシェフ書記にということのようです。

 

ロシアの複雑な国家指導体制を熟知し、インテリジェンス組織出身で同分野に大きな影響力を持つ同書記は、プーチン大統領と同じ手法で国家指導することは可能です。プーチン大統領が退いたあと、パトルシェフ書記がその任を引き継ぎ、プーチン大統領が院政を敷く可能性もあると考えられます。

 

ただし、パトルシェフ書記はプーチン大統領の信頼は非常に厚いものの、メドベージェフ前大統領とは違い、影響力を持ちすぎているマイナス面があるとも言われています。

 

力を持ちすぎている者に後継を譲ると将来的にプーチン大統領が権力の座から追い落とされるリスクもあるため、パトルシェフ書記自身が大統領に就く可能性は少ないのではないかとの見方もあります。

 

そこで、その折衷案として浮上しているのがパトルシェフ書記の長男であるドミトリー・パトルシェフ農相に大統領職を移譲し、プーチン・パトルシェフ(父)のタンデム体制で院政を行うといったことも持ち上がっているとのことです。これは前述の北野氏の指摘ですが、私もその可能性はあるのではないかと考えます。

 

渡部 いままでも多くの人が予測を外していますので、プーチンが何者かによって強制的に排除され実権を失う場合や、暗殺される場合も排除すべきではないと私は思います。

 

 

渡部 悦和

元陸上自衛隊陸将

 

井上 武

元陸上自衛隊陸将

 

佐々木 孝博

元海上自衛隊海将補

 

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※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

渡部 悦和 井上 武 佐々木 孝博

ワニ・プラス

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