(※写真はイメージです/PIXTA)

開戦から1年以上が経過するウクライナ侵攻ですが、プーチンは開戦時、ウクライナを「72時間以内に転覆できる」と信じていたと、元陸自の渡部氏はいいます。プーチン政権に起こっている「想定外の連続」と、現時点で予想される「プーチン政権の幕切れ」についてみていきましょう。※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

「保守強硬派」と「国民」のあいだで揺れるプーチン

佐々木 最近私が注目しているのは、プーチン政権を支えてきたパトルシェフ国家安全保障会議書記を中心とする保守強硬派がプーチン大統領に圧力をかけているという報道です。

 

ロシア研究者の北野幸伯氏によれば、保守強硬派は、「総動員令を出し、一般男性(徴兵期間が1年あるため、完全な素人ではない)を、100万人単位で、戦場に投入すべきだ。そうすれば、ロシア軍は勝てる」と主張しているそうです。

※ 北野幸伯「ロシア軍疲弊で『日和るプーチン』が支持基盤の保守愛国勢力に見限られる可能性」『現代ビジネス』2022年9月9日〈https://gendai.media/articles/-/99558〉(2022年9月16日アクセス)

 

他方、ロシア国民の70%が、ウクライナでの「特別軍事作戦」を支持しています。総動員令を出せば、この支持率は下がり、政権基盤そのものが危うくなります。プーチン大統領としては、保守強硬派の主張を受け入れることはできません。これに彼らは不満であり、プーチン大統領に圧力をかけているとのことです。

 

その後、この圧力に屈したのか、プーチン大統領は9月21日に部分的な動員令に署名しました。これを受けてショイグ国防相は軍務経験がある予備役から30万人を招集する旨を明言しました。

 

しかし、公表された動員令には人数に関する記述はなく、独立系メディアによれば100万人が招集されるとしています。

 

動員令発令後、招集事務所が襲撃を受けたり、国外脱出者が続出したり、招集を逃れるための様々な混乱が生起しています。当局の思惑どおりの数が招集できるのか、招集した兵が企図どおりに機能してくれるのかなど、不透明な点も多々あります。プーチン政権への反発というものも、この部分動員を機に噴出してきたようです。

 

井上 プーチンの特別軍事作戦を盲目的に信じている多数のロシア国民と戦争の実態を承知している保守強硬派とのあいだで、プーチンは身動きが取れなくなっています。ロシア軍はすでに戦意を喪失し、攻撃する装備や兵站(へいたん)も欠乏しています。プーチンは、自業自得とはいえ、厳しい状況にあります。

 

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※本連載は、渡部悦和氏、井上武氏、佐々木孝博氏の共著『プーチンの「超限戦」その全貌と失敗の本質』(ワニ・プラス)より一部を抜粋・再編集したものです。

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

プーチンの超限戦 その全貌と失敗の本質

渡部 悦和 井上 武 佐々木 孝博

ワニ・プラス

2022年6月、ワニブックス【PLUS】新書として発刊され好評を博した『ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛』の続編が、読み応えある単行本として登場。3人の自衛隊元幹部が、プーチンとロシアが行っている戦争を「超限戦」と捉え…

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