売上15億円の医療器具メーカー・71歳先代社長の「致命的ミス」→後継者の28歳娘に「借金」を負わせることになったワケ【税理士が解説】

売上15億円の医療器具メーカー・71歳先代社長の「致命的ミス」→後継者の28歳娘に「借金」を負わせることになったワケ【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

医療器具メーカーを経営していた71歳の先代。28歳の娘を後継者にすべく育成や社内周知を進め、事業承継の準備は万全のはずでした。しかし、先代のある致命的なミスにより娘は借金を負うはめに……。いったいなぜなのでしょうか。相続に詳しい税理士・公認会計士の小形剛央氏が事例とともに、事業承継時に起きがちなトラブルについて解説します。

融資、補助金…事業承継時の資金調達方法「4つ」

一般的に経営者の相続というのは、多額の相続税が発生しますから、納税資金を確保できるかは非常に深刻な問題です。このケースでは借金という選択をしましたが、現実には自社株の買い取りをあきらめ、事業を引き継がず廃業させることにしたケースもあります。

 

事業承継で利用可能な資金調達方法としては、主に次の4つがあります。

 

1.日本政策金融公庫の融資を受ける
2.信用保証協会から特別保証を受ける
3.民間金融機関からの融資を受ける
4.事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)を受ける

 

ほかにも、事業承継税制を利用することで、さまざまな要件を満たす必要はあれど、相続税や贈与税の支払いを猶予することも可能です。

 

事業承継で起こり得る「納税資金の不足」――この事例のように先代経営者が亡くなった場合には「相続税に対する支払資金」、先代経営者が存命中に承継が発生する場合には「贈与税に対する支払資金」――については、いずれも事前に対策を講じることで、払えないというリスクを最小限に抑えることができるのです。

 

相続時「自社株を分散させない」方法は?

なお、事業承継の相続トラブルはほかにもあります。たとえば、株式以外の相続財産が少なかったことから相続時に株が分散するケースです。

 

この場合、株主の不適切な発言が増えてしまい、後継者が精神的に追い詰められて事業を手放すという話も実際にありますが、株式を分散させないために、次のような方法を実施する必要があります。

 

・先代経営者が元気なうちに生前贈与する
・遺言書を作成し、株式を受け継ぐ後継者を明示する
・遺留分減殺請求への対応を講じる
・信託を活用して株式を集中管理する
・種類株式を発行する・持株会社を設立する

 

いずれも専門的な話になるのでここでは割愛しますが、相続で自社株を分散させない方法があることは、しっかり覚えておいていただければと思います。そして、そのために大切なのは、やっぱり準備なのです。

 

 

小形 剛央

税理士法人小形会計事務所 所長

株式会社サウンドパートナーズ 代表

税理士・公認会計士

 

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※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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