(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、需要が高まるなかでもなかなか供給が追いつかないのにはワケがあると、ねりま西クリニックの大城堅一院長はいいます。在宅医療が普及しない要因として考えられる「医師」と「患者」それぞれが抱える課題について、大城院長が解説します。

「専門外の診療」に自信をもてない医師も多い

医師の診療技術という点について、病院の医師に求められるものと在宅医が求められるものは異なります。

 

病院では、医師は専門の診療科の疾患のみを集中的に治療します。在宅では患者の全身状態やそれまでの経過、本人・家族の希望などから、総合的に判断して診療方針を決めていく「総合診療」が求められます。

 

今ほど医学が発達していなかった第二次世界大戦直後までは、心臓の病気も肺の病気も感染症も、すべて一人の医師が診ることが少なくありませんでした。

 

しかし戦後に医療技術が劇的に進歩し、臓器ごとに細分化されてきた現在の医療で、一人の医師がすべての診療科に対応するのは実質的に不可能です。

 

そのため自分の専門分野は自信をもって対応できるものの、専門外の分野は対応が難しいと感じてしまう医師は少なくありません。

 

在宅医の専門診療科で最も多いのは内科です。全体の7割近くが内科というデータもあります。次いで多いのが小児科であとは精神科や脳神経外科などの医師がわずかにいるくらいです。

 

高齢者には認知症やうつ病などの精神疾患や、変形性関節症、関節リウマチといった整形外科の疾患、嚥下機能の低下といった耳鼻科領域の疾患、白内障、緑内障、加齢黄斑変性といった眼科領域の疾患も少なくありません。

 

これらの疾患があると日常生活にも大きな支障をきたすようになり、QOLにも影響しますが、医師が専門外であることで十分な対応ができていないケースは、おそらく少なくないはずです。

寝たきり高齢者に「何をすればいいか分からない」医師

在宅医でも経験の浅い医師は、そもそも在宅で療養する高齢患者にどう対応していいか分からない、という人もいます。

 

私の感覚ですが、医師の9割は自分の専門知識や医療技術を活かし病気を治すことが患者を幸福にすることだと考えています。

 

外科医であれば肺がんの手術をして病巣を切除すること=患者を幸福にすることです。それ以外のことにはあまり興味がないし、治療するべき病気がないなら「医師としてすることは何もない」と思ってしまう人もいます。結果的に定期訪問診療で患者の健康状態をチェックするだけで、あとは積極的に患者に関わろうとしないケースもあります。

 

しかし在宅では、大きな病気はないけれど加齢で衰弱して寝たきりになったような高齢者が大勢います。そういう高齢者に対し、どうすればその人が家で気持ちよく前向きに過ごせるか、その人にとってベストな医療・ケアとは何かなど、明確な答えのない問いを考えながら寄り添うことも在宅医の重要な役割です。

 

患者に医療行為をいっさい受けたくないという意思があるときや、痛みや不調がまったくないときであれば、経過観察だけでもよいと思います。

 

しかし白内障が進んで目が見えにくいとか、膝の痛みがあってトイレに行くのも苦労しているなど、何らかの不調や痛み、生活上の困難を抱えているのであれば、それを取り除く方法を考え必要な医療サービスを提供するのが在宅医の仕事です。

 

病院の勤務医をしていた若い医師に、そのような在宅医に求められる資質や姿勢について説明し、理解してもらうのも思った以上に難しいと感じています。

 

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※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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