ひとり暮らし80代女性「それでも、自宅がいいんです」…転倒して死にかけても「在宅医療」を選ぶワケ【医師が解説】

ひとり暮らし80代女性「それでも、自宅がいいんです」…転倒して死にかけても「在宅医療」を選ぶワケ【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、より自然な死を迎えたいという理由などから需要が高まっている「在宅医療」ですが、具体的にはどのような場合に導入するべきなのでしょうか。また、ひとり暮らしでも在宅医療を導入することは可能なのでしょうか。今回は、実際に在宅医療を導入したひとり暮らしの80代女性の事例から、ねりま西クリニックの大城堅一院長が詳しく解説します。

在宅医療で診療している患者・利用者のプロフィール

頸椎症などで歩行が困難になった一人暮らしの女性

糖尿病の合併症予防のために眼科専門医が訪問し、通院負担が減少

 

基本情報

・年齢性別:80代・女性Aさん

・住まい:戸建住宅に一人暮らし

・家族:子どもはなく、弟が遠方に居住

・既往歴:白内障、高血圧、糖尿病、脂質異常症、逆流性食道炎、頸椎症、変形性膝関節症、左大腿骨頸部骨折手術後

・要介護度:要介護3(生活全般で24時間介護を必要とする状態)

・在宅医療期間:2019年12月~現在

 

在宅医療導入までの経緯

Aさんは2019年に外来で受診しました。当時から高血圧や糖尿病、脂質異常症がありましたが、薬物療法をするほどではなく、経過観察をしていました。

 

2019年の秋に、頸椎症による神経障害と思われる歩行困難(屋内伝い歩き)、また同時期に認知機能低下による幻聴や尿失禁などが急に現れ自宅で倒れているところを介護スタッフが発見しました。

 

遠方に住んでいる70代の弟さんとAさんのケアマネジャーが話し合い、生活の困難が大きくなっているため、私のクリニックでの支援が可能かと相談がありました。

 

在宅医療の内容

私たちがAさん宅を訪れて診察したところ、Aさんは左大腿骨を骨折していました。転んでから何日も一人で動けずにいたようで、脱水や低栄養で全身状態もかなり衰弱が進んでいました。

 

そこで、まずは近隣の病院に入院して手術を受け、在宅で生活する体力・筋力を回復させるため、しっかりリハビリをしてもらえるようにしました。その後1ヵ月ほどの入院・リハビリ期間を経て、施設入所も検討しましたが、本人の希望もありAさんは自宅で在宅医療をすることになりました。

 

病院で集中的にリハビリをしたおかげで、着替えやトイレ移動などの身の回りのことはある程度は自分でできるようになり、訪問介護で生活をサポートしながら、月2回内科の主治医が訪問して見守っていくことにしました。

 

また、白内障のために視界が悪いと転倒の原因になるうえ、糖尿病のあるAさんは合併症である網膜症発症のリスクもあるため、3ヵ月に1回、主治医の定期訪問と併せて眼科専門医が訪問する計画を追加することにしました。眼科疾患を予防しなるべく今の生活を維持できるようにすることが目的です。

 

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※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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