2021年から2022年にかけて、多くの産業が半導体不足によって混乱しました。とりわけ自動車産業は、減産を余儀なくされて納車が大幅に遅れるなど、需要が戻るなかで深刻な供給不足に陥りました。足元はやや落ち着きを取り戻しつつありますが、半導体市場は今後どうなっていくのか。現況と見通しについて、アライアンス・バーンスタイン株式会社のシニア・インベストメント・ストラテジスト、穂谷 栄一郎氏が解説します。

半導体は世界中の「国家戦略物資」になっている

――市場の拡大が加速する一方でプレーヤーが限られていると、各国で取合いにならないのでしょうか?

 

穂谷「はい。いまやさまざまな国において『国家戦略の一部』として、半導体が国家戦略物資へと変貌を遂げようとしています。

 

過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。2022年4月現在。 出所:経済産業省、AB
[図表6]半導体の地政学リスク 過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。2022年4月現在。
出所:経済産業省、AB

 

[図表6]の左図のように、20世紀においては日米が独占しており、半導体は電子部品の一部としての位置づけでした。ところが、経済安全保障やアフターコロナのデジタル化促進、エネルギー・環境制約、セキュリティ強化など、こういった構造的な変化によって半導体が変貌を遂げようとしています。

 

――このような構造変化で大きく変わろうとしているわけですね。

 

穂谷「こうした時代、半導体は台湾や韓国、そして中国をも巻き込んだ戦略物資となり、デジタル化やグリーン化に欠かせない存在となっています。

 

問題は先述したように、こうした時代の要請に応じた半導体を製造できる企業が世界的にも数限られているということです」

日米、中国、韓国…世界が本気で打ち出す半導体政策

穂谷「各国がどれだけ力を入れているかみていきましょう。[図表7]は、経済安全保障の観点から各主要国が展開する、重要な生産基盤を囲い込む新次元の産業政策です。

 

過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。2022年4月現在。 出所:経済産業省、AB
[図表7]各国の産業政策 過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。予想は今後変更される可能性があります。2022年4月現在。
出所:経済産業省、AB

 

米国では1件あたり最大3,000億円の補助金や、多国間半導体セキュリティ基金の設置等を含む国防授権法(NDAA2021)が可決されています。

 

さらにバイデン政権では、約6兆円の半導体産業投資を含む半導体法(CHIPS法案)が2022年8月に可決されました」

 

“日の丸半導体”復権なるか

――米国以外にも、さまざまな国が各国で政策を打ち出していますね。

 

穂谷「我が国日本でも、“日の丸半導体”の復権に向けた取り組みを打ち出しております」

 

――日本政府もiPhoneの半導体を製造しているTSMC(台湾セミコンダクター)の工場を熊本に誘致するというニュースを見ましたが、それもこの一連の流れなのですね。

 

穂谷「そうですね。こうした民間だけではなく、国家戦略としての動きに注目することが大切です」

 

――半導体は単に「今後も成長する投資先」ということだけではなく、国家戦略の要となる「国家戦略物資」として多くの国と国とのあいだで取り合いになる可能性があるということですね。

 

今後の社会インフラの変化などによって半導体業界に将来性があること、そして国家戦略として動いていることがわかりました。今後のキーとなるプレーヤーなどにも注目していきたいものです。

 

<<<【AB’s Market Tips】 #3 脇役から主役へ。半導体市場の今後>>>

 

 

穂谷 栄一郎

アライアンス・バーンスタイン株式会社

運用戦略部/責任投資推進室 シニア・インベストメント・ストラテジスト

 

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※本稿は、「【AB’s Market Tips】 #3 脇役から主役へ。半導体市場の今後」を参考に、再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
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