(※写真はイメージです/PIXTA)

がんは日本人の2人に1人が経験する病気です。検査や治療法の進歩により、早期に発見できれば治るがんも多くなっています。早期発見が何より重要です。産業医の富田崇由氏がコストゼロからできる健康経営について解説します。

全社員にしっかりした定期健診を行う

■若い世代にも40代以上と同じ定期健診を行うのが理想

 

現在の法律の規定では40歳以下の社員の定期健診は20歳、25歳、30歳、35歳という節目の年齢のときだけ、40歳以上と同様の項目の健診を受けることになっています。

 

20~30代でそれ以外の年齢のときは、身長や腹囲、胸部Ⅹ線検査、血液検査(血中脂質、血糖、肝機能)、心電図検査を省略することができます(医師が必要でないと認めているとき)。若い世代は異常や病気の兆候が少ないと考えられてきたためで、体重と視力・聴力、血圧、尿検査だけという簡易的な定期健診となっています。

 

検査項目が少ないほうが会社の健診費用負担も減りますから、小さな会社では最低限の法定健診になっていることが少なくありません。

 

ただ、近年は20~30代からの脂質異常や高血糖、メタボなどが増加しています。身長や腹囲、血中脂質検査、血糖検査などを行わないとこうした異常の兆候を早期につかむことはできません。また20~30代から血圧や血糖、血中脂質に気をつけ、食事や運動習慣について正しい知識をもっておけば40代以降の生活習慣病の発症を効果的に減らすことができます。

 

健診の費用の負担が難しいときは、若い世代への健診実施に補助金を出している健康保険組合もあります。利用できるかどうかは職場で加入する健康保険組合にもよりますが、社員に長く健康で働いてほしいと考えるのであれば年齢を問わず、社員全員にしっかりとした定期健診を行っていくのが理想です。

 

■業務内容に合わせて活用したい特殊健診、目的別健診

 

職場の毎年の定期健診だけですべての病気の兆候がわかるわけではありません。業務によって起こりやすい病気の予防のためには特殊健康診断が定められていますが、指定された業務以外でも、必要に応じて特殊健診を受けたほうがいい場合もあります。

 

一般のオフィスワーカーが中心の職場でも、社員に体調不良や健康不安があるときは、次のような特殊健康診断、目的別の健康診断を受けることができます。

 

それぞれ、費用は一人当たり数千~5000円程度掛かりますが、健診の種類によっては国や健康保険組合の補助金が使えるものや、自治体の援助が受けられるものもあります。

 

・腰痛健診

 

腰痛は配送業など重い物を持つ、腰をかがめる作業が多い業務に多発するイメージがあると思いますが、立ちっぱなしや座りっぱなしなど同じ姿勢を長時間続ける仕事にも意外に多い健康障害です。厚生労働省では次の5つの業務で、腰痛健診を定期的に行うことを推奨しています。①重量物取扱い業務、②立ち作業、③座り作業、④福祉・医療分野などにおける介護・看護作業、⑤車両運転などの作業。

 

腰痛健診の定期健診では、既往歴や自覚症状の有無などを確認し、医師が必要と判断した人には、さらに姿勢異常や脊柱の変形の有無、腰背筋の緊張および圧痛の有無、知覚検査、腰部のⅩ線検査、運動機能テストなどを行います。

 

・情報機器作業健診

 

パソコンなどのディスプレイを見ることで生じる視力の異常や肩こり、慢性疲労などの不調について調べる健診です。目安としては、1日に2時間以上ディスプレイに向かって作業する人は、定期的な情報機器作業健診が推奨されています。

 

定期健診では業務歴・既往歴の確認、自覚症状の有無、眼科学的検査(5m視力検査、50㎝視力検査など)、上肢の運動機能や圧痛点などの検査が行われます。

 

・歯周病検診

 

歯の健康だけでなく全身の健康のためにも歯周病予防は大切です。糖尿病があると歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいことがわかっています。

 

また歯周病があると動脈硬化や心疾患のリスクが高まることも知られています。血糖や血中脂質など生活習慣病につながる異常が多い職場では、定期的に歯周病検診を受けるようにすることが推奨されます。歯周病検診では歯科医師や歯科衛生士が歯と歯茎の状態を調べて歯周病のリスクを判定するほか、正しい歯の磨き方などの保健指導を行います。

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※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

働く人の健康問題に注目が集まっていますが、組織として健康増進に取り組んでいる企業は多くありません。 「健康経営」や「従業員の健康づくり」は必ずしも産業医がいなければできないものではなく、小さな会社でもコストを掛…

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