(※写真はイメージです/PIXTA)

少額からの投資が可能な不動産クラウドファンディングには、主に「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類あります。両方にメリット・デメリットがあるため、それぞれの概要と違いを理解しておきましょう。本記事では、不動産クラウドファンディングを始めようと考えている方に向けて、どちらの投資方法を選択するか判断できるよう、それぞれの特徴を解説します。

不動産クラウドファンディングの契約類型とその特徴とは?

「匿名組合型」と「任意組合型」には、得られる権利や責任の範囲などについて違いがあります。不動産クラウドファンディングの概要とあわせて確認していきましょう。

 

■不動産クラウドファンディングの概要

不動産クラウドファンディングとは、インターネットを通じて事業者が投資家から資金を募り、購入した不動産の賃料収入や売却益を分配する投資方法です。

 

物件の運用を事業者に任せられるため、手間をかけることなく不動産投資を始められます。投資家にとっては、本来まとまった資金が必要な不動産投資をローンを組むことなく一口1万円から始められることがメリットです(案件ごとに最低投資額が定められています)。

 

不動産クラウドファンディングには、主に以下の2つの契約類型があります。

 

匿名組合型

任意組合型

賃貸借型

 

不動産クラウドファンディングは、一般的に「匿名組合型」と「任意組合型」の2つを指します。なお詳細は後述しますが、出資金額を比較すると不動産クラウドファンディングは匿名組合契約によって実施されることが多いです。

 

【匿名組合型】

匿名組合型の不動産クラウドファンディングは、投資金額は多くの案件で「一口1万円」と少額から始められるのが特徴です(案件ごとに最低投資額が定められています)。

 

匿名組合型では、出資する組合員は物件を所有しません。出資金の運用は事業者が行い、組合員は不動産事業の収益を分配してもらう権利が得られます。不動産投資に関する権限を投資家は持たないため、事業者は独立性を持った運用が可能です。

 

また、匿名組合型の契約は各組合員と事業者の二者間で行われるため、匿名組合型では組合員ごとのつながりはありません。

 

【任意組合型】

任意組合型の不動産クラウドファンディングは、複数の投資家が共同で事業を行う契約類型です。投資金額は、ほとんどの案件で「一口10万円以上」と匿名組合型より高額になります(案件ごとに最低投資額が定められています)。

 

投資対象となる「物件の所有」や「損益の帰属」については、出資する組合員と事業者の両方に権利があります。そのため任意組合型の出資者は、税務上は「不動産を所有しているのと同じ扱い」になるので、匿名組合型に比べると一般的な不動産投資に近いです。

「匿名組合型」と「任意組合型」の違いは?

不動産クラウドファンディングの「匿名組合型」と「任意組合型」には、それぞれメリットとデメリットがあります。ご自身の考え方と照らし合わせて、投資を始める際の参考にしてみてください。

 

①匿名組合型のメリット・デメリット

匿名組合型のメリットは、低リスクで少額から不動産投資を始められることです。一口1万円から投資が可能なため、ローンを組む必要もありません。不動産の運用は事業者が行ってくれるため、手間がかからず深い知識がなくても投資できます。

 

また、仮に投資先の不動産運用が失敗して損害が発生しても、出資した金額以上の責任を負わない点もメリットと言えます。

 

一方で、匿名組合型では投資家は不動産の所有権が持てないため、不動産の運用方針について意見できません。さらに、対象不動産の運用期間が終了するまで投資家は換金できないルールになっています。この「流動性の低さ」はデメリットと言えるでしょう。

 

②任意組合型のメリット・デメリット

任意組合型の不動産クラウドファンディングは、不動産に売却益が発生したときに投資した金額に応じてリターンが得られる点がメリットです。さらに、匿名組合型と比べて一口10万円以上と投資金額が大きくなるため、分配金も多くなります(案件ごとに最低投資額が定められています)。

 

また、税法上は不動産を所有している扱いになるので、資産家であれば相続税の節税効果が期待できます。

 

一方で、任意組合型は不動産を複数の投資家と共有するため、組合員同士の協力が必要です。つまり、自分以外の投資家の意向が運営に反映されるため、その点をデメリットと感じる人もいるでしょう。

 

そして物件の一部を所有しているので、運用に失敗して損失が出た場合は投資家も返済責任を負います。責任の範囲はご自身の投資額以上に及ぶため、負債を抱える可能性があることは理解しておきましょう。

不動産クラウドファンディングは匿名組合型が多い

不動産クラウドファンディングは、匿名組合契約によって実施されることが最も多いです。国土交通省の「不動産証券化の実態調査」によると、2020年度における任意組合型の出資募集額が221億円に対して匿名組合型は642億円です。

 

匿名組合型が多い理由は「少額から投資が可能」「物件の運用は事業者が行う」といった要因により、投資を始めるハードルが低いからでしょう。

 

一方で任意組合型は「物件の取引に関与する」「損害発生時の責任を負う」など、高い当事者意識が求められる投資手法なので、匿名組合型よりは投資額が小さいです。しかし、2015年度の任意組合型の出資募集額が121億円であったことを考えると、金額自体は増加傾向にあることがわかります。

まとめ

一口に不動産クラウドファンディングと言っても、「匿名組合型」と「任意組合型」のどちらを選択するかによって、メリットとデメリットが異なります。

 

任意組合型は運用に失敗すれば負債を抱える可能性があるため、よりリスクが小さいのは匿名組合型です。しかし、任意組合型もリスクをしっかり認識して投資をすれば、許容範囲を超える損失は避けられるでしょう。

 

ご自身にとってどちらの契約方法が向いているのかを見極めた上で、不動産クラウドファンディングを始めることをおすすめします。

 

 

執筆:西山 雄介

Webライター・ディレクター

大学卒業後、マンションディベロッパーに勤務し営業職を担当。現在は企業でのマネジメント経験を活かして、フリーランスディレクターとして活動中。豊富な社会人経験が強みであり、特にコンプライアンスを重視する企業メディアで高い評価を得ている。得意分野は不動産・法律・シニア向け記事など。

宅地建物取引士・マンション管理士・日商簿記2級などの資格保有。

 

 

監修:中村 昌弘

Webライター・編集者

株式会社なかむら編集室 代表取締役

1985年生まれ埼玉県出身。立教大学を卒業後、マンションディベロッパーへ入社。その後は人事コンサル系の会社へ転職し、2016年2月に独立。独立と同時にWebライターをはじめる。SEOライティング × セールスライティング × 書籍編集 × サロン(Webライターラボ)運営など、幅広く活動中。

 

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※本連載は、J Sync株式会社が運営する『OWNERS.COM』(https://cf-owners.com/)のコラムを転載したものです。

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