(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

 

実質GDP成長率は前期比年率▲0.8%に第1次速報値▲1.2%から上方修正

 

実質・前期比で政府消費、輸出、民間在庫変動が上方修正、個人消費などが下方修正

 

10~12月期の個人消費は、10月分のデータを見る限り、前期比しっかりした増加に

 

 

 

●22年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比▲0.2%、前期比年率▲0.8%となり、第1次速報値の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%から上方修正となった。法人企業統計を受けて、民間在庫変動の前期比寄与度が上方修正された。また、政府消費、輸出の実質・前期比が上方修正された。一方、個人消費、住宅投資、公共投資の実質・前期比が下方修正された。

 

●実質GDPに交易利得と「海外からの所得の純受取」を加えた、実質GNI(国民総所得)の22年7~9月期は、第2次速報値で前期比▲0.6%となり、第1次速報値の前期比▲0.7%から上方修正となった。

 

●22年7~9月期名目GDPの季節調整値は554.13兆円で直近のボトムだった20年4~6月期の512.65兆円と比較すると41.48兆円高い水準になった。しかし、まだコロナ禍前のピークだった19年7~9月期の561.57兆円からは7.45兆円低い水準である。

 

●実質GDPの季節調整値は、過去からの数字が修正されたこともあって、22年7~9月期は第一次速報値の543.62兆円から546.82兆円に上方修正された。コロナ禍でのピークだった、新型コロナの感染者が初めて出た四半期の20年1~3月期の544.55兆円を2.26兆円上回った。実質値のコロナ禍前のピークは第一次速報値の19年4~6月期から再び19年7~9月期に戻った。22年7~9月期は3年前の19年7~9月期の水準557.33兆円よりは10.51兆円低い。

 

●7~9月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比▲0.7%、前期比年率▲2.9%となり、第1次速報値の前期比▲0.5%、前期比年率▲2.0%から、実質値と異なり下方修正となった。

 

●7~9月期の実質個人消費・前期比は、第1次速報値の+0.3%の増加から前期比+0.1%の増加へと0.2ポイント下方修正となった。実質家計最終消費支出の前期比も第1次速報値の+0.3%の増加から前期比+0.1%の増加へと下方修正となった。

 

●実質国内家計最終消費支出の前期比は、第1次速報値の+0.2%の増加から前期比+0.1%の増加へと0.1ポイント下方修正となった。その内訳をみると、耐久財が第1次速報値の実質前期比▲3.5%から第2次速報値で▲0.2%へと上方修正された。半耐久財の前期比は+4.0%で第1次速報値の+4.7%から下方修正された。非耐久財は前期比▲0.4%で、第1次速報値の+0.1%の増加から減少に下方修正された。サービスの前期比は▲0.1%で第1次速報値の+0.3%から下方修正となった。

 

●7~9月期の実質住宅投資は、前期比▲0.5%で第1次速報値の▲0.4%から下方修正となった。

 

●7~9月期の実質設備投資・前期比は+1.5%で第1次速報値の+1.5%と変わらなかった。設備投資は、第1次速報値段階で需要側推計値(仮置き値)+14.2%だった需要サイドの名目原系列前期比が法人企業統計等を踏まえて計算すると+13.9%と0.3ポイント縮小している。

 

●7~9月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.1%と第1次速報値の▲0.1%から0.2ポイント上方修正された。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度+0.1%で第1次速報値+0.1%と同じだった。流通品在庫は前期比寄与度0.0%で第1次速報値の0.0%と同じになった。法人企業統計を使って推計された原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の▲0.1%から+0.1%に上方修正された。同じく仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は第1次速報値では▲0.0%だったが第2次速報値では▲0.1%に下方修正なった。法人企業統計の原材料在庫のデータが加わったことが、民間在庫変動の実質・前期比寄与度が上方修正された主因である。

 

●7~9月期実質政府最終消費支出は前期比+0.1%で第1次速報値の0.0%から0.1ポイント上方修正となった。一方、7~9月期実質公共投資は第1次速報値の+1.2%から+0.9%に0.3ポイント下方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%で第1次速報値の▲0.0%と変わらなかった。公的需要全体の前期比寄与度0.0%で第1次速報値+0.1%から下方修正となった。

 

●7~9月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値の▲0.7%から▲0.6%に上方修正となった。実質輸出の前期比は+2.1%で第1次速報値の+1.9%から0.3ポイント上方修正となった。控除項目の実質輸入の前期比は+5.2%と第1次速報値の+5.2%と変わらなかった。

 

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.3%で第1次速報値の▲0.5%から0.2ポイントマイナス幅が縮小した。国内需要デフレーターの前年同期比は+3.2%で第1次速報値の+2.7%から0.5ポイント上方修正となった。

 

●7~9月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目中プラス寄与は3項目で、大きな方から製品在庫、流通在庫、仕掛品在庫の順になっている。原材料在庫だけがマイナス寄与であるということだった。第2次速報値ででは民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.5%に0.3ポイント上方修正された。4項目中3項目がプラス寄与で、大きな方から原材料在庫、流通在庫、製品在庫の順になっているということだった。流通在庫は第1次速報値プラス寄与から、第2次速報値では下方修正となった。第1次速報値のマイナス寄与から、第2次速報値では最大のプラス寄与項目に上方修正された原材料在庫が、民間在庫変動全体の上方修正の主因だ。

 

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、10~12月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲1兆7,422億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は+977億円である。

 

●「令和4年度の内閣府年央試算」の22年度実質GDP成長率・前年度比+2.0%を達成するには、22年度残り3四半期で各々前期比年率+4.2%(前期比+1.04%)の高い伸び率が必要である。21年度から22年度へのゲタは+0.4%に+0.2%から下方修正された。なお、22年度残り各四半期が前期比0.0%ずつだと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.2%に、前期比+0.5%ずつだと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.5%になる。

 

 

●2月14日に公表される10~12月期の実質GDP第1次速報値の最大の需要項目の個人消費の動向を10月分のデータから考察してみる。

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10月分対7~9月平均比は▲2.6%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.9%の増加だ。商業販売額指数・小売業の10月分対7~9月平均比は+1.6%の増加になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10月分対7~9月平均比は+2.4%の増加である。乗用車販売台数の10月分対7~9月平均比は+11.9%の増加である。強めのデータが多い感じがする。

 

●家計調査と同時に発表される総務省の総消費動向指数は、個人消費の97%に当たる家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって求めたものだ。実質総消費動向指数の10月分対7~9月平均比は+0.4%の増加ある。また、需要サイドのデータを使用しないで、財とサービスに関する各種の販売・供給統計から算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)をみると、10月分対7~9月平均比は+3.0%の増加である。総合的に考えると、10~12月期の個人消費は、10月分のデータを見る限り、全国旅行支援の影響などの効果もあって、前期比しっかりした増加になる可能性が大きいとみられる。

 

 

(2022年12月8日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年7~9月期実質GDP(第2次速報値)について』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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