(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

 

先行CI前月差+0.8と2ヵ月ぶりの上昇、一致CI前月差▲0.9と2ヵ月連続の下降

 

10月分一致CI3ヵ月移動平均は上昇、景気判断「改善」は9ヵ月連続で継続

 

 

 

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.8と2ヵ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差寄与度プラスになり、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の3系列が前月差寄与度マイナスになった。

 

●10月分の一致CIは前月差▲0.9と2ヵ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の3系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列が前月差寄与度マイナスである。

 

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分では「足踏みを示している」に下方修正され、10月分~22年2月分速報値では「足踏みを示している」の判断が継続となった。しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった2月分改定値では「改善」に戻るための、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラス」という条件を満たした。3月分・4月分・5月分・6月分・7月分・8月分・9月分でも「改善」の判断が継続となった。

 

●今回10月分でも「改善」の判断が継続となった。一致CIの前月差は下降になったが、3ヵ月後方移動平均の前月差は+0.04と小幅だが上昇した。このため、再び「足踏み」に下方修正になるための「3ヵ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさなかった。

 

●11月分でも「改善」の判断が継続となる可能性がある。一致CIの前月差が下降になるとしても、過去の数字が変わらなければ▲1.6ポイント以上の幅の下降にならなければ、3ヵ月後方移動平均の前月差のマイナス幅が1標準偏差分の▲1.00に届かない。

 

 

●10月分の先行DIは33.3%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、日経商品指数の3系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になった。

 

●10月分の一致DIは37.5%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列がマイナス符号になった。

 

●12月22日発表予定の10月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は12月14日である。また在庫率関連データが12月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は微妙だが+0.01程度の若干のプラスになると予測する。一方、先行DIでの、実質機械受注(製造業)の符号はプラス符号で加わる可能性が大きいと見た。その場合、残りの符号が不変とすれば、先行DIは速報値の33.3%から40.0%に上方修正されると予測する。

 

●10月分景気動向指数・改訂値で、一致CIに労働投入量指数が加わる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比▲0.1%の減少であることが判明している。一方、毎月勤労統計・速報値の総実労働時間指数(調査産業計)は前月比▲1.9%の減少である。したがって労働投入量指数は前月比減少であろう。労働投入量指数の前月差寄与度は現状では▲0.27程度になろう。なお、10月分毎月勤労統計・確報値は12月21日に発表されるため、9月の一致CI改定値では確報値が使われよう。また、生産指数関連データは12月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データは12月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。10月分の一致DIは速報値で37.5%だったが、新たに加わる労働投入量指数の符号はマイナス符号になるとみられるため、他の採用系列の符号を不変とすると、改定値は33.3%程度に下方修正されると予測される。

 

●11月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差プラス、消費者態度指数、東証株価指数の2系列が前月差マイナスである。

 

●また、11月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、日経商品指数、東証株価指数の2系列がプラス符号に、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。11月分速報値段階の先行DIは22.2%以上77.8%以下になることが確定している。

 

(2022年12月7日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年10月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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