(※写真はイメージです/PIXTA)

現在の防衛費はGDPの約1%枠内だが、中国や北朝鮮の脅威を勘案すると、AIのみならず防衛省の事業のほとんどの分野で予算不足が指摘されています。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

憲法改正か、専守防衛政策を見直す必要

■日本は現代戦のすべての分野で米中に比し出遅れている

 

米中ロは力を信奉する国々だ。この三国と比較すると、日本の現代戦への取り組みは遅れている。とくに米中に対しては、すべての分野(情報戦、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦、AIの軍事利用)において、出遅れていると言わざるを得ない。

 

例えば、宇宙戦に関して、米国とロシアは米ソ冷戦の時代から70年の競争の歴史があるし、中国は近年急速に宇宙戦遂行能力を向上させ、一部の分野では米国を凌駕するまでになっている。日本の宇宙戦への取り組みついては、2020年度にやっと20人規模の「宇宙作戦隊」が5月18日に新編された。

 

しかし、日本の宇宙戦能力と米中ロの宇宙戦能力との差は大きい。

 

ここで強調したいのは、現代戦における日本の出遅れの原因は多岐にわたるが、最大の原因は憲法第九条にあるということだ。

 

第九条には戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認が規定されている。この第九条に基づき歴代政権が採用してきたきわめて抑制的な防衛政策(専守防衛、必要最小限の防衛力、軍事大国にはならない、非核三原則など)が現代戦においても悪影響を及ぼしている。

 

とくに専守防衛を口実に「攻撃的な戦い」がタブー視されている現実がある。例えば、宇宙戦における敵の衛星を攻撃する攻撃的宇宙戦、サイバー攻撃、電磁波攻撃は抑制を強いられている。

 

これらのドメインにおける戦いでは「先手必勝」の原則が成立する。なぜなら、攻撃する者は、いつどこを攻撃するかについて、主導権をもっているからだ。さらに、衛星が破壊される例が典型だが、攻撃による損害の早期回復が困難で、負けっぱなしになってしまう。だから「先手必勝」なのだ。

 

また、防御のみの戦いでは勝てないし、防御的な手段には膨大な費用とマンパワーが必要だ。なぜなら、受動的な立場にある防御側は、すべての攻撃に備えなければいけないからだ。

 

現代戦における日本の出遅れを取り戻し、中国の超限戦に対抗するためには、まず第九条を改正するか、少なくとも専守防衛などの過度に抑制的な政策を見直すべきだ。

 

なぜ憲法改正が必要か。憲法が国家の根幹をなすものだからである。その影響は多分野にわたるからだ。

 

■最先端技術開発のために人材および予算を確保せよ

 

現代戦においてAIの活用はさけられない。平時における軍隊のすべての業務は、AIにより効率化・省人化などの効果がある。例えば、軍隊には軍事組織の編成から総務、人事、情報、防衛、運用、通信、兵站(補給、整備、輸送)、衛生などの業務があるが、これら平時におけるすべての業務にAIを適用できる。

 

このようなメリットのあるAIを超限戦に対するゲーム・チェンジャーとして活用すべきだ。とくに自衛隊のAI活用は、米国や中国に比較して低調であり、特段の奮起を期待する。

 

予算なくしてまっとうなAIの軍事適用などできない。思い切った予算の増額が必要だ。現在の防衛費はGDPの約1%枠内だが、中国や北朝鮮の脅威を勘案すると、AIのみならず防衛省の事業のほとんどの分野で予算不足が指摘されている。

 

防衛費の目標については、自民党の安全保障調査会が2018年5月に提言したGDP2%(NATOの目標値でもある)が基準になる。岸田政権でもGDP2%を目指すと言っている。一挙にGDP2%は難しいので、防衛費を毎年7%増加していくといいのではないだろうか。

 

そうすると、6年後にはGDPの1.5%、11年後にはGDP約2%になる。ぜひ実現してもらいたいと思う。

 

渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監

 

 

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本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本はすでに戦時下にある

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渡部 悦和

ワニブックス

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