(写真はイメージです/PIXTA)

世界で「脱・中国」の動きが進み米中対立が克明となる現在……この流れは、歴史的な円安となっている「安いニッポン」にとって追い風であると、株式会社武者リサーチの代表である武者陵司氏はいいます。それはいったいなぜなのか、そして日本は具体的にどのような恩恵を享受できるのか、みていきます。

円安が引き起こす「Jカーブ効果」の好循環

米中対立による脱中国の動きは、日本の円安Jカーブ効果をより加速するものとなるだろう。

 

Jカーブ効果とは、円安により当初は、輸入単価が上昇して貿易赤字が増える(円安はマイナスに見える)が、やがて大きな数量増加の好循環をもたらす、というものである。

 

海外市場では価格競争力向上により日本企業のシェアが上昇し、輸出企業の国内生産が高まる。また国内市場においては割高な輸入品から割安な国産品へのシフトがおき、生産が高まる。

 

その結果、工場の稼働率が上昇し、やがて設備投資の増加へと結びつく。こうして円安は生産⇒投資増という好循環を引き起こすのである。

 

[図表1]Jカーブ効果

 

さらに今回の円安では、国内の生産数量が目立って増加する前から米中対立による国内回帰によって過去最高の設備投資ブームが起きている。

 

日銀短観2022年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比16.4%増だった。前回6月の14.1%増から上方修正し、1983年の調査開始以来、9月時点の水準として過去最高となる(製造業の設備投資は21.2%増は1988年以来の高水準)。

 

Jカーブ効果の好循環がいち早く立ち上がっているのである。

インバウンド・越境EC増加…外国人が内需の担い手に

今回Jカーブ効果が加速すると考えられる第2の要因は、インバウンドの増加である。

 

これまで円安の恩恵をまったく受けてこなかった内需産業が、外国人という新たな顧客を獲得したことで、円安がただちに需要数量の増加をもたらす好循環を見出している。

 

ダボス会議を主宰する世界経済フォーラム(WEF)の調査によると、日本の観光開発力は世界最高となった。訪日観光客はコロナ禍直前の2019年には3190万人まで増加し、オリンピックの2020年には4000万人が確実視されたが、コロナ禍下でほぼゼロまで落ちこんだ。

 

しかし、コロナ禍終息の暁には、信じられないくらい割安感を増した日本へ旅行需要が急増するだろう。中長期的には約15億人の中所得層を抱えるアジアを後背地に持つ日本は、世界最高の観光立国フランスの観光客数9000万人を大きく超えていくだろう。

 

[図表2]旅行観光開発力ランキング(2021年)

 

[図表3]訪日観光客数推移と見通し

 

今回Jカーブ効果が加速する第3の要因は、割安になった日本で商品を調達し海外へと転売する越境EC(Eコマース)である。

 

日経新聞は「経済産業省によると個人向け越境ECの販売額は2021年に中国向け2兆1382億円(前年比10%増)、米国向け1兆2224億円(同26%増)と米中向けの輸出額の約1割に達している。越境EC支援で国内最大手のBEENOSが持つ国内3千社以上のデータによれば、22年1~6月の販売額指数(円ベース)は2020年1月比で8割増えた」と報道している(10月16日)。

 

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※本記事は、武者リサーチが2022年10月31日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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