(※写真はイメージです/PIXTA)

企業が作成する財務諸表のなかで最も注目されるのが「損益計算書」です。企業が「儲かっているのか、損しているのか」が明確にわかるだけでなく、シンプルで初心者にも理解しやすいところもポイントです。経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

「売上高」から「費用」を引いて「利益」を計算!

企業が作成する多くの財務諸表のなかで、最も注目されるのが損益計算書です。なんといっても「企業が儲かっているのか、損しているのか」を明確に示しているものだからです。

 

重要な財務諸表は「バランスシート(貸借対照表)」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つだとされていますが、バランスシートやキャッシュフロー計算書が初心者には理解しにくいのに対し、損益計算書は初心者でもすぐに理解できる、という点も、これが広く注目されている理由なのかもしれません。

 

バランスシートやキャッシュフロー計算書については、初心者向けの解説をしないと理解してもらえないでしょうが、損益計算書は、見ればだれでも理解できます。もっとも、それでもさまざまな決まりを理解しておく必要はあるので、解説していきましょう。

 

損益計算書は、英語で「Profit and loss statement」なので、略して「P/L」と記される場合もあります。要するに、会社の利益の額を計算した書類です。費用にはいろいろなものがあるので、どこまでの費用を差し引くかによって「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」といったさまざまな利益額が出てくるわけです。

売上高から売上原価を差し引いて求める「売上総利益」

「売上総利益(粗利)」=「売上高」−「売上原価」

 

最初の利益は、売上高から売上原価を差し引いて求める「売上総利益」です。「粗利」とも呼ばれます。

 

「売上高」というのは、売買契約が成立したものの合計です。契約が成立していれば、代金を受け取れていなくても、売上です。「代金は翌月に支払います」という契約であれば、「売買は終わっている。ただ、代金相当額を買い手に貸してある」という扱いになるわけです。

 

「売上原価」は、売上に対応する商品の仕入れ値等です。去年仕入れた商品を今年売った場合は、去年の仕入れ金額が売上原価となりますし、今年仕入れても売るのが来年になれば、来年の売上原価となります。

 

たとえば、大量に仕入れたものが大量に売れ残っても、今年の売上数量の分の仕入れ金額だけが売上原価となるので、今年の決算が赤字になるとは限りません。もっとも、売れ残った商品が来年も売れ残って「安値で叩き売り」することになったりすれば、来年の決算が赤字になるかもしれませんね。

 

なお、製造業の場合には、工場で生じた製造費用は売上原価に含まれます。しかし、この場合でも、本社で生じた諸費用は売上原価には含まれません。

 

余談ですが、バランスシートでは、代金後払いの売上の場合には商品が減って貸付金(売掛金と呼びます)が増えることになります。反対に代金後払いで仕入れた場合には、在庫が増えて借金(買掛金と呼びます)が増えることになります。

本社部門の経費を差し引いた利益が「営業利益」

「営業利益」=「売上総利益」− 「販売費および一般管理費」

 

売上原価に含まれる仕入れコストや製造コストは、「製品1個あたり何円」という対応をしていますが、企業の費用にはそうでないものも多数あります。本社部門の経費は売上原価に含まれないと考えて良いでしょう。

 

本社部門の経費は、販売費および一般管理費と呼ばれます。これを売上総利益から差し引いたものは、営業利益と呼ばれます。

 

ただし、経理部門で発生した金利の受払等は販売費および一般管理費に含まれないので、この段階では考慮されないことになります。営業活動の費用ではない、という扱いになるわけですね。

 

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