相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。本連載では、大増税時代に大損しない「不動産の売却」まで見据えた相続税対策について説明します。

相続税対策で購入した不動産は相続が終われば売却!?

連載「大増税時代に大損しない『不動産を活用した相続税対策』」では、相続税対策としてもっとも効果的な、賃貸不動産の所有や法人を使っての相続税対策を具体的に説明しました。

 

本連載では、その相続税対策の実施にあたって、より納得し安心していただくために、筆者が実行している「パッケージ」の中の出口戦略についてご説明します。

 

まず、私の発想として、相続税対策で購入した賃貸不動産なのだから、相続が終了したら「売却」すればいい、という考えが根底にあります。「売却」するところまで見据えるということが出口戦略ということです。

 

さて、この「売却」という話が出てきますと、これは相続発生後に考える話であり、被相続人の立場からすれば、さほど重要視するべきことではない、と考えられる方もいるかと思います。

 

しかし、その賃貸不動産を引き継ぐのは相続人です。相続した賃貸不動産をどうしていくべきか、どういう選択肢があるのか、被相続人は最低限考えておかなければなりませんし、相続人にもその内容を伝えておかなければなりません。

 

相続人は、いつかは「売却」や「経営を継続」などの決断をするときが来るわけですが、もし、被相続人が売却のことを考えて賃貸不動産を購入していなければ、相続発生後に賃貸不動産を「売却」する選択肢がなく、「経営を継続」するしか選べないことも考えられるのです。

 

また、どんな優良な賃貸不動産だとしても、しばらくは借入金を抱えることになります。不動産を購入するとなれば、30年ローンや35年ローンを組むことになりますが、たとえば、親が80歳で不動産を購入していれば、50歳の子がいたとすると、その人が当然連帯保証人になります。

 

親が亡くなったあとも不動産を所有し続けるとなると、子は80歳、85歳まで借入金の返済をすることになります。もし、子が早くに亡くなれば、次にその借入金は孫へいきます。そうなると、3代続いて借入金の返済をしていく状態です。

 

不動産賃貸業がうまく続いている限り、支払いに困ることはありません。しかし相続税対策のためだけに購入した不動産の借入金を孫が返していくという構図は、孫にとって歓迎できるものではありません。それは、孫の意志にかかわらず借入金の返済を背負わせてしまっているからです。

相続人が「売却」という選択肢を選べるようにする

つまり、相続発生後の相続人に負担がいかないようにするためにも、「売却」という選択肢を選べるように、被相続人が考慮しておくべきだと思うのです。相続を無事終わらせたあと、ある程度の現金を残せた段階で物件を売却したほうがその後の相続人に対する影響が少なくてなくて済むはずです。

 

相続人としても、借入金が片付き、一度身ぎれいになったほうが、心理的にスッキリするのではないでしょうか。だからこそ私は「売却」を勧めます。そして、そこまでが1つの「パッケージ」だと捉えているのです。

 

不動産賃貸業を続けたいという相続人がいらっしゃればそれはそれで構わないと思います。そのまま続けてもいいと思いますが、相続税対策で購入した建物を所有し続けるより、その物件を売却し、自分の意志で新たな物件を選び直したほうが、もっと自分なりの経営ができるのではないでしょうか。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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