住宅のコンクリート内部を高度に診断する方法

前回は、住宅の安全性に関わる「ホールダウン金物」の施工について説明しました。今回は、住宅のコンクリート内部を高度に診断する方法について見ていきます。

小さなひびでも幅と深さによっては深刻なダメージが…

ポイント④ 基礎部分のひびは要注意

木造住宅の場合でも、家の基礎はコンクリートでできています。コンクリートの強度不足は家の安全性を著しく低下させるので、基礎に不具合がある場合は深刻です。

 

皆さんは、「しゃぶコン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。コンクリートは、セメント粉と水、砂を混ぜて作りますが、コストを下げるために水を規定の量よりも増やして、〝じゃぶじゃぶ〟の状態にすることを指した言葉です。これでは基礎の部分に本来必要な強度を実現できません。コンクリート自体の強度は見た目だけで判断することが困
難です。

 

「しゃぶコン」ではないものを使っているかどうかは、非破壊検査などの建物診断をしなければわかりません。見た目で判別できる不具合は、コンクリートのひびです。建売住宅の基礎部分は、まず金属の型枠を組み、その中にコンクリートを流し込んで造りますが、流し込んで固まった状態のままでは表面がギザギザで見た目が美しくありません。

 

そこで、モルタルを重ねて左官仕上げをします。文面ではイメージしにくいかもしれせんが、たとえばケーキの周囲に生クリームを塗って、なめらかに整える処理に近いものです。コンクリートは、固まる際の収縮や温度差による伸縮で、幅0.3ミリメートル以下のひび、通称ヘアクラック(髪の毛程度の細いひび)が入ることがありますが、これはそれほど大きな問題ではありません。

 

注意しなければならないのは、その幅と深さです。たとえば太さ0.5ミリメートルのシャープペンの芯をひび割れ部分に差し込んでみれば、ひび割れのおおよその幅がわかります。芯が差し込めない程度であれば、おおよそヘアクラックと判断して問題ないレベルだといえます。

 

一般的な住宅診断でもひびの幅は測定されますが、幅が0.3ミリメートル以下のヘアクラックだったとしても、どれだけ深いひびであるかはわかりません。より専門的な診断では、「超音波クラック深度測定器」を使ってコンクリートのひびの深さを計測します。

 

これによって、コンクリート内部のひび割れ、ひびの深さ、空隙、均質性などを測定することができます。こうした非破壊検査によって、施工状況の詳細を確認していきます。ひび割れの深さについては、残念ながら一般的な住宅診断などでも調べることができません。不安がある場合はクラック深度測定器を使って高度な建物診断ができる業者に依頼すべきでしょう。

 

万が一、ヘアクラックと呼べないレベルの大きなひび割れがある場合、クラックから基礎コンクリート内部に空気と水分が浸入して内部の鉄筋を腐食させたり、冬場では、クラック内部に浸入した水分が凍結して膨張することにより基礎コンクリートにダメージを及ぼす可能性があります。

見えない箇所は「非破壊検査」で徹底的に測定

内部の見えない部分は、購入者が自分で調べようとしても限界があります。かといって専門家が調べる際にも、購入前の物件を破壊して内部を調べるわけにはいきません。そこで、〝建物を破壊しない=非破壊検査〟によって精度の高い住宅診断を行います。そのひとつが、コンクリートの強度を検査する「シュミットハンマー」を使った診断です。

 

これは、器具の先端を少し出した状態でコンクリートの基礎にグッと押し付けて、戻ってくるときの衝撃の反発力で、コンクリートの強度を調べるというものです。この機器を使ってコンクリートの基礎部分を複数箇所で測定し、平均値を出します。これによって、コンクリートの圧縮強度の測定ができます。

 

コンクリートは施工後27日で固まるので、施工から約1カ月後には調べることが可能です。住宅の基礎以外の部分でコンクリートを使用している箇所が、もうひとつあります。土砂崩れを防ぐための擁壁(ようへき)です。

 

関東地方でいえば、坂や崖が多い神奈川県では、宅地造成地を造る際に擁壁をコンクリートで造ることがあります。地盤の安定化のために行われるわけですから、その強度は極めて重要です。前述した「しゃぶコン」のような水分の多いコンクリートで造った壁にひびがあると、土のほうから水が浸み込んでしまい、強度が損なわれてしまいます。

 

この場合も見た目で判別することは不可能なので、「赤外線サーモグラフィー」を使ってコンクリート表面の温度変化を0.1度単位で測定します。他の箇所に比べて温度が低くなっている箇所は、水分が含まれている可能性があります。

 

水分が存在する可能性のある箇所を把握したうえでシュミットハンマーを使った診断を行えば、より精度の高い強度の測定が可能です。

本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

田中 勲

レジデンシャル不動産法人株式会社 代表取締役

仲介手数料無料ゼロシステムズを運営して首都圏全域の不動産仲介と建物診断を行う。不動産業界に20年以上従事しており、物件の売買実績は1000件以上。そこで得た経験をもとに“田中式建物診断”という独自の建物診断を提唱している。欠陥住宅の購入を防ぐ欠陥住宅の専門家として知られ、独自の建物診断の第一人者として、ラジオ、テレビ、雑誌、書籍等多数のメディアで活躍している。

著者紹介

連載住宅の欠陥や不具合を見抜く22のポイント

こんな建売住宅は買うな

こんな建売住宅は買うな

田中 勲

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅と比べて安く購入できる建売住宅は、特に地価の高い都心近郊で人気がありますが、実は流通している住宅の大部分が目に見えない欠陥・不具合を抱えているのが実情です。実際に、断熱材のズレ・不足や、準防火地域におけ…

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