(※写真はイメージです/PIXTA)

残念ながら、多くの親子が塾選びの指標にしている要素はほとんど当てにならないようです。たとえば一番の指標とも言うべき「合格実績」では、塾が費用を負担して学力上位の生徒に多くの併願校を受験してもらい、合格数を多く見せていたり、正規の塾生ではない外部の検定試験・模擬試験の受験者まで合格数に含めていたりなども珍しくありません。本当にわが子のためになる塾を見つけるには、どんな要素をチェックすればよいのでしょうか? 花咲スクール代表・大坪智幸氏が「塾選びのポイント」を解説します。業界の内情を知る立場ならではの、意外な着眼点です。

【関連記事】「塾に行けば安心」とは言えない…塾業界の「不都合な真実」

「塾選び」で必ず見るべき6つのポイント

数多ある学習塾のなかから、優れた教育を受けられる良心的な塾を選ぶためには、いくつかのポイントがあります。私が常に気に掛けるべきだとしているのは、次の6つです。

 

①教室トップの姿勢、関わり方をチェックする

②「普段の授業」を必ず見せてもらう

③ネットへの書き込みではない、人同士の地域の口コミ情報や子どもの感想も重要

④授業・講習のシステムと費用が適正かどうか

⑤入試、受験の情報を得る機会が用意されているか

⑥清潔感があるか

 

これらは塾のパンフレットやホームぺージを見ただけでは、実際のところは分かりません。できる限り保護者と子ども本人で塾を訪問し、病院で医師が行う問診のように、気になるところを質問して、じっくりと相手を見極めていくのです。

①教室トップの姿勢、関わり方をチェックする

■教育理念や信念、子どもを伸ばすために大事にしていることを質問してみる

まず、その教室のトップ、塾長、教室長といわれる人がどういう姿勢でいるかということです。責任者の人柄やビジョンによって、やはり教室の雰囲気はがらりと変わります。

 

トップの教育理念や信念、子どもを伸ばすために大事にしていること、こうしたことを直接質問してみることで、塾の質が分かります。雇われ教室長で、マニュアルに書かれていることを話すだけの人と、きちんと理念や覚悟をもってやっている人では、当然、言葉や表情も違ってきます。特に大事なのは、子ども一人ひとりを尊重し、その子にとっての最良の未来をいちばんに考えているかどうかです。昨今の受験の厳しさを語り、不安をあおるとか、「年頃のお嬢さんには親御さんも気を遣いますよね」と、誰にでも当てはまる当たり障りのない話をするだけ、というのは要注意です。

 

■責任者が実際に教科指導をしていれば「信頼できる塾」

また、責任者が実際に教科の指導をしているかどうかも注目ポイントです。

 

大手塾では、教室長は入塾相談や面談などを行うだけ、というところは少なくありません。しかし教科の指導をしなければ、生徒の個性や課題は見えません。ましてその子に合った受験指導など、できるはずもないのです。教室トップが教科の指導で生徒全員を見ていれば、学習でも進路相談でも一つひとつの言葉の重みが変わってきます。教室長が教科の指導もしているような塾は、信頼してよい教育機関だと私は考えます。

②「普段の授業」を必ず見せてもらう

■「体験授業」と「普段の授業」は別物

次に大切なのが、授業の質です。授業は入塾希望者向けの体験授業ではなく、「実際の通常授業」を見せてもらうのです。講師の説明が分かりやすいか、子どもをよく見て理解に応じた指導をしているか、宿題の内容は学力に合っているか、しっかり確認します。

 

毎回の授業を公開していて「いつでも好きなときに見に来てください」という塾や予備校であれば間違いありません。そういうところは、授業の質に自信のあるところです。リアルタイムのオンライン授業コースをもっている塾も安心できると思います。授業時間帯になったら保護者も接続し、一緒に授業を受けてみればいいのです。

 

反対に、「生徒が集中できないので」などともっともらしい理由をつけて、塾が指定した時間以外は見学ができないところは、授業の質が十分でない可能性があります。

③地域の人から直接聞いた口コミ情報、子どもの感想

■ネット上の口コミや評価は、塾側のマーケティング戦略の一環

ネット上の塾の評判はあまり当てになりません。大手塾のマーケティング戦略によって実態が見えにくくなっているからです(【⇒関連記事:「塾に行けば安心」とは言えない…塾業界の「不都合な真実」】)。それよりも、ネットへの書き込みではない、人同士の地域の口コミ情報のほうが実情が分かると思います。

 

地域の人に信頼されている塾、ただ同じ学年の誰々さんの子が通っているという情報ではなく、「あそこは子どもが伸びる」「実際に結果を出している」、そういう声があるところは選んでも問題ありません。またできるなら実際に通っている生徒、過去に通った卒業生などに感想を聞くことも有意義です。

 

■子どもがただ「楽しいよ」というだけの塾は、実はNG

子どもがただ「楽しいよ」というだけの塾は、実はNGです。個別指導塾ではありがちですが、大学生の講師と楽しく話をするだけの塾もあり、それでは学力は伸びません。授業は楽しいほうがいいですが、実際に学力を伸ばしていく過程では、苦しいところを乗り越えなければならない場面が必ず出てきます。そういうときに覚悟とある種の厳しさをもって、粘り強く指導を行っていくのが、本当に子どもの未来を考えている塾です。

 

当塾に何年も通っている生徒たちも、入塾して間もない子たちが「授業がすごく楽しい」と興奮ぎみに話しているのを横目で見ながら、「そりゃこんな授業今まで受けたことないから、最初は楽しいだろうけど、そのあとがたいへんなんだよ」と苦笑いしています。そういいながら、私たちが課す大量の宿題をきっちり仕上げてくる知的なたくましさを身につけた生徒たちは、今後もきっとすばらしい成果を上げてくれるだろうと期待しています。

④授業・講習のシステムと費用が適正かどうか

■季節講習や追加講習を「塾の売上のため」に取らせる塾は多い

その塾の授業・講習システムと、費用についてよく確認する必要があります。

 

授業料は、月単位の通常授業の分だけを指していて、季節講習や追加講習はまた別途というところが大半だと思います。季節講習や受験期の特別講習で、授業料と別に十万~数十万円がかかってくることも多々あります。

 

年間トータルでどれくらいかかるのか、どういうときに追加費用が発生するのか、受験学年(小6、中3、高3)になるとどうなるのか、といった点を聞いておくと安心です。

 

当塾では、月々の授業料と過年度分季節講習の費用をホームページで公開しており、年度当初に年間いくらと決めた額を負担していただくスタイルで運営しています。2016年度から費用改定は行っていません。年度の途中にあとから突発的に費用が発生することもありません。また、中3受験期の1月下旬から2月後半にかけての約4週間は、受験直前のラストスパートということで特別講習を行っていますが、これはすべて無料で行っています。

 

「直前講習がすべて無料」と話すと、いつもとても驚かれ(そして喜ばれ)ます。生徒たちが受験当日を安心して迎えられるよう、私たちができることをすべてする、私たちを信頼して通ってくれた生徒たち、通わせてくれた保護者の方々への恩返し、そういう気持ちで無料講習を行っています。当塾と同じ気持ちで同様のことを行っている塾は他にもあります。ご縁です。じっくり探してみてください。

⑤入試、受験の情報を得る機会が用意されているか

■その塾がどこまで情報収集に対応しているか?

次に挙げるのは、入試・受験情報についてです。

 

特に高校受験は、地域によって特色が異なります。高校ごとの校風や授業内容とカリキュラム、受験の選抜システム等を知るためには、地域の進学相談会や進学フェアといったイベントを活用して、なるべく多くの情報を入手し、吟味していく必要があります。

 

こうした進学相談会などの情報入手は大手塾のほうが有利です。個人塾の場合、良心的で指導力があるところでも、こうした情報入手の機会が限られるところもあります。高校の情報は各家庭で資料請求をすることもできますが、限られた時間で大量の情報を集めるのは大変な作業です。塾がどこまで情報収集に対応しているかは、重要なポイントなのです。

 

当塾の場合、私がNPO法人・埼玉教育ネットの一員として活動しており、「入試ファースト」という大規模な進学相談会を毎年、塾生とその家族に紹介しています。これはこの地域の公立・私立高校約80校、約4000人が集う埼玉県東部最大の相談会で、夏休み前から受験校を決める秋頃にかけて年数回、開催しています。

 

もちろん埼玉県だけでなく、全国各地域でこうしたイベントは開催されています。こうした機会にできる限り多くの情報を集めれば、わが子に合った受験校選び、後悔のない進路選択に役立てることができます。

⑥清潔感があるか

■「自分以外の誰かが使うスペース」まで散らかしているのは論外

まず、教室は清潔に保たれているかの確認をしてください。掃除ができない人間にまともな仕事はできません。最近ではあまり聞きませんが、武道やスポーツ、修行という世界ではまずは掃除スタートです。この仕事でいうならば、文字どおり生徒の目線になって確認していきます。この観点がある教室は話を聞いてもよいと思います。

 

ただ、この場所では多種多様な紙媒体のテキストや書類を扱います。それらが縦積みになっている教室を見ることがあると思いますがそこは問題ではありません。自分以外の誰かが使うスペースが清潔に保たれているかです。余りにも埃まみれでは考えものですが、大学教授の机や医師の机と同様と考えればなんとなく想像がつくと思います。他者への配慮ができるか、そういった観点でもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

 

大坪 智幸

株式会社花咲スクール 代表取締役、本部校教室長

 

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※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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