(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で経営状況が悪化した企業も多いなか、所得税とは異なり赤字であっても納付義務が免除されることがない消費税は、中小企業経営者や個人事業主の悩みの種のひとつです。今回は、税理士法人グランサーズの共同代表である黒瀧泰介税理士が、消費税の特例について解説します。

 

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そもそも消費税とは…「消費者から預かった税金」

日本国内の消費税は、まだ歴史が浅く、1989年(平成元年)に、税率3%で初めて導入され、その後、1997年に5%、2014年に8%、そして2019年から10%に引き上げられてきました。

 

ここ10年ほどで一気に税負担が高くなったと感じられるかもしれませんが、諸外国と比べると、日本の消費税は決して高い部類には含まれません。

 

さらに、今後の少子高齢化社会を考えると、いずれ「社会保障制度の財源確保」という名目で、諸外国並みに消費税率が引き上げられることも十分に予想されます。

 

[図表1]消費税(付加価値税)の標準税率(2021年1月現在、出典:国税庁)
[図表1]消費税(付加価値税)の標準税率(2021年1月現在、出典:国税庁)

 

 


イチ消費者としても、消費税の動向は気になるところですが、経営者にとっても、法人税と異なり赤字でも納付が必要な税金のため、資金繰りの観点から注意しなければならない税金です。

 

理解しておきたい「消費税の仕組み」

 

消費税は、負担する人と納税する人が異なる間接税です。

 

もう少し分かりやすくいうと、消費税を実際に負担しているのは「物を購入した(=お金を支払った)消費者」で、「販売した(=お金を受け取った)企業」は、消費者に代わって、預かった税金を納めているだけという仕組みです。

 

理屈のうえでは、預かった税金をきちんと保管してさえいれば、必ず納付することができるはずです。しかし同時に、販売した企業は、仕入や経費など「自社で支払った消費税」を負担する立場でもあります。そのため実際には、受け取った消費税がそのまま納付額になるわけではありません。

 

消費者が洋服を購入するまでの流れを例に、納税額の考え方を説明していきます。

 

[図表2]消費税のしくみ(消費者が洋服を購入するまで)
[図表2]消費税のしくみ(消費者が洋服を購入するまで)

 

 

<消費税が一律10%の場合>

 

■消費者
負担額:洋服を11,000円で購入すると、10%の1,000円を消費税として負担

 

■小売業者
受取額:消費者から1,000円を消費税として受取
負担額:卸売業者から7,700円で仕入れたため、10%の700円分を消費税として負担
納税額:1,000-700=300円

 

■卸売業者
受取額:小売業者から700円を消費税として受取
負担額:製造業者から5,500円で仕入れたため、10%の500円分を消費税として負担
納税額:700-500=200円

 

■製造業者
受取額:卸売業者から500円を消費税として受取
負担額:この例では、かからなかったものとします。
納税額:500-0=500円

 

小売業者・卸業者・製造業者が納税した消費税の合計額は1,000円で、消費者が支払った消費税額と同額になります。

 

事業者が納税する消費税を計算するときは、消費者から預かった消費税と、自社で支払った消費税をそれぞれ計算して、その差額を納付することになります。

 

原則として消費税の課税事業者に該当した場合、法人・個人にかかわらず、消費税の納税義務があります。ただし、実務の負担を考慮して、実際に納税する義務が発生するのは、一定以上の規模の事業者に限られています。

 

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