(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年5月に金融商品取引法が改正されて誕生した「デジタル証券(ST:Security Token)」は、ブロックチェーンで管理されるデジタル金融商品のことを指します。今回、One Tap BUY(現PayPay証券)を創業し、現在はHash DasH株式会社取締役の三好美佐子氏が、デジタル証券を取り巻く環境と、国内で加熱する覇権争いについて解説します。

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世界で急速に拡大している「デジタル証券」市場

米国フロリダに本社をおくSecurity Token Group社によると、グローバルのST市場は時価総額で約11億ドル(約1,243億円、2021年10月)、110銘柄が取引されています。

 

2019年のSTの発行が4.5億ドル(約508億円)であったことから考えると、急成長していることがうかがえます。

 

国別には、米国を筆頭にスイス、英国、ドイツなど先進国のほか、エストニア、UAEでも発行されています。

 

STで裏付けとなる資産としては、株式(おそらくほとんどが未公開株)、債券、不動産となっています。流動性をもっとも必要としている点で日本でも注目され、商品開発が進んでいる不動産について、ST活用の歴史をみてみましょう。

世界初…実物不動産の所有権をブロックチェーンで移転

シリコンバレーのPropy社が2017年10月に扱った「ウクライナのアパート」が世界初の案件となりました。

 

これを購入したのがTechCrunch(スタートアップ企業の紹介などで有名なテクノロジーメディア)創業者マイケル・アリントンでした。

 

Propy社では2018年10月にもスペインの物件をフランスの買い手に対して譲渡取引を成立させました。この件は、オンラインで国境を越えてのシームレスな購入を可能にしたとして高い評価を受けています。

 

さらに有価証券に近い形として、Templum Markets LLCとIndieGoGoが共同で2018年10月にロッキー山脈にある高級ホテルをREIT(不動産投資信託)にしてST化(ブロックチェーンで取引できるようにトークン化)しました。

 

こちらは、富裕層しかアクセスできなかった不動産投資に一般投資家が参加できる機会を作り出したことで評価されています。

 

小口の個人投資家向けでは2019年7月のBlackstackネットワークで実施されたSTOが初めての案件ですが、投資上限額が3,000ドルと非常に保守的なスタートでした。

 

なお、流通市場では、米国証券取引委員会の規制に準拠したST取引所として、2018年12月にOpenFinance Networkが設立されています。

 

その後、現在では、tZERO、Securitize、Securrency、Dsdaq、Poloniex、Kraken、Harbor、SMART VALOR、Brickblockなど主に15の業者があるようです。

 

STOに関する公式なデータ等はまだ整備されておらず、これら情報は企業サイトやニュースなどをもとに取得しておりますが、そういった状況からもSTOを取り巻く環境はまだまだ黎明期にあるといえそうです。

 

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