(※写真はイメージです/PIXTA)

実家はお世辞にも裕福とは言えず、二浪一留を経て念願の歯科医師になったあづみハッピー歯科医院院長・安積中氏は、自らの成功体験から、「他人を笑わせる力」は目標達成に非常に役立つと語ります。実際に歯科医院の開業に成功した筆者は、笑わせる力をどのように活かしてきたのでしょうか。

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ネタそのものの面白さより「自信を持つこと」が大事

笑わせるチカラを身につけるポイントの1つは「自信をもつ」ことです。絶品、とまではいかないくらいにおいしい料理でも、シェフに「自信作です」と言われると、ちょっとおいしく感じるものです。笑いも同じです。ネタとしてはまあまあでも「どうや」「面白いやろ」と堂々と披露すると、私の感覚では面白さが2割増しくらいになります。

 

そもそも、おいしい、美しい、面白いといったことは、個々の感性が支配することで、感性は人それぞれです。お笑いコンテストを見ても審査員の評価は微妙に分かれますし、そのことからも万人が大笑いするネタはないことが分かります。

 

だからこそ、「何を言うか」よりも「どう言うか」です。

 

相手に笑ってほしいという気持ちがあり、そのためにこの話を選んだのだという自信があれば、その思いは相手に伝わりますし、笑顔や笑いを引き出せるものなのです。

「経験談」こそ、自信をもって語れるネタ

「どう言うか」と同じくらい重要なのが「誰が言うか」です。

 

例えば、「ふとんがふっ飛んだ」は、お笑い芸人でもない私のような一般人が言ったところで特に面白くありません。しかし、さんまさんやダウンタウンの二人が言うと、なぜか少し面白く感じるはずです。何が違うのかというと、背景が違います。

 

「笑いに精通したこの人が言うんやから、面白いんやろう」「面白いはずや」「笑うところやな」

 

そんな思考が働き、やはり面白さが2割増しになるのです。同じことが日常会話の笑いについてもいえます。

 

私は二浪して歯科大学に入ったので、浪人生の苦労や苦悩の話ができますし、周りの人もそれを面白いと思ってくれます。

 

少年時代の貧乏エピソードも多くの人が笑ってくれます。その理由も、私が実際に貧乏生活を経験しているからです。

 

「銭湯で売っていた30円のコーヒー牛乳が飲みたかった」

 

たったそれだけのことでも、私なら実感がこもっていますし、本気で飲みたいとずっと思っていたので、それが笑えるわけです。

 

貧乏も浪人生活も経験をしているので、語ることができ、話に説得力が生まれ、笑ってもらいやすくなるのです。貧乏が奏功したとか、失敗をしましょうとか、そういうことを言いたいのではありません。自分が実際に経験したことほど、自信をもって披露できるということです。

 

ちなみに、私のお笑い遍歴を紹介しておくと、中学3年生のときに漫才ブームが始まり、島田紳助・松本竜介さん、オール阪神・巨人さん、横山やすし・西川きよしさんなどの漫才に大爆笑しました。ただ、当時いちばん好きだったのは、笑福亭鶴瓶さんの中学時代の実話でした。練りに練ったネタも好きですが、それ以上にリアリティのある話が笑えたのです。

 

今も、数あるお笑い番組があり、自称、お笑い評論家としてたくさんの番組を見ていますが、そのなかでも「おもろいなあ」と思うのは実話で構成されている『人志松本のすべらない話』です。

 

「事実は小説より奇なり」というように、世の中ではたまに、とんでもなく面白いことが起きます。その「笑撃」を語れるのは、経験者です。あれこれネタを考えたり、付け足したり演出したりしなくても、目の前で見たこと、起きたことが面白いと感じたならば、それを自信をもって伝えることで、相手にも面白さが伝わるものなのです。

経験談を披露した結果、「居抜き開業」に成功

自信をもつことは目標達成においても重要です。自信をもつことによって面白さが割増になるように、自信をもって取り組めば目標達成の可能性も割増になります。「どうせ売れないだろう…」と考えて売る商品は、まず売れません。事業の立ち上げも、銀行融資の申し込みも、愛の告白も、貯金も、お小遣いの値上げも、あらゆる目標において、「きっとダメだ…」と考えていると、結果はダメになります。

 

自信過剰はよくありませんが、それよりもよくないのは自信がなさ過ぎることです。なんの努力もしていない場合は話は別ですが、目標がある人なら、多少はなんらかの努力をしているはずです。

 

ダメだと考える前に、努力したことに自信をもつことが大事です。努力は自信を生みますし、自信は良い結果をもたらします。スピリチュアルな話は好きではありませんが、自信をもって取り組むことで、運さえも良くなることもあります。私が開業できたのも、「自分にはできる」と思い込み、自信をもって取り組んだからです。

 

通常、歯科医院の開業には3000万円から4000万円の資金が必要です。これは内装や設備にかかるお金で、土地を買い、更地から建物をつくるとなると億単位のお金がかかります。

 

世襲の人やお金持ちの人が開業できるのは、この資金を援助してもらえるから、または、歯科医院そのものを受け継ぐことができるからです。この援助がない人は、銀行から融資を受けるのが一般的で、その際には担保が必要です。

 

もはや言うまでもないですが、私は後者です。しかも、担保となる物件などはなく、十分な融資は受けられません。そこで、できるだけ初期投資をかけずに開業しようと考えて、「居抜き」開業を目指しました。居抜きとは、中古の建物や設備を丸ごと買うことで、跡継ぎがいないなどの理由で廃業する歯科医院を探そうと考えたわけです。

 

以来、業界新聞に載る物件情報探しが日課になりました。そしてある日、「歯科医院売ります」の広告を見つけたのです。連絡を取って話を聞きに行ったところ、その医院の院長は46歳にして膵臓がんで亡くなられたとのことでした。まだ開業して1年半しか経っていません。奥さまは「主人の思いが詰まったこの医院を形として残したい」と考え、売りに出されたのです。

 

歯科医院の売却は頻繁に出るわけではなく、物件は条件が良かったため、買い手候補はほかにもいました。しかし、だからといって諦めるわけにはいきません。

 

そこで、開業への熱意を伝えるべく、自分が小学校の頃から歯医者を目指してきたことや、「谷あり、谷あり」の人生を歩みながら、ようやくここまでたどり着いたことなどを包み隠さず話すことにしました。

 

貧乏だったことのコンプレックスはすでにきれいに消えています。二浪、一留の経験も、ブラック企業で雇われ院長をしていたことも、胸を張って話すことではないですが、自分の経歴の一部として受け入れています。だから、包み隠さず話すことができたのです。

 

すると、その歯科医院の亡くなった先生も中学2年生で新聞配達をしていたことや、井上陽水さんの大ファンであることなど、共通点が分かり、そのことに運命を感じてくれた奥さまが、私に売ると決めてくれたのです。

「自信をもつ」ことが開業チャンスを呼び込んだ

「どうせダメだろう…」と後ろ向きに考えていたら、自分のことは語らず、亡き先生との接点も見つからなかったでしょう。そもそも業界新聞で物件情報を探すことすらしなかったかもしれません。

 

何が開業のチャンスを呼び込んだかというと、「自分は絶対に開業できる」「チャンスは巡って来る」という自信です。

 

自信をもち、自信をもつために努力し、失敗もコンプレックスも含めて、努力してきた自分を丸ごと受け入れ、さらけ出す勇気をもつことが、相手を笑わせるチカラになり、目標達成に近づく力にもなるのです。

 

 

安積 中

あづみハッピー歯科医院院長

 

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※本連載は、安積中氏の著書『人生を切り開く笑いのチカラ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

人生を切り開く笑いのチカラ

人生を切り開く笑いのチカラ

安積 中

幻冬舎メディアコンサルティング

人生における失敗や挫折を「笑い」に転換するための思考法とは? 日本人の4人に1人は何かしらの不満を抱えています。 老後の未来には年金不安と健康不安が待ち受けており、それに加えて、昨今ではコロナ禍での鬱々とした…

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