(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、ヘッジファンドなどの運用戦略のベースにもなる「エージェント・ベーストモデル」について見ていきます。

「効率的市場仮説」が成立する3つのケース

エージェント・ベーストモデル(Agent-based model, ABM)」を紹介する前に、ファンダメンタルズ分析の有用性において重要な意味を持つ「効率的市場仮説」について簡単に説明する。

 

※日本語で「エージェント・ベースモデル」とも表記される。以下ではエージェント・ベーストモデルで統一

 

伝統的ファイナンスのベースとなっている「効率的市場仮説」は、すべての情報があらゆる種類の証券価格に瞬時に反映される仮説のことをいう。そして、資産運用の理論的背景である現代証券投資理論(MPT)は、この効率的市場仮説を前提にしている。

 

効率的市場仮説は、証券価格に反映される「利用可能なすべての情報」をどのように考えるかによって、「ウィーク・フォーム」「セミストロング・フォーム」「ストロング・フォーム」の3種類の効率性に分けられる(参照:『アクティブ運用の変化…「ファンダメンタルズ分析一択」から「戦略分散の時代」へ』)。

 

ここで、効率的市場仮説が成立する3つのケースについて考えてみたい。

 

(Ⅰ)市場を構成するすべての投資家が合理的であるとき。合理的な投資家は、証券価格をファンダメンタルズ価値として評価する。証券のファンダメンタルズ価値に関係する新しい情報があると、合理的な投資家はそれに即座に反応し、ファンダメンタルズ価値を調整する。

(Ⅱ)非合理的な投資家が存在しても、取引がランダムに行われ、それが相関していないならば、影響は相殺され、価格はファンダメンタルズ価値に収束する。

(Ⅲ)非合理的な投資家が存在し、取引が相関していても、市場が完備ならば、裁定取引によって価格はファンダメンタルズ価値に収束する。

 

成立する上で上記の3つが重要なのだが、行動ファイナンスの研究者や投資の実務に長年携わってきた運用担当者などは、「効率的市場仮説」が実際の市場で成り立っているのかについて、以下の形で疑問を呈している。

 

・上記(Ⅰ)に関しては、すべての投資家が合理的であると考えるのは非現実的。

・上記(Ⅱ)に関しては、非合理的投資家の誤りは系統だっており、ランダムではないとの批判の声があがっている。

 

したがって、(Ⅲ)の裁定取引が制約なく行われることが、伝統的ファイナンスが主張する効率的市場仮説が成立するための必要条件であるが、実際に裁定取引には流動性などのリスクがあり、コストもかかるという点で制約が存在するため、効率的市場仮説は成立しておらず、市場は非効率的であると結論付ける声も多い。

 

このことは、次に紹介する「エージェント・ベーストモデル」からも効率的市場仮説が想定する市場の動きにならない可能性が示唆されている。

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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