今回は、現代の若者の考え方をもとに、戸建てとマンションでは、どちらがより求められているのかを見ていきます。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

現代の若者は「経済合理性重視」という傾向がある

前回までの連載で余剰住宅について解説しましたが、それでもわが国には1億人の民がいますし、少子化とはいえ子どもは生まれてきますので、今後も住宅が、強いていえばマンションが必要であることは紛れもない事実です。

 

ここではマンションの「特性」について考えてみたいと思います。

 

現在は、首都圏や大都市圏などの都市部に人口が集中しています。当然、仕事もそこに集中しているので、特に20〜30代の若い世代の人たちにとっては、首都圏や大都市圏での生活を強いられることになります。

 

そのなかでも、首都圏において、結婚や出産などを経て住宅を取得することを考えた場合、特に不動産を初めて購入する「一次取得者」である若者たちの選択肢の大半はマンションになってきます。

 

実際、筆者の会社の若手社員をみても、今まさにマンションを中心に住宅の取得を検討しているところです。この一次取得者となる現代の若者の思考について、筆者なりに分析をしてみると、次のようになります。

 

●クルマ:必要ないし、免許も取る気がない。

●テレビ:パソコンやスマホ、携帯電話などで見られるから、テレビは買わない。

●新聞や固定電話:スマホや携帯電話、タブレットで事足りるから必要ない。

 

このように、「経済合理性重視」という傾向が見受けられます。

若者は戸建て住宅の「不便さ」に気づいている

では、家についてはどう考えているのでしょうか。ひと言でいうと、「老後にかかる居住費(家賃)を心配する必要がない」、つまり「将来の安心」を求めているようです。自分の親の世代を見ているからか、持ち家志向はありますが、それが必ずしも新築である必要はなくて、中古でも構わないと考えているんですね。

 

そして、その持ち家も戸建て住宅にはこだわらず、むしろ近所づきあいが濃密というイメージの強い戸建て住宅よりも、気を遣わずに暮らせるイメージがあるマンションのほうにメリットを感じている傾向にあると思います。

 

ひと昔前には、おしゃれな洋風作りの広い戸建て住宅が憧れの的になりましたが、今の若者たちは、そんなバブルの産物のような戸建て住宅の不便さに気がついているんですね。

 

また、会社からそれほど遠くないところに住みたがる傾向もあるようです。おそらく、2011年に起きた東日本大震災の際に、大量に発生した帰宅困難者たちが、何時間も歩いてようやく家にたどり着いたというケースをたくさん見たせいもあって、「可能なら、職場の近くに家を持ちたい」という意識が強くなったのでしょう。

 

つまり、今の若い世代の人は「家って、もっと小さくていいんじゃね? 一戸建てなんていらないんじゃね? クルマもいらないし、共働きだから会社にも近いほうがいいし、お店がいっぱいあって、楽しいところがいいよね」という、「経済合理性重視」の思考なのだろうと思うのです。

 

そうなると当然、都心や大都市の中心地にある小さな賃貸マンションなどに人気が集まってきます。また、災害時のことを考えて、何か起きた場合に「会社から歩いて2〜3時間で帰れる場所」となると、せいぜい電車で30分ぐらいの距離になります。

 

首都圏や大都市圏において、一次取得者の若者がその立地で住宅の取得を考えると、8〜9割はマンションが現実的な選択肢になってくるんですね。

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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