表面利回りだけに頼るのは禁物
資産形成の手段として、「不動産投資」が注目を集めています。たしかに不動産投資は、株やFX(外国為替証拠金取引)などと比較して長期的に安定した収入を得やすい、ローリスクな投資という一面はあるでしょう。
しかし不動産なら何でもいいかというと、もちろんそんなことはありません。リスクが低いからといって誰でも成功できるかというと、それももちろん違います。それでは、不動産投資のリスクを極力抑えて、長期的かつ安定的に収入を得るためにはどうすればよいのでしょうか。今回は、正しい投資判断をするための指標について見ていきましょう。
ポータルサイトなどに掲載されている利回りは、正確には「表面利回り」を指します。これは満室想定家賃を単純に物件価格で除算(割り算)した数値だというのは周知の通りです。投資判断をする際に第一に確認する指標として意味を持っています。日本国内の収益物件はこの表面利回りで表示されるケースが一般的です。
ただし、保有期間中に年間を通じて満室を維持できるケースはありません。空室が発生し、滞納が発生する可能性もあるため、満室想定家賃を実際の運用時に期待するのは現実的ではありません。表面利回りに惑わされてしまうと、キャッシュフローが出ない物件を間違って購入しかねないのです。
表面利回りを参考にしながらも、その物件の収益力をより具体的に想定するためにはどうすればいいのでしょうか。以降、投資の判断材料の導き方を説明します。
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活用したいNOIとFCRという指標
まず年間を通じて常に満室ということはあまりないので、その分を考慮する必要があります。これを実効総収入と定義づけます。
実効総収入=満室想定総収入 − 空室・滞納損失
筆者の場合、投資判断をする際の空室率は、5〜10%で想定します。滞納損失も含めて同じパーセンテージでみていいでしょう。こうして実効総収入を算出したあと、物件保有後の運営費として「管理手数料」「建物管理費用」「水道光熱費」「固都税(固定資産税、都市計画税)」「原状回復費用」などを実効総収入から控除します。
その結果、実際の収入となる営業純利益(NOI:Net Operating Income)は次の通りです。
NOI=実効総収入 − 運営費
このNOIが物件の本当の収益力を表しているのです。さらに、このNOIを総投資金額(物件価格+購入諸経費)で除算した指標を総収益率(FCR:Free and Clear Return)と呼びます。
FCR=NOI ÷ 総投資額(物件価格+購入諸経費)
FCRは大雑把にいえば、「ネット利回り」ともいわれているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
このNOIとFCRの指標を理解するだけで、投資判断に幅が出てきます。簡単なモデルケースを取り上げてみます。
■物件1:RC造 4階建
■物件2:木造 2階建
(共通条件)
物件価格:1億円
満室想定家賃:1100万円
表面利回り:11.0%
空室・滞納損を100万円と想定し、実効総収入は1000万円
物件1、2ともに表面利回りは11.0%です。ではFCRはどうなるでしょうか。計算を簡略化するために購入諸経費は計算に入れないことにします。
物件1にはエレベーター、受水槽、自動火災報知機など点検が必要な設備が多くついています。さらにRC造物件は固都税が木造に比べて高いです。結果として、運営費は200万円程度となります。
物件2は点検する設備は特段なく、強いて挙げても消火器程度です。日本の税制では土地の固定資産税はかなり減税され、かつ木造中古物件の建物に対する固都税も安価です。結果として、運営費は100万円程度となります。
まとめると、次のようになります。
■物件1(RC 造)
FCR=(実効総収入1000万円 − 運営費200万円)÷ 物件価格1億円=8%
■物件2(木造)
FCR=(実効総収入1000万円 − 運営費100万円)÷ 物件価格1億円=9%
このように、同じ表面利回りでも、ネット利回りであるFCRで比較すると違ってくるのがわかります。表面利回りは単純に求めやすいので、使いやすい指標ではあります。しかし、投資判断の際は空室率を考慮し、さらに運営費を確認することで、正しい投資判断ができるようになるのです。
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