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連載「中古一棟買い」で成功する不動産投資【第2回】

投資判断の指標のひとつ「イールドギャップ」とその適正値

FCRNOIイールドギャップ

投資判断の指標のひとつ「イールドギャップ」とその適正値

今回は、投資判断の指標のひとつである「イールドギャップ」を取り上げます。その正確な定義を把握したうえで活用していきましょう。
 

「イールドギャップ」の内容を正確に知る

融資を受けて不動産投資をする前提の場合、NOI、FCRと共に重要となる投資判断の指標が「イールドギャップ」です。

 

不動産投資に関する書籍やブログなどには、「物件の表面利回りと借入金利との差をイールドギャップといい、表面利回りが高くても借入金利が高ければ、その差を大きく取れないので利益が残らない」などと解説されています。

 

たとえば表面利回り10%の物件を購入し、金利3.0%で資金を調達した場合、イールドギャップは7%ということです。実は、この解釈は不動産投資をする上では間違っています。実際に物件を購入された方は経験があると思いますが、融資を受ける際に金融機関から提示される条件は「融資金額」「金利」「返済期間」です。この3つの条件をもとに月々の返済額が確定するのです。

 

ところが、先ほどのイールドギャップの解釈では、「返済期間」の要素が入っていません。これでは本当のイールドギャップを求めることはできません。仮に間違えた定義によるイールドギャップ7%を投資の期待値としましょう。その場合、次のような物件は投資対象になり得るでしょうか。

 

物件価格:1億円
年間家賃収入:1000万円(表面利回り10%)
借入金額:9000万円
借入金利:3.0%
返済期間:10年

 

先ほどの間違った定義で考えると、イールドギャップは7%となりますが、この条件ではインカムゲインを狙ったときには投資対象にはなりません。

 

簡単に計算してみましょう。

 

空室率5%、運営費が家賃の20%の場合
 NOI=1000万円×95% − 1000万円×20%=750万円
 年間元利返済額1040万円
 税引前の年間キャッシュフロー=750万円 − 1040万円=▲290万円

 

結果として、赤字になりました。このように、間違ったイールドギャップの定義では、正しい投資判断ができないのです。

 

では正しいイールドギャップは、どうすれば導き出せるのでしょうか。そこで必要となってくるのが「ローン定数K(単位%)」です。意味合いとしては、融資総金額に対し、どの程度の割合で返済しているのかを表す指標で、借入に対する負担率のようなイメージです。

 

次の計算で求めることができます。

ローン定数K(%)=年間元利返済額÷ 借入総額(残高)

前項で紹介したFCRとローン定数Kの差が、正しいイールドギャップとなります。

 

ローン定数Kの数式をみると、〝年間元利返済額〟とあるように融資期間の要素が入っていることがわかります。同じ借入金利であっても、融資期間が長ければ年間元利返済額は小さくなるので、ローン定数Kも小さくなります。

 

ローン定数Kが小さくなればFCRとの差が大きくなるため、イールドギャップが大きく取れる(キャッシュフローが大きくなる)ことにつながるのです。この考えを持つことで、不動産投資のライバルに差をつけられます。

 

簡単なケースで説明しましょう。

物件価格:5000万円
年間家賃収入:700万円(表面利回り14%)
NOI:500万円(FCR10%) ※購入諸費用は考慮せず。
構造:S造
築年数:24年(法定耐用残存期間10年)

 

大阪ではこうしたS造の高利回り物件が流通しています。多くの場合、容積率オーバー物件です。たとえばこの物件に対して、二つの金融機関が、次の条件で融資を了承してくれることになりました。皆さんはどう考えるでしょうか。

 

金融機関A:融資金額5000万円 金利2% 期間10年
金融機関B:融資金額5000万円 金利5% 期間25年

 

「金融機関Aは金利が安いけれど、期間が短いのでキャッシュフローが回らなさそう」
「金融機関Bは金利が高すぎるのでキャッシュフローは出ないだろう」

 

おおむね、そのような感想ではないでしょうか。実際に投資の相談をさせていただいていると、金利のみに着目している方が多いと感じます。しかしローン定数Kおよびイールドギャップを求め、保有期間中のキャッシュフローに着目すると、どちらの融資条件が適切なのかがわかってきます。

 

金融機関A:K=年間返済額550万円÷ 借入額5000万円=11%
金融機関B:K=年間返済額350万円÷ 借入額5000万円=7%

 

本物件の総収益率FCRは10%でした。よってそれぞれのイールドギャップは次の通りです。

 

金融機関A:イールドギャップ=10% −11%=▲1%
金融機関B:イールドギャップ=10% − 7%=3%

 

金融機関Aはキャッシュフローが赤字になるので投資対象にするのには難しいです。一方、金利が高くて借りるのは無理だと思っていた金融機関Bはイールドギャップが3%もとれるため、キャッシュフローが潤沢に回ります。融資期間を長く取る際の注意点としては、返済期間が長いので元金債務が減りにくく、出口戦略をどうするのかというシミュレーションが必要となります。

 

いずれにせよ、正しい投資係数を理解しておくことで、イメージや感覚の判断ではなく、数字の具体性と客観性を持って判断できるのです。

イールドギャップは1.5 ~ 2.0 % を目標にする

イールドギャップは高いほうが望ましいのは当然ですが、最低何パーセント以上は必要と考えればいいのでしょうか。イールドギャップは投資の初期段階の判断のために用いる指標です。投資の変数はあくまでもその時点での値であり、時間の経過とともに変化します。総収益率FCRは時間経過とともに家賃下落や空室率の増減によって変わりますし、ローン定数Kについては金利が上昇したり、返済が進んだりすると変わることに注目してください。

 

多くの方は元利均等返済、すなわち金利変動がなければ返済期間中の返済金額は一定、という借り方をされるはずです。それに対して借入残高は毎年減っていきます。ローン定数Kは購入初期が一番低く、借入金の返済が進むにつれて毎年上昇していく値なのです。投資の初期段階の指標というのはそういう意味です。

 

このことを踏まえた上で、ある条件での判断基準を考えてみましょう。

 

投資家の方々の多くはフルローン、あるいはそれに近い借入での投資を考えられていることでしょう。私はリスクを抑える観点から一定以上(たとえば10%)の自己資金を投下するのをおすすめしてはいるものの、自己資金を抑えて短期で一定の規模まで投資をしたいと希望されている方が多いのが現状です。

 

ではフルローンで物件を購入する場合、どの程度のイールドギャップを目標にすればよいでしょうか。

 

筆者の考えでは、現在の不動産市況および融資情勢から鑑みると、1.5〜2.0%以上確保できるのが望ましいです。投資金額全額を借入する場合、投資金額1億円、イールドギャップ2.0%の条件で、税引前キャッシュフローで200万円ということになります。

 

仮にこの数字を得られない場合、投資対象となり得ないのかというと、そうでもありません。その場合は自己資金を多く入れるなどの別の判断も考えられます。最終的には物件ごとに個別の判断が必要となりますが、あくまでも判断材料の一つとして参考にしてください。

本連載は、2014年11月4日刊行の書籍『はじめての不動産投資 成功の法則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

藤原 正明

大和財託株式会社 代表

昭和55年生まれ。三井不動産レジデンシャル株式会社を経て、収益不動産に特化した事業を展開する武蔵コーポレーション株式会社で収益不動産の売買仲介および賃貸管理業務についての実務経験を積む。
平成25年に独立して大阪市内に大和財託株式会社を設立。
収益不動産を通じて、購入から運用・売却まで一貫した資産形成をサポートしている。
特に、物件情報をすべて数値化し、資金調達、物件購入、管理運用から売却までを視野に入れた収支シミュレーションに定評がある。
管理物件の平均入居率は98パーセントを誇る。

著者紹介

連載「中古一棟買い」で成功する不動産投資

はじめての不動産投資成功の法則

はじめての不動産投資成功の法則

藤原 正明

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