相続人が複数いる場合、後継者以外への配慮も重要です。そして後継者には、「自分は株式を独占する代わりに、他の相続人には現金を分け与える」――それが後継者としての最初の自覚であることをよく諭しておきましょう。

最も注意すべきは株式の分散リスク

事業承継では自社株式を100%引き継ぐのがベストです。オーナー社長の財産価値のほとんどは自社株式の評価額が占めるので、相続を平等主義で考える他の相続人からは、どうしてもうらやましがられることになります。
 
ここでもっとも注意すべきは株式の分散リスクです。万一「争族」になって株が分散すれば、再び集約するために、どれだけのお金と時間がかかるかわかりません。

相続税の課税評価では、時価よりも評価を低くできる土地などに比べ、そのまま評価される現金は、事業承継にとって必ずしも有利とはいえません。しかし、現金を用意しておかないと、自社株式の100%承継が難しくなるのも確かです。
 
少なくとも、他の相続人には遺留分相当の現金や換金可能な資産は残しておきたいところです。現金は価値が明確で、受け取るほうも平等が守られたと受け止めるメリットがあります。何よりも分かりやすいところが最大のポイントです。
 
たとえば、後継者以外の相続人に対しても、110万円の非課税枠を使って暦年贈与して、現金をあらかじめ渡しておく方法もあります。役員報酬で蓄積したり贈与で蓄積したりといった方法を実践してみてください。

後継者自身の相続対策のためにも現金は必要

もう一つ、現金を残しておくべき理由は、後継者の相続対策のため。かつては土地の物納が盛んに行われていたこともありますが、現在はハードルが高くなっています。非上場株式を物納するためには、譲渡制限を外しておく必要があります。

 

さらに、自社株式を物納する場合には、発行会社が随意契約により、買い戻すことが多く、発行会社において資金手当てが必要となります。
 
また、自社株式は無事100%引き継いでも、予想外に相続税額が高額になり、納税資金が足りなくなれば、後継者は融資に奔走しなければいけなくなります。そんな事態をさけることこそ、親心というものです。

 

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    本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『オーナー社長のための税金ゼロの事業承継』から抜粋したものです。2015年1月1日施行の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

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