筆者が「相場は予想できない」と主張する理由
前回(関連記事:『うまい話で溢れる投資の世界で「負け組」が圧倒的に多い理由』)では、「仕事で稼ぐこと」も「投資で稼ぐこと」も同じであり、稼ぐためには相応の努力が必要であること、しかし「AI」の存在がこの努力を圧倒的に削減してくれることをお伝えした。本題であるAIが投資の世界に与える可能性について話す前に、ひとつ、どうしても伝えたいことがある。
それは、投資の世界にはびこる「嘘」についてだ。
これから投資の世界で存分に収益をあげていこうと考えているのであれば、確実に知っておくべき内容だ。これを知っておくだけで、投資の世界でつまずくことは確実に減る。投資スキル0点であった筆者が、泥土のような負け組の世界から抜け出すことができたのも、こうした事実を一つひとつ知ったからである。
実は投資の世界において個人投資家は、「あること」を思い込まされている。その「あること」とは「相場は予想できる」という幻想だ。この言葉を聞いて、あなたはどのように感じただろうか。
「トレードは上がるか、下がるかを予想して行うものだろう」
「有名なアナリストが「予想」という言葉を使っていたぞ」
「今は21世紀。技術革新で予想できる事象も増えてきただろう」
残念ながらこれらはすべて、投資の世界の嘘である。どんな凄腕のアナリストでも、優秀だと主張する相場予想ツールを用いようとも、相場の未来を完璧に予想することはできない。たとえそれが100万分の1秒先の未来であっても、だ。アメリカの気象学者エドワード・ノートン・ローレンツが100%当たる天気予報は存在しないことを発見して知られるようになった「カオス理論」は、最初のほんのわずかな違いが、将来の大きな違いを生み出すことを提示した。天気だけではない。地震、津波、雪崩、種の進化、昆虫の大発生、食物連鎖、波の動き……自然科学で解明できていない現象のほうが多いのが現実なのだ。
そして相場の動きも同様。カオス理論の考え方を借りれば、波打つ相場の未来予想ができないことは、明らかである。それにもかかわらず今でもまことしやかに「相場の未来予想はできる」という前提で投資話は進められ、未来予想はできないという事実をひた隠しににしている。なぜなのだろう?
「テクニカル分析」が起こす錯覚とは?
筆者なりの考えを提示する前に、トレードの世界では当たり前の存在となっている「テクニカル分析」について触れてみたいと思う。
「移動平均線」「一目均衡表」「MACD」「RSI」など、投資の世界には様々なテクニカル指標が存在する。その指標を利用して相場分析をすることをテクニカル分析という。個人投資家に「相場は予想できる」と錯覚させてしまう厄介な物こそ、テクニカル分析であると筆者は考えている。もっといってしまうと、これらテクニカル分析こそ「個人投資家を負けさせるものである」と疑ってかかるべきである。
これらテクニカル指標は、証券会社のトレードツールをダウンロードすれば、まるであなたのトレードを手助けするかのようにトレードチャートに初期搭載されている。そして、テクニカル指標の使い方を示した教材や書籍が、書店の投資コーナーにも所狭しと並んでいる。
しかし、テクニカル指標を簡単に使える立場にいる個人投資家は、テクニカル指標が存在する「本当の意味」を知らなくては、みすみす相場で負けに行くようなものだと考えるべきだ。なぜなら、「テクニカル指標」は「相場は予想できる」と錯覚させる物なのだから。
なぜそのような錯覚をさせる必要があるのか。
過去を紐解くと、相場を「予想する」という言葉は、1980年代以降、証券業界やメディアが個人投資家に浸透させようとした戦略の結果、産み落とされた負の産物であったことを知る人はほとんどいない。相場は「予想できる」と思い込ませる戦略。これを、権威・権力・肩書きを利用してメディアで扇動すれば「信じさせることができる」という戦略。それが、2019年の今に至ってもなお「まことしやか」に語られ、信じられているという恐ろしい現実だ。
よく考えて欲しい。
「未来を予想できるテクニカル分析」などと顧客を誘導し、「同じ答えを出させる」ことで、同じ損失を計上させ、その隙に大儲けするのは誰だろうか。そう。「予想」という言葉をうまく活用する仕掛ける側の証券会社、メディア、商材屋、エコノミストなどの文化的な扇動屋たち。大多数の真面目な個人投資家が信じているこんな詭弁がまかり通れば通るほど、仕掛ける側の人間は、しっかりと儲けをあげている事実に我々個人投資家は気づくべきなのである。
冒頭で筆者は「未来予想ができないという事実はひた隠しにされている」と伝えたが、その理由がここにある。
誤解しないで欲しい。筆者は決して彼らを批判しているわけではない。彼らの立場とスタンスを筆者なりに解釈して伝えているということを理解して欲しい。そして我々個人投資家は、そうした彼らの立場とスタンスを理解して、その上でしっかりと収益を上げていけばよいのである。