アメリカ不動産投資の魅力というと、「キャッシュフロー」を最大化できる点があげられるでしょう。その利点を活かすためには、国内不動産投資と同様に、物件の価値を見極める「目利き」が必要となります。そこで重要となるのが、物件を正しく目利きする「アメリカ人の目」を持つことです。本連載では、書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』より一部を抜粋し、アメリカ人の不動産に対する一般的な見方や制度について解説します。※アメリカ不動産投資 詳しくはコチラ

「減価償却メリット」に注目しているのは日本人だけ!?

◆ユタ州で生まれ育ち、日本の不動産会社へ

 

アメリカのユタ州出身の私が日本に住み始めてから、早いもので10年が経ちました。日本の大学を卒業し、日本人女性と結婚し、日本の会社に勤め、今では日本語で不自由することもほとんどありません。

 

しかし、見た目はどこから見ても、日本の皆さんが想像する「アメリカ人」そのものであり、アメリカ合衆国市民権(国籍)を持ったままです。

 

最初に簡単な自己紹介をさせていただきます。私は2008年にハイスクールを卒業するまで、ユタ州パークシティで暮らしました。故郷には、地元で長く不動産業を営む両親や兄弟が住んでおり、今でもたまに帰郷したときには、地元の友だちと、スキーを楽しんだりすることもあります。同じユタ州のソルトレイクシティでは2002年に冬季オリンピックが開催されたことを覚えている方も多いかもしれませんが、その近くです。

 

ハイスクール卒業後、日本語を勉強するために日本の語学学校に留学しました。そして語学学校を卒業後、そのまま日本の大学に進学し、卒業しています。

 

大学卒業後は、日本のメーカーに就職して、その後不動産関連業に転職、そしてそこを辞めて、アメリカで父親が経営する不動産会社で、不動産開発関連の事業をやっていました。土地を仕入れて開発する仕事です。3年弱ほどですが、土地の仕入交渉から、道路や上下水道の整備管理、現場監督のようなことまで、かなり幅広く不動産開発に関する業務に関わってきました。

 

私の父は、ユタ州で2500戸もの物件を建ててきた、かなり規模の大きい不動産会社を経営しています。「ビジネス一筋」のような人で、私が子どものころから、食卓にのぼる話題は父のビジネスの話と決まっていました。どこでどのような物件を仕入れたとか、どのような家が建てられるか、誰にどれくらいで売ったとか、どれくらい利益が出たとか、今期の会社の事業計画はこうなっているとか、そんな話です。

 

小さいときからそういう話ばかり聞かされて育ったので、普通のアメリカ人以上に、不動産が非常に身近で、子どものころから将来は父の会社の後を継ぐか、そうでなくとも不動産関係の仕事をするだろうと、自然に思っていました。

 

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アメリカで3年弱働いた後、また日本に戻り、2018年の秋ごろにオープンハウスに入社しました。

 

アメリカで不動産開発の仕事をしていたとは言え、日本人がアメリカ不動産を購入して得られる減価償却のメリットや、それを主な目的にして多くの日本人投資家がアメリカ不動産を購入していることは、まったく知らなかったので、最初にそれを聞いたときは非常に驚きました。

 

アメリカでは、一般的に住宅の建物は長持ちします。そのため、耐用年数も長く、たとえば木造住宅の法定耐用年数は27.5年になっています。そういう事情もあって、アメリカでは不動産の減価償却のメリットを活かした節税スキームというのは、あまり使われていません。

 

耐用年数のことだけではなく、アメリカでは住宅というのは、基本的に値上がりするものだと思われているので、みんなが気にするのはキャピタルゲインです。実際に不動産価格は平均的に上昇していることもあり、節税を気にするよりも、キャピタルゲインで儲けた方がいいという、いわばポジティブ思考が、アメリカ人の基本的な考え方です。

アメリカ人は「新築か」「中古か」はあまり気にしない

◆25歳の私が自宅の売買で1500万円ものキャピタルゲインを得られたわけ

 

私自身、幸運もありましたが、個人的にアメリカ不動産で大きなキャピタルゲインを得ており、そのメリットについて身を持って体験しています。

 

私は、以前勤めていた日本の会社を辞めて、妻と一緒にアメリカに帰った後、自分たちが住むための住宅を購入しました。私が25歳のときです。

 

ここで、アメリカの住宅の種類についてご説明しておきます。

 

アメリカには、以下のような種類の住戸があります。(分類の仕方によっては、他にもあります)

 

●コンドミニアム(日本で言う分譲マンション)

●タウンハウス(戸建てがつながって並んでいる住戸)

●シングルファミリーハウス(いわゆる戸建住宅)

●マルチファミリーハウス(集合住宅)

●デュプレックスハウス(二つの戸建がつながっている形態)

 

私が買ったのは、ユタ州のパークシティという街にある新築のタウンハウスでした。120㎡ほどの面積でアメリカでは珍しい4階建ての建物でした。1階がガレージ、2階がLDK、3階に寝室が2部屋、そして4階はルーフトップバルコニーと2LDKでした。バスルームが3つ(LDKと寝室に1つずつ)あるのが、日本人から見ると珍しいと思います。しかしアメリカでは、複数のバスルームがあるのはごく当たり前です。

 

アメリカでは、住宅は中古物件が主流で新築物件は日本ほど出回りません。また、アメリカ人は、新築か中古かはあまり気にしない人が多数派です。私自身もその点にはまったくこだわりはありません。しかし私の妻は日本人なので、日本人らしく「新築がいい」と強く主張し、約5000万円で新築物件を購入したのです。

 

そしてしばらくして、妻が妊娠しました。子どもが産まれるならということで、住み始めて1年半で最初の家を売り、より広い家に引っ越すことにしました。新しい家は約170㎡、3LDK戸建て(シングルファミリーハウス)でした。

 

最初の家は、すぐに6000万円で売れました。いくら不動産は値上がりするのが当たり前のアメリカとは言え、1年で20%も値上がりするのはさすがに珍しいことです。よく調べてみると、どうも最初の売主が価格設定で慎重になりすぎたということのようです。つまり、購入価格の5000万円という値付け自体が安すぎたということです。

 

私たちはその6000万円を資金にして、次は5500万円のシングルファミリーハウスを購入しました。これは中古だったので、約500万円をかけて大規模なリフォームをしました。おかげで住み心地は大変良くなったのですが、また1年くらい経った後、今度は妻が日本に帰りたがりました。

 

そこで、そのシングルファミリーハウスも売りに出したのですが、これは約7000万円で売れました。リフォームをしているとは言え、かなり良い値段です。

 

結局、住宅に対して最初に投じた5000万円は、2年半後には約7000万円へと増えました。リフォーム費用やその他の経費を除いて、約1500万円のキャピタルゲインが得られました。2年半で約30%の利益なので年率換算すれば約12%の利回りになります。しかも、売るまでは自分たちが暮らしていた住宅であり、純投資用物件ではありません。

 

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◆「家は上がるから買う」がアメリカ人の常識

 

私が経験した2年半で1500万円のキャピタルゲイン、年率にすると約12%の利回りという結果は、おそらく最初の住宅の値付けが低すぎたと思われることや、私自身が不動産業で、リフォームの知識も経験もあったことなどの点で、幸運に恵まれていた部分も多いでしょう。短期間でここまで儲かるのは、アメリカでもさすがに出来過ぎた事例だとは思います。しかし、レアケースというほどではありません。実際、最初のタウンハウスでは、私たちが引っ越した後に、6200万円や6500万円で売れた住戸があったと聞きました。

 

値上がり率や額はともかく、アメリカではほとんどの人が「家は値上がりするもの」「上がるからこそ買う」と思っていることは事実です。つまり家は、自分たちの生活に必要なものであると同時に、投資した資産だという意識をアメリカ人は強く持っています。日本人も、もちろん自宅は資産だと思っているでしょう。しかし、どちらかと言えば、自分たちが住むという「使用」のためのもの、つまり耐久消費財の面が強く、経済的な価値を持ち、いざとなったら換金する投資資産だという面に重きを置いている人は少数派ではないでしょうか。

 

アメリカ人がそのように考えるには根拠があります。それは、アメリカでは基本的に不動産価格が上昇基調で推移しているからです。

 

 

ブロドスキ・ザクリ
株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部 エグゼクティブコンサルタント

 

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本連載は、2019年3月13日刊行の書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

高山 吏司
ブロドスキ・ザクリ
豊岡 昂平

幻冬舎メディアコンサルティング

2年間で約700棟の物件を仲介する今もっとも注目の最強集団が 本邦初公開の知識を惜しげもなく明かす! アメリカ不動産投資の知名度は、以前と比べれば上がっているとは言え、やはり「投資目的で、海外の不動産を購入する」…

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