長期的な運用で安定した資産を形成できるといわれている不動産投資ですが、知識がないばかりに大きなマイナスを抱える投資家がいるのも事実です。本連載は、株式会社CFネッツ副社長・アセットコンサルタントの山内真也氏の著書、『プロが教える 不動産投資の真実』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、ワンルームマンションへの投資を中心に、不動産投資とはどういうものか、またどのような目線で投資を進めていけばいいのか、多くの数字をもって解説していきます。今回は新築一棟アパート投資のメリットとデメリットについて考えていきましょう。

新築ならではの「投資効率」は最大のメリット

不動産投資の主なカテゴリー(アセットクラス)の一つに、一棟アパートがあります。立地はワンルームマンションにかなわないものの、投資規模が大きく、スピード感を持った資産形成をすることが可能です。ここでは新築ワンルームマンションに対して、同じ新築でも一棟アパート投資を検証してみます。

 

新築アパート投資のメリット

 

①融資条件が良い 

 

新築ワンルームマンションと同じように、中古ワンルームマンションなどと比べて、銀行の融資条件が良いのが特長です。現在は2%を切る金利水準を提示する銀行もあるほか、融資期間も30年や、銀行によっては、35年ローンにも応じてくれるケースがあります。

 

また最近では、物件価格に対して95%融資や、投資家の属性によっては、物件価格の100%融資(フルローン)も可能となっています。同じ金利でも、融資期間が長ければ年間返済額が少なくなるために、キャッシュフローを悪化させる懸念も少なくなることで、レバレッジを効かせやすくなり、結果投資効率はワンルーム投資と比較してもかなり良くなることでしょう。なるべく早く規模を拡大させたい投資家さんであれば、まずは一棟アパートを検討したほうが、目標の近道にはなります。

 

②耐用年数が長い 

 

これも新築ワンルームマンションと同じです。木造アパートの場合、減価償却をするための基準である法定耐用年数は22年になっているので、たとえば1億円の新築アパートで、土地6:建物4の割合であれば、建物価格4000万円に対して耐用年数22年で割り戻すと、年間約180万円の減価償却費を22年間、安定しつつ経費として計上することが可能です。

 

後述しますが、これがもし耐用年数を超えた築古の一棟アパートであれば、当初4年しか経費計上することができず、それ以降の課税所得は、大幅に上昇することが考えられます。

 

③大きな修繕コストがかかりにくい 

 

これも新築ならではのメリット。何らかの突発的な事態が発生しなければ、完成から向こう10年間程度は、大きな修繕コストを負担しなければならない懸念は小さくなります。とくに新築に対しては、施工会社の10年保証が義務づけられていますので、雨漏りや木部の腐食など、建物主要構造部に対しては10年間の保証があります。

 

本来中古であれば、瑕疵担保責任という隠れた傷に対しては2ヶ月から3ヶ月の保証、また売主が不動産業者の場合には、2年間の保証しか付きませんが、新築の場合、その施工会社が保証期間内に倒産した場合にも、別の保証機関の保険に加入する義務がありますので、そのような倒産リスクにも対応しているのです。

 

一棟アパート規模の投資ですから、特に最初は安定運営させることが大前提だと思います。中古アパートや中古の一棟マンションだと、購入後間もなく大規模修繕が必要であったり、入居者退去後のリフォーム費用が想定以上にかかるようなケースもあります。そういう意味でも新築アパートの安心感というものは大きく、安定したキャッシュフローが残れば、そのお金を頭金にして再投資を進めていくことも可能ですから、大規模な修繕コストがかかりにくいというのは大きなメリットの一つだと思います。

家賃下落、空室…新築ならではのデメリット

新築アパート投資のデメリット

 

①賃料下落リスクがある(購入価格>売却価格)

 

新築ワンルームマンションと同じように、新築時の家賃で入居者が決まるのは一般的に2~3年程度でしょう。それ以降は、入居者が代わるたびに家賃の値下げを余儀なくされることが必至です。不動産価格は、家賃収入を元に収益還元価格で決まるので、将来何らかの理由でアパートを売却しなければならなくなったときは、そのときの情勢によるものの購入価格を下回る価格でしか売れない可能性も考えられるでしょう。

 

そのときポイントとなるのは、毎月のキャッシュフローです。安定的にキャッシュフローが残るようであれば、多少売却価格が下がったとしても、それによってカバーをすることができますが、毎月のキャッシュッフローが安定していなければ、結果、投資として成り立たないケースも考えられます。

 

②空室からスタートする 

 

新築ワンルームマンションは1戸の入居者を決めれば良いが、新築アパートは総戸数6戸なら6人、10戸なら10人の入居者を最初に決めなければならないのが、ひとつのハードルです。運用スタート時に感じる気持ち的ストレスは、ワンルームマンションよりも大きくなります。

 

1~3月の繁忙期といわれる時期ならまだしも、夏場の閑散期に完成したアパートについては、満室まで多少時間がかかることもあります。銀行のローン支払いは、購入後1ケ月から1ケ月半後くらいにスタートとなりますので、当初は持ち出しになることも考えておいたほうが良いかもしれません。

 

ただし、戸数が多いことのメリットはあります。新築でも中古でも、ワンルームマンションは、入居者が退出して次の入居者が決まるまでは空室が100%。つまり100かゼロかの投資にしかならなりません。これに対して、10戸のアパートで1戸に空室が出ても空室率は10%。複数の住戸を運用するために、空室リスクを軽減することができます。

 

③更地の場合は建物をイメージしにくい 

 

建築の専門家や不動産投資によほど精通している投資家を除けば、建築前に建物完成後をイメージするのは困難な場合が一般的です。建物がイメージできないと、いくら投資分析の結果が良くても、投資の決断が及び腰になる方もいらっしゃるでしょう。

 

現在、私が投資家に紹介している新築アパートのうち、9割以上が水面化情報で、まだ表に出る前の物件ということもあり、ほとんどが更地や古家付きの土地になります。よって、現地案内をしても見てもらえるものは周辺環境ぐらいしかないわけで、さすがに完成後までのイメージはしにくいと思います。

 

そういったときのために、弊社のミニフィールドワークセミナーへの参加をお勧めします。週末に一棟コースとワンルームコースを開催しており、実際に現地を見に行くセミナーとなっています。机上で勉強するには限界がありますので、やはり答えは現場にあるということで、そのとき売りに出ている物件をご案内しています。販売図面を見ただけではわからない建物の注意点など、購入するうえで気をつけたいポイントをお伝えしています。新築アパートの室内を内見してイメージを持っていただくこともできますので、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。

 

また、こういった新築アパートの場合の更地にもメリットもあって、ある程度の間取り変更や外壁、設備の色決めなどが可能です。購入してゴールではなく、そこからがスタートですので、少しでも客付けしやすいような間取りを考えることが、今後の運営に大きな影響を及ぼすことになります。なお、土地購入から始める新築アパート投資については後述しますので、そちらを参照してください。

 

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