日本の富裕層による「フィリピン」での不動産投資が人気だが、変化のスピードは想像以上に速く、正確かつ最新の投資情報を得るのは難しい。そこで、フィリピンで多様な投資用不動産の開発や取得のために日々奔走している、株式会社ハロハロホーム・エグゼクティブディレクター家村均氏に、2019年初頭のフィリピン不動産投資の現状について話を伺った。第3回目のテーマは「投資先候補として有力な5エリアとは?」である。

格差激しいフィリピン…不動産投資はエリア選定が重要

第1回の記事で、フィリピンの国民1人当たりGDPが3,000ドルを超えた点について触れた際に、「国民全体の平均である国民1人当たりGDPの指標としての重要度は、多少下がるかもしれない」と述べました。

 

というのも、フィリピンは都市部と地方との経済格差が大きく、とくにマニラ首都圏(メトロポリタン・マニラ)と呼ばれるエリアに、政治、経済、文化が大きく集中しています。マニラ首都圏は、東京23区よりもやや大きい面積であり、人口は約1,300万人(周辺エリアも入れると2,400万人強)と巨大都市です。

 

株式会社ハロハロホーム エグゼクティブディレクター 家村均氏
株式会社ハロハロホーム
エグゼクティブディレクター 家村均氏

このメトロポリタン・マニラと、フィリピン第2の都市であるセブに、国内外の代表的な企業が集中し、そのため、高学歴で年収が高い人も集中しています。たとえば、マニラ首都圏のマカティは、(はっきりした統計データは無く、私がいろいろ聞いたなかでの推測値ですが)1人当たりGDPは、フィリピン全体の平均の5倍、1万5,000ドルくらいにはなっていると感じます。

 

日本でも、東京の中心5区と呼ばれるエリアに住む人は年収も高いでしょうが、それでも平均年収が地方と5倍の差が開いているようなことはないでしょう。フィリピンは、極端な格差社会でもあるのです。

 

そのため、不動産投資の対象として見る場合、どのエリアに投資するのかが非常に重要になります。

 

 

フィリピン不動産…投資候補地それぞれの特徴

結論からいうと、マニラ首都圏における「マカティ」「ボニファシオ・グローバルシティ(=グローバルシティ)」「オルティガス」「ベイエリア」の4エリア、それに「セブ」を加えた5エリアが、いまフィリピン不動産に投資を検討する際の、候補地となります。

 

まず、マニラ首都圏のマカティとグローバルシティですが、この両都市はいずれも、開発から10年ほどの歴史しかない若い都市です。フィリピンNo.1のデベロッパーであるアヤラ・ランドが中心となってマスタープランが作成され、計画的に開発・整備されました。アヤラ・ランドは、フィリピンでも有数の財閥であるアヤラ財団に属するデベロッパーです。

 

●マカティ

マカティはマカティ市という「市」であり、広さは約27平方キロメートルです。これは東京の千代田区と中央区をあわせた面積(約22平方キロメートル)よりも広くなります。この広大な市を、アヤラ・ランドが中心となって、計画的に開発したのです。日本でいえば、三菱地所が千代田区と中央区の全体を、まるまる開発した、というイメージです。それだけの広さなので、そのなかでもいろいろなエリアがありますが、基本的な街の性格としては、経済の中心であり、日本でいうと東京の丸の内から大手町のような街を、一から作ったという感じです。

 

住居も多く、私もフィリピンに行くときはマカティに滞在します。暮らし心地は、東京にいるのとあまり変わりません。

 

●グローバルシティ

一方、グローバルシティは、タギッグ市という市のなかの1エリアで、面積はずっと狭くなります。日本でいうと、横浜のなかで再開発されているみなとみらい地区、というような位置付けです。職・住・商が美しくまとまっている街で、日本にはあまりこういう街はありません。よこはまみなとみらい地区と六本木ヒルズエリアをあわせたようなイメージでしょうか? むしろ、シンガポールの街に似ているかもしれません。

 

街の中心部は、車が入れない歩行者天国で、休日には現地の富裕層や外交官などの家族と、そして欧米や日本からの観光客とがのんびりくつろいでいます。

 

●オルティガス

オルティガスは、マカティ市の北東に位置するビジネス街です。セントラル・ビジネス・ディストリクトという、ビジネスエリアの一部に位置し、マカティやグローバルシティよりも古い歴史を持ちます。マカティ、グローバルシティの両都市が、最初からマスタープランに基づいてきっちり作られた都市であるのに対して、オルティガスは自然発生的に発展してきた街なので、街全体のクオリティという点から見ると、両都市よりは少し落ちる感じです。

 

いまでもジョリビー(フィリピン最大のファーストフードチェーン)の本社やアジア開発銀行の本店などがありますが、ビジネス街としては、マカティ、グローバルシティに次ぐ位置付けとなります。私たちも扱いはしていますが、将来性という点では、前2エリアにやや劣るとみています。

 

●マニラベイエリア

近年急速に人口が増えているのが、マカティやグローバルシティの西にある、マニラ湾に面したベリエリアです。ベイエリアには、大きなカジノリゾートが4つあります(うち1つは、日系の「オカダ・マニラ」です)。

 

また、リアルのカジノリゾート以外にも、中国系のオンラインカジノが、数多く集まっています。オンラインカジノは、なじみのない方も多いでしょうが、実際にカードゲームやルーレットなどをプレイして、それに対してオンライン上で賭けをするものです。そのため、場所も必要ですし、リアルタイムで受注処理などを行うオペレーターも多数必要なので、不動産需要も雇用も喚起しています。

 

このエリアは本当にカジノに特化しており、カジノのために急速に不動産需要が増えたエリアです。一方、ドゥテルテ大統領は、2018年8月に、今後カジノリゾートの新設は認めないという方針を打ち出していることから、エリアの将来性という点からは疑問がつきます。

 

●セブ

セブはリゾート地として有名で、私たちもつい先日、マクタン島のアルーガホテルをご紹介させていただきました。

 

もちろん、リゾート地としてのセブは魅力的なのですが、マニラ首都圏に次ぐフィリピン第2の都市であり、400万人の人口を抱えており、経済的なポテンシャルが高い都市でもあります。

 

現に、セブのITパークという、BPO産業が集まっている地区がありますが、そこのオフィスビルには、現在空室がほとんどありません。おそらく空室率1%程度で、東京都心より空室が少ないくらいです。セブのオフィスビルは、いま意外と狙い目なのではないかと考えています。

 

 

取材・文/椎原芳貴 撮影/有本真大(人物)
※本インタビューは、2019年1月17日に収録したものです。