「一帯一路」構想(陸と海のシルクロード)は経済圏の確立だけでなく、その狙いには、中国の政治的意図が見え隠れしています。今回は、構想への近隣諸国の態度と、中国が抱える課題をご紹介します。

関連地域の協調体制に貢献すると謳う一方で・・・

中国が進めようとしている「一帯一路」構想(陸と海のシルクロード)は、アジア、ヨーロッパそして、アフリカ大陸の連帯を高めることを目標に掲げている。各国のパートナーシップの確立とその強化は、多次元な連携ネットワークを築き、それぞれの国家において多角的で独立した、持続可能な発展を促進するという。

 

この構想の連携プロジェクトによって、「一帯一路」の国々の発展戦略における協力が深化し、市場開拓や投資や消費が促進され、需要や雇用機会の創出や、民間の文化交流が後押しされると謳われている。しかし一方で、中国の野心に不信の眼差しを向ける国も多い。

「一帯一路」構想に向けられた国際社会の懸念とは?

インド・タイムスに掲載された記事では、「この構想には強力な財政支援が存在している。とりわけ、中国が誇示するアジアインフラ銀行(AIIB)と、中国の政治と経済のエリート層からの支援である。しかし、依然として大きな障害も残っており、この野望を実現するために、まさに中国の能力が試されるだろう。アジアにおけるインフラ格差を是正するための努力(2020年までに8 兆米ドルが必要と推定されている)はいいとしても、融資基準の緩和が発展を妨げる可能性がある」と指摘されている。

 

非合理的な、あるいは実現不可能な開発を、「一帯一路」プロジェクトの名の下に、それぞれの国が基金を利用するのならば、債務者が借金の返済に悪戦苦闘するように、中国の投資は苦悩を強いられることになるだろう。

 

さらに、中国が構想するルート上にある港湾のインフラ向上や、参加国の貿易能力を高めるための自由貿易区域の設置などが、環境や人権に関する予期せぬ不祥事によって台無しになるリスクもある。また、同記事では「海上シルクロードがいかにして既存の輸送ラインを補うのか、まだ明確ではない」という点も指摘している。

 

中国の王毅外相が一帯一路構想を「地政学的な手段としない」と明言しているにも関わらず、中国が経済連携を政治的な支配力へと転換することへの懸念は拭えていない。実際に構想を実現するためには、中国政府は数多くの障害を克服する必要がある。そのためには中国はまず、インド、ロシア、そしてアメリカとの地域の勢力争いをうまく乗り切ることが求められる。

 

次回は、「海のシルクロード」構想をチャンスに捉えつつ、スリランカの置かれた難しい立場についてお伝えします。

この記事は、GTAC提携のスリランカのニュースサイト「EconomyNext」が2015年12月27日に掲載した記事「How Sri Lanka can capitalize on the Maritime Silk Road」を、翻訳・編集したものです。

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