前回は、縮小する住宅業界において、ハウスメーカーが置かれる「厳しい立場」について取り上げました。今回は、「建売り住宅・セミオーダー住宅」を選ぶ際の注意点を見ていきます。

「安い買い物」ではない以上、あらゆる可能性の吟味を

建売り住宅の場合は出来上がった入れ物に、自分たちの生活を合わせることが必要になります。ですから、出来るだけ無理のないような入れ物を探すことになるわけですが、そうそう見つかりません。「どうも、この点が気に入らない」「次を見に行こう」。そうやって回数を重ねても、どれもこれも完璧ではない。ジャストフィットするものを探すのは簡単ではありません。建売り住宅やセミオーダー住宅は、基本的に最大公約数、つまり万人受けするように造られています。

 

もちろん、建売り住宅にせよ、セミオーダー住宅にせよ、分譲マンションにしても、現状の住まいよりはよくなるでしょう。「だからいい」と考えるのでしょうか。それではもったいないと思います。先述したように、どの選択肢を選ぶにしても、安い買い物ではありません。中古物件を高く売ることは難しい時代ですから、やり直しは簡単ではありません。あらゆる可能性をまずは吟味してほしいのです。

 

最初にコンタクトした住宅会社が、契約主義の会社であれば、その可能性を時間をかけて見極めることは出来ません。最短距離で契約に導かれてしまうのです。そうなってしまえば、あり得た可能性が、それに気づく前にすべて消えてしまいます。その先にあった自分らしい、自分たち家族らしい生活が出来なくなってしまうのです。

 

それは本当にもったいないことです。

見えないところで図られる「コストダウン」に注意!

しかも、建売り住宅の場合は見栄えが重要です。価格を抑えて見栄えをよくするわけですから、どうしても見えないところでコストダウンが図られがちです。本来、建物としての「家」の価値は、壁や床下の見えなくなってしまうところにそのほとんどが詰まっていると言っても過言ではありません。それは何かと言えば、耐震性、気密断熱性、耐久性、省エネ性などの見えない部分ですが、決して手を抜いてはいけない部分です。優先順位は、いろいろな化粧よりも高くあるべきです。

 

化粧、つまり設備や屋根、外壁などは、いずれ壊れたり、古くなったりするものです。必ずいつかは直さなくてはいけません。キッチンにしても、15年も使っていれば、ガタがくるし、汚くもなります。最新の設備に入れ替えることも必要になります。

 

逆に言えば、後から入れ替えが可能であるわけです。その際に、もっと機能アップしたり、グレードアップしたりすることも出来るわけです。だからこそ、入れ替えが困難なところの優先順位を高くして、決して手を抜いてはいけないのです。注文住宅でも、そこは絶対に譲れない部分です。いくら見栄えがよくても、足元が脆いのでは意味がありません。

 

しかしながら、建売り住宅などの場合、その優先順位が守られているとは限りません。しかも、その点を本当に確認することは出来ないわけです。何千万円もの買い物なのに、目に見える部分だけで判断して、見えない部分を確認も出来ずに買わなければいけないのです。

 

それは実に怖い話です。

本連載は、2017年4月12日刊行の書籍『改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる

改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる

貞松 信人

幻冬舎メディアコンサルティング

人生を左右するほどの大きな買い物である「家づくり」。「家づくり」は購買経験を積むことが出来ないため、何が正しくて、何を基準にすれば良いかわからない、とても難しい買い物です。 あるアンケート調査では、注文住宅を…

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