前回は、ハイリスクな「仕組債」を販売する金融機関の問題点を探りました。今回は、富裕層向けの金融商品のひとつ、「ラップ口座」のリスクを見ていきましょう。

運用資産残高に応じて手数料を支払う「ラップ口座」

資産家・富裕層向けの金融商品として、最近注目されているのが「ラップ口座」です。ラップ口座とは、資産をひとまとめにして金融機関に預け、様々な運用対象で管理・運用を行っていくものです。

 

ラップ口座では基本的に、投資商品について売買手数料を支払う必要はありません。ラップ口座に預けている運用資産残高に応じて、手数料を支払うことになっています。「ラップ口座」とひと口にいいますが、実際は次の3種類に分かれます。

 

①ラップ口座

SMAとも呼ばれ、金融機関との間で運用代行の契約を結ぶもっともオーソドックスなタイプです。投資家のリスク許容度や運用目的に合わせて、金融機関が運用から口座管理に至るまで、すべてのサービスを一括で代行します。取り扱いは主に証券会社や信託銀行で、1000万円以上などまとまった資金が必要です。

 

②ファンドラップラップ

口座の小口版で、最低預入額がラップ口座よりも少額です。投資先はラップ口座とは異なり、各金融機関が用意した専用の投資信託に限られます。証券会社や信託銀行が扱っています。

 

③ラップ型投資信託

投資信託の一種です。低リスクで安定志向の「安定型」から、リスクが高めでも高いリターンを目指す「成長型」などのコースを、投資家が自身のリスク許容度に応じて選ぶものです。

金融機関任せでいいのか、そもそも手数料は妥当か?

ラップ口座が日本で注目され始めたのはごく最近のことです。商品そのものは1990年代の終わり頃からありましたが、規制が多く扱いにくい投資商品でした。しかし、2004年に証券取引法の改正が行われ、ラップ口座に関しての規制もかなり緩和されました。

 

ラップ口座はよく、資産家や富裕層向けといわれます。それは、開設時の最低預入金額の高さにあります。ラップ口座の中では比較的低額といわれている「ファンドラップ」でも、最低預入金額は数百万円からです。ただ、最近はかなり引き下げられ、最低預入金額が500万円以上というラップ口座も登場しています。

 

金融機関がラップ口座に熱心なのは、従来のような投資信託を次々に乗り換えさせて手数料を稼ぐ営業手法に対して、金融庁の監視の目が厳しくなってきたことがあるといわれます。ラップ口座であれば乗り換えのたびに手数料が発生するということがないからです。

 

しかし、ラップ口座にも問題がないわけではありません。そもそも資産の運用を金融機関に任せきりにしていいのかどうか、また手数料が妥当かどうかということです。

 

金融機関ではラップ口座について、仕事などで忙しい人にとって資産運用を専門家に任せることができて安心、便利といった説明をしています。確かに楽ではありますが、万能ではありません。2016年の年初からのマーケットの暴落では当然、これらのラップ口座も損失を計上しています。

 

また、アンケートや面談によって顧客に合ったリスクの大きさや性質を判断して、数十通りの中から運用パターンを選ぶといいます。でも、果たしてパターンを選ぶだけで顧客のニーズにどこまで対応できるのかは疑問です。

 

さらに、会社にもよりますが数百万円から始められる小口のラップ口座では年2%程度の手数料がかかり、ラップ口座内で投資された投資信託の運用管理手数料も、リターンの低下という形でかかります。

 

ネット証券などが扱うETF(上場型投資信託)であれば、売買手数料が1000円前後、運用管理手数料(信託報酬)が年0.1%程度で済みます。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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