今回は、企業の売却交渉において、売り手側が買い手側に説明すべき5つの項目について見ていきます。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

まずは「対象会社のビジネスの中身」を適切に伝える

買い手候補の会社に買収提案を持ち込んだ際、何を説明すればよいのか。初期的な買収提案においては、対象会社のビジネスの中身(例えば、直近の財務内容、事業内容、経営戦略など)を適切に伝えることが必要である。初回の買収提案の際には、以下の項目について明瞭に説明できるようにしたい。

 

(1)対象会社の概要

会社の情報として、組織や人員体制、店舗や工場の特徴といった有形、無形の資産についての説明をはじめ、販売や生産の現状を説明する。次に外部経営環境として、事業が属する市場環境や見通し、市場シェアや競合他社の状況、競合他社に対する優位性(製品力や営業力など)についてもアピールする。

 

(2)事業価値源泉

会社の強みは事業価値源泉であり、この強みが競合他社と比較して明確であればあるほどに売却可能性は高まる。事業の強みや課題、特徴、どの部分を強化していけば競争に打ち勝っていけるのかといった情報を説明したい。

現状だけではなく「将来の展望」もきちんと示す

(3)事業戦略

今後の事業戦略やその戦略を支えるための具体的な施策を明らかにする。工場設立などの設備投資計画、人材採用計画といった前向きの施策だけでなく、工場や店舗閉鎖や支店閉鎖、部門の統廃合など、合理化につながる施策も打ち出し、将来どの程度の売上増が見込めるのか、どの程度のコスト削減が期待できるのかを分かりやすく説明したい。

 

(4)事業計画

対象会社の将来像を裏づける決算書の数値を示す。財務情報は過去3~5年、将来3~5年分を開示することが一般的である。売却対象が1つの事業部であり法人全体ではない場合は、財務情報を準備することは難しい。その場合、社内における管理会計をベースとした損益計算書のみを開示すればよいだろう。

 

(5)想定されるシナジー効果

買い手が買収した場合、どれだけのシナジー効果が創出され、どれだけ事業価値が高まるのか、新しい企業オーナーのもとで実行される事業戦略を提案する。思い切った設備投資や人材獲得といった成長戦略から、大規模なコスト削減を狙った合理化といった経営戦略まで様々な施策が織り込まれる。このような事業戦略は、ある意味、売り手から買い手に対しての能動的な提案であり、アピールである。その計画に明確な裏づけやロジックが存在していれば、買い手に受け入れられる可能性が十分ある。

 

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