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連載建築デザインの力で「変形地」の価値を高める方法【第12回】

「建築デザイン」が土地・建物の価値を大きく上げる理由

デザイナーズマンション不動産賃貸市場リノベーション

「建築デザイン」が土地・建物の価値を大きく上げる理由

前回は、リノベーションの前に確認しておくべき「コンクリートの品質」について説明しました。今回は、「建築デザイン」が土地・建物の価値を大きく上げる理由を見ていきます。

建築デザインの力で土地の「潜在価値」を引き出す

建築によって土地や建物の価値を高めることがどのように可能か、前回までの連載でご理解いただけたでしょうか。床を最大限に確保できるようにするなど、土地や建物の利用価値を顕在化させ、生まれ変わらせるわけです。「こんなものが建つのか!」と、斜面地や変形地は利用できないと思い込んでいた土地所有者は皆一様にびっくりされます。

 

ただ、価値を高めるということは、床を最大限に確保することではありません。その床に借り手がつかないことには、収益には結び付かないからです。つまり、何の価値も生み出さないのです。最大限に確保した床に、市場での競争力を与える必要があります。

 

そうした競争力の源泉の一つに、建築の意匠というものが挙げられます。意匠というのは、デザインと置き換えてもいいでしょう。

 

「デザイナーズマンション」という言葉を聞かれたことがあると思います。正式な定義はないのでしょうが、一般には建築設計者が設計を手掛けたマンション、それも賃貸住宅に使われているようです。デザイナーズマンションの建設をプロデュースしたりその仲介を専門に手掛けたりする会社も登場しています。

 

一言で言えば、おしゃれな都市型マンションです。外観上は、コンクリート、ガラス、アルミなど、モダンな素材を使って、間取りにも工夫を凝らした、そこにしかないようなつくりです。住まいに強くこだわる層が求めていたこうした都市型のおしゃれなマンションの供給が一般化したことで、人気に火が付きました。

 

年代を問わず、単身者や二人世帯ほど、都市でおしゃれに暮らしたいと望んでいる人がいます。しかし、分譲だろうが賃貸だろうが、コストを最優先するとどうしても、規格化された何の面白みもない建物になりがちです。自分でお金を掛けて好みの住まいをつくれればそれが一番いいのでしょうが、そこまでできる層は一握りでしょう。そこに登場してきたのが、デザイナーズマンションだったのです。

 

Webサイトで賃貸住宅の物件情報を手軽に入手できるようになった点も、デザイナーズマンション人気を後押ししていそうです。何しろ個別性が強いので、不動産仲介会社の店頭を通じて一般の賃貸市場に情報を流通させても、どの程度反響が得られるか、課題が残ります。

 

そうしたおしゃれな賃貸住宅を探している層に効率良く情報を提供するにはやはり、Webサイトが一番です。「デザイン×マンション」「賃貸×おしゃれ」など関連キーワードで検索すれば、地域を限ることなく情報を得ることができるからです。

 

つまり、デザイナーズという個別性の強い物件の特性や賃貸住宅を探す側にとっての利便性というものが、Webサイトとなじんだという側面もあると思います。

 

デザイナーズマンションが急速に広まったことからも分かるように、建築のデザインは、差別化はもちろん、それ自体が価値を持つことから、競争力の源泉になり得ているのです。確保した床に借り手を付けるためにも、必要な手段です。

 

筆者の場合、前提にあるのは、共同住宅といえども、個人住宅と同じように一つ一つ違うものであるべきという発想です。

 

共同住宅ではコスト上の必要から、間取りを標準化し、部材や施工の効率性を高めます。分譲マンションの間取りにはそれが象徴的に現れています。標準的な価格帯の物件であれば、廊下沿いに細長い住戸が並んでいて、廊下に面した玄関側に居室があって、次に水回り、バルコニー側にはLDKというのが、よくある間取りです。

 

しかし、一世帯一世帯で暮らし方には当然に違いがあるのですから、このようなつくりでいいはずがありません。個人住宅の集合体と考えれば、共同住宅の住戸は極端に言えば、一つ一つ違っていて当然です。近年、個人個人の住居に対する要求水準が多様化してきていますが、そうなれば一層のことです。それが、筆者の理想です。

 

そのためには余裕が必要です。効率一辺倒ではいけません。建物の床をできるだけ確保し、床全体に対する貸し出す床の割合であるレンタブル比を100%に近付けるのが、事業上は望まれますが、そこに余裕が欲しいということです。建物の床全体の5%はそうした余裕のスペースとして、建築家の自由な発想を生かしてデザインするように心掛けています。

10年経っても色褪せないデザインこそが求められる

デザイン面で心掛けている点は他にもあります。一つは、季節感の感じられるものにすること。もう一つは、歴史を継承させることです。いずれにしても、人を優しく迎え入れるような、人の心に働きかける魅力のあるデザインを基本にすえています。

 

筆者の考える良いデザインのアパート・マンションとは、まず分かりやすく、温かみのあるものです。そのうえ親しみやすいものではないかと考えています。

 

賃貸アパート・マンションの設計に経験を積んだ建築設計者であれば、入居者が何を望んでいるかを察知し、そこで営まれる生活を想定し、それに必要な「仕掛け」や「装置」を、高いコストを掛けることなく仕組みます。このような建物こそが、デザイナーズマンションと呼ばれるものになるのです。

 

そして、10年たって初めてその価値が分かるようなデザインではなく、10年たっても色褪せることなく、飽きられることのないデザインこそが、デザイナーズマンションに必要な真のデザインであると考えます。

 

そうした価値あるデザインが見当たらない、空室率の高いアパート・マンションのオーナーであっても、あきらめることはありません。そういうオーナーがどうすればいいか、筆者はオーナーとの会話の中から解決策を見いだしています。

 

その一つが、連載第10回でご紹介したリノベーションです。建物の構造体だけ残し、内装や設備はがらりと変えてしまい、まったく新しい空間を生み出す手法です。初期投資は必要ですが、躯体から変えてしまう建て替えほどの費用負担なしに、建物の価値をぐんと引き上げることができます。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

宮坂 正寛

株式会社環境建築設計 代表取締役
株式会社六耀 代表取締役 

早稲田大学理工学部建築学科卒業。「環境と人との接点を意識し心を配ること」を基本に、土地活用企画、分譲・賃貸マンションの企画・設計・施工管理、賃貸マンションの監理、建て替え、大規模修繕、コンサルティングなどを手がけ、35年間で300弱の竣工物件の実績を持つ。

著者紹介

連載建築デザインの力で「変形地」の価値を高める方法

変形地の価値を高めるマンションづくり

変形地の価値を高めるマンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地・・・。活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために…

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